出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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歯みがき剤について
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歯みがき剤についてとは?

 歯みがき剤は、歯口清掃と歯科疾患の予防効果を高めるために、歯ブラシとともに用いられる保健剤です。練り状が最も一般的で、成分には、基本成分と薬用成分があります。

 基本成分とは、研磨剤、湿潤剤、結合剤、発泡剤、香味料などです。

 薬用成分とは、歯科疾患を予防または改善するために添加された成分です。代表例は、

むし歯予防:フッ化物(フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム)

歯周病の予防・改善:塩化セチルピリジウム、トリクロサン、グリチルリチン酸、クロルヘキシジン

口臭予防:銅クロフィリンナトリウム

・知覚過敏:乳酸アルミニウム

などがあります。

 フッ化物は、国内の歯みがき剤の約80%に配合され、むし歯の予防効果が確認されています(コラム)。

 薬用成分の効果を高めるには、使用後は水を少し口に含み、1~2回軽くすすぐとよいでしょう。歯みがき剤は種類も多く、歯科専用の製品もあるので、かかりつけ歯科医のアドバイスを受けて選ぶことをすすめます。

(執筆者:岩手医科大学歯学部口腔保健育成学講座口腔保健学分野教授 米満 正美)

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コラムフッ化物とむし歯予防

岩手医科大学歯学部口腔保健育成学講座口腔保健学分野教授 米満正美

 むし歯は、細菌が産生する酸によって歯の表面が溶解されてできる、穴のない初期むし歯として始まります。むし歯予防の基本的なメカニズムは、この初期むし歯に唾液のカルシウムとリン酸が補給され、新たな歯の結晶ができて自然治癒することです。これを歯の再石灰化といいます。

 この時、フッ化物が唾液中に微量あると、歯の溶解が抑制され、しかも再石灰化が格段にスピードアップし、その結果、歯は強化されて酸への抵抗性が高まります。これは、フッ化物があると、初期むし歯のなかにフルオロアパタイトという、元の歯よりも安定した結晶が形成されるためです。

 再石灰化は、フッ化物イオンが唾液中に1mg/Lほどあれば促進されるので、むし歯予防には低濃度フッ化物の頻回作用が有効です。最大のむし歯予防効果はフッ化物を添加した水道水で得られ、次いで毎日のフッ化物洗口やフッ化物配合歯みがき剤の使用が有効です。

 初期むし歯の治癒促進には、濃度の高いフッ化物の塗布も併用されます。むし歯のなりやすさ(カリエスリスク)に応じた適切な方法を歯科医に相談しましょう。

コラムカリエスリスクについて

岩手医科大学歯学部口腔保健育成学講座口腔保健学分野教授 米満正美

 むし歯(カリエス)が新たにできる、あるいは、むし歯がさらに進む危険性(リスク)、つまり、むし歯のなりやすさをカリエスリスクといいます。カリエスリスクは、むし歯をつくる因子と、それらに抵抗し歯を保護する因子のバランスで決まるので、両者を評価して判定されます。

 むし歯をつくる因子で最も重視されるのが、唾液または歯垢中のむし歯原因菌(ミュータンス連鎖球菌および乳酸桿菌)の量です。また、歯垢の付着量が多く、間食を含む飲食の回数が多いほどリスクが高まります。

 一方、これらに対抗する最も重要な因子は唾液です。唾液の分泌量が多く、その緩衝能(酸性を中性にもどすはたらき)が強いほど、むし歯を避けることができます。また、フッ化物の応用頻度が高いと、唾液による初期むし歯の自然治癒(再石灰化)が格段に進みます。

 実際には、これらのほか、過去のむし歯経験やブラッシングなど生活習慣を考慮して、歯科医師が総合的にカリエスリスクを判定します。

歯みがき剤についてに関する医師Q&A