出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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過剰歯
かじょうし

もしかして... 埋伏歯

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過剰歯とは?

どんな病気か

 歯を形作る原基(歯胚)が過剰に形成されたり、1個の歯胚が分裂することで、歯が正常な数より多く作られる場合があります。これを過剰歯と呼びます。

 真っすぐ歯列内に生えてくる場合もありますが、歯列外に生えてくるものや正常に生えることができず埋伏歯になるものもあります。歯の形は、正常に近いものから退化傾向により不完全な形を示すものまでさまざまです(図22図22 過剰歯)。

原因は何か

 原因ははっきりしていません。人間が進化する過程で徐々に失われてしまった歯が突然再び現れた結果であるという説や、遺伝的要素、外傷によって形成初期の歯胚が分割してしまうなど、さまざまな説があげられています。

症状の現れ方

 乳歯では過剰歯の発現はまれです。永久歯の過剰歯が現れる場所として、上あごの前歯の間、上下の親知らず(智歯・第三大臼歯)の後方などに出てくることが比較的多いといわれています。過剰歯があると歯列に乱れが生じやすく、とくに上あごの前歯部に出てくる場合は正中離開(コラム)の原因になります。さらに過剰歯が生える過程で、周囲の歯を圧迫して歯の根を溶かしたり、歯の動揺を大きくしたりすることもあります。

治療の方法

 過剰歯は、噛み合わせや周囲の歯に悪影響を及ぼすおそれがある場合、一般的に抜歯の対象になります。骨の深い位置に埋伏した過剰歯のように、とくに悪影響を及ぼさなければ抜歯しない場合もあります。

(執筆者:東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科顎顔面矯正学教授 森山 啓司)

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 正中離開とは、一般に上あごの前歯の間にみられるすきまのことをいいます(図28図28 正中離開:口腔内写真(左)、X線画像(右))。上あごの永久歯の前歯は7~9歳ころにかけて歯と歯の間にすきまを伴いながら生えてくるため、この時期は"みにくいアヒルの子の時期"といわれています。

 通常、内側に向かって犬歯が生えてくるため、すきまは自然に閉じてきますが、何らかの原因ですきまがうまく閉じない場合には、治療が必要になることがあります。

 原因として、前歯の間に正中過剰歯と呼ばれる余分な歯がある場合や、唇のひも(小帯)が前歯の間に入り込んでいることが考えられます。そのような場合、余分な歯の抜歯を行ったり、小帯を切る処置を行うこともあります。

 生まれつき歯の数が足りなかったり、歯の大きさが小さかったりすることによってすきまが生じる場合には、矯正装置などによってそのすきまを閉じたり、ブリッジやインプラントを用いて治療することがあります。

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成人矯正の特徴

 成人の不正咬合に対する歯科矯正治療は、若齢者に対するものと比べて決して容易なものではありません。成人矯正のいちばん大きな特徴は、成長・発育による変化を期待できないことです。

 上あごと下あごの関係のずれによって上顎前突あるいは下顎前突(受け口)になっている成長期の患者さんには、矯正装置を用いてあごの骨の成長を長期間にわたってコントロールし、バランスのとれた噛み合わせになるように治療を行っていくことが可能です。

 一方、成人の患者さんには成長がみられないため、治療は歯の移動による変化が主体となり、抜歯して噛み合わせを改善する場合もあります。さらに、上あごと下あごのずれが大きくて歯の移動だけでは改善できない場合は、外科手術を伴う歯科矯正治療が選択されることもあります。

 その他にも、若齢者に比べると成人の骨は緻密になっているため、歯の移動には時間がかかりやすいといわれており、矯正装置による違和感や痛みを感じたり、順応するのに少し時間がかかる場合もあります。

 また、歯を支える骨(歯槽骨)は、加齢や歯周病によって少しずつ減っていきます。骨が減ると歯の根を支持する機能も衰えがちになり、動揺が大きくなって強い矯正力をかけることができなくなることもあります。

 歯が抜けた場合には、人工の歯(ブリッジ、インプラントなど)を用いてすきまを埋める必要がありますが、この際に部分的にマルチブラケット装置を装着して人工の歯が入るすきまを広げることもあります。

社会的背景も考慮する

 矯正装置を装着すると見た目や発音に支障を来すことがあるので、一人ひとりの患者さんの社会的背景を十分に考慮しながら、治療のタイミングや装置の種類を選択して、なるべく無理のないように治療計画を立てていきます。

 透明で目立たないブラケットや、歯の裏側につけるリンガルブラケット装置(舌側矯正装置)を選択することもあります。

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 以上のように、成人の矯正治療では若齢者とは異なる特別な配慮を必要とする場合もありますが、比較的高齢であっても、健康な歯周組織の状態が維持されていれば、歯科矯正治療を行うことは十分可能です。

コラム顎変形症の歯科矯正治療

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 歯は、あごの骨のなかの範囲でしか動かすことができません。そのため、極端に上の前歯が出ていたり、受け口、顔のゆがみがみられるような上あごと下あごの骨格的なバランスに大きな不調和がみられるような症例(顎変形症)では、通常の歯科矯正治療だけでは理想的な噛み合わせを得ることができず、外科的にあごの骨の切除を行い、理想的な噛み合わせにする場合があります。

 この治療法では、噛み合わせだけではなく、顔貌の改善も期待することができます(図23図23 顎変形症の矯正歯科治療:治療前(左)、後(右)の顔面写真)。上あご、下あご単独の手術になるか、両方の手術になるかは、骨格的なバランスや顔貌を考慮して決定することになります。

 一般的に、外科手術は成長終了後に行われます。外科手術によるあごの移動を行う前に、術前矯正治療と呼ばれる上下の歯並びを整えておき、手術時にあごの骨をよい位置に固定できるような矯正治療が必要になります。外科手術は全身麻酔によって行い、一般的には3~4週間程度の入院が必要になります。

 さらに、手術後は術後矯正治療と呼ばれる過程をへて、しっかりと安定した噛み合わせを獲得します。矯正装置を外したあとは、保定装置を口のなかに装着して予後の観察を行います。

 外科手術を伴う歯科矯正治療における治療費は、保険の適用が可能です。

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