肺吸虫症
はいきゅうちゅうしょう
肺吸虫症とは?
肺吸虫は、もともと野生のイヌ科、ネコ科などを宿主とする寄生虫ですが、ヒトの体内においても成虫になるため、人獣共通感染症に数えられています。日本でみられるのはウエステルマン肺吸虫と宮崎肺吸虫(少数)です。
どのように感染するか
モクズガニやサワガニに寄生する幼虫の経口摂取によるもので、カニの調理過程で幼虫が手指、包丁、まな板などに付着し、ヒトの口に運ばれます(図17)。また、イノシシの肉の刺身を食べることでも発症しています。
経口的に摂取された幼虫は腸管を貫通し、発育しながら腹腔に出ます。いったん腹壁筋内でとどまって発育し、再び腹腔内に入って横隔膜をへて胸腔内に侵入し、感染3~4週間で肺へ移行します。肺内で虫嚢を形成し、産卵します。
宮崎肺吸虫は、本来ヒトが好適宿主ではないため、胸腔に侵入した虫体は胸腔内を徘徊し、肺実質に虫体が侵入しても虫嚢腫は形成されません。病変は胸膜腔が主であり、胸膜炎や気胸を起こします。
症状の現れ方
咳、胸痛、血痰が主症状で、胸水貯留で発見されることもあります。
検査と診断
血液検査では、好酸球の増加およびIgEの上昇が重要な所見で、胸部X線写真では、診断時期によってさまざまですが、胸水の貯留や気胸、結節影などが認められます。
確定診断は、喀痰または糞便、胸水からの虫卵の検出によって行いますが、検出率は50%と低いため免疫学的診断法(血清中特異抗体)も補助診断として用いています。
治療の方法
ブラジカンテルが最も優れた薬剤で一般的です。副作用は一般に軽く、一過性の吐き気、腹痛、肝障害、発疹あるいは頭痛、めまいなどがみられます。
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