出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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甘味料とむし歯
かんみりょうとむしば

もしかして... むし歯  糖尿病

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甘味料とむし歯とは?

砂糖とむし歯

 砂糖は、むし歯の大きな原因のひとつです。

 図61図61 日本人の砂糖消費量と小学生のむし歯の関係は、日本の砂糖の消費量とむし歯をもつ小学生の割合を表したものです。戦争によって、砂糖が手に入りにくかった時代はむし歯の子どもが少なく、その後、砂糖の消費量が増えるにしたがって、むし歯の子どもが増加していることがわかります。

図61 日本人の砂糖消費量と小学生のむし歯の関係

 また、砂糖は食べ方によっても、むし歯のできやすさが違います。図62図62 砂糖の食べ方と歯垢の酸は砂糖を食べたあとの歯垢のpH変化を表したものです。

図62 砂糖の食べ方と歯垢の酸

 pHは低いほど酸性が強いことを表します。歯の表面のエナメル質はpHが約5・5以下になると溶け始めます。通常、砂糖を食べても唾液などの作用により、歯垢のpHは曲線(ア)のようにしばらくすると上昇します。ところが、お菓子などをだらだら食べていると、曲線(イ)のように、歯垢のpHは上昇するひまがなく、エナメル質は常に酸にさらされた状態になります。

 このように、間食として砂糖を飲食することが、むし歯をつくる大きな原因と考えられています。

代用甘味料

 私たちが甘味料として最も多く利用している砂糖の主成分は、ショ糖(スクロース)といいます。ショ糖は味のよさ、加工しやすさ、高いエネルギー価などの利点をもつ反面、とりすぎると肥満、糖尿病、そしてむし歯の原因になるという欠点があります。

 現在、ショ糖の欠点をもたない代用甘味料がいろいろ開発され、ダイエットやむし歯予防のために、お菓子や清涼飲料などの甘味食品に用いられています。

 ショ糖がむし歯の原因になるのは、口のなかで酸や歯垢ができるもとになるためです。そのため、むし歯予防を目的に使われる代用甘味料には、口のなかで酸や歯垢になりにくいものが望まれます。

 最近では、ただ酸になりにくいだけでなく、歯垢をつきにくくしたり、歯を溶けにくくしたり(再石灰化作用)する作用をもち、より進んでむし歯を予防するような代用甘味料が開発されています。

 現在よく使われている代用甘味料と、そのむし歯予防効果を表4表4 代表的な代用甘味料とその虫歯予防効果にまとめました。

表4 代表的な代用甘味料とその虫歯予防効果

(執筆者:岩手医科大学歯学部口腔保健育成学講座口腔保健学分野教授 米満 正美)

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コラム歯のホワイトニング

昭和大学歯学部歯科保存学教授 久光久

 「歯を白くしたい」という願望を満たす方法として、近年、歯を削らないで生活歯(神経が生きている歯)を漂白するホワイトニングが注目されています。このホワイトニングには、自宅で行うホームホワイトニングと、歯科医院で行うオフィスホワイトニングがあります。

 ホームホワイトニングでは、歯科医院で作成したマウスピース内にホワイトニング剤を注入し、1日2時間歯列に装着することを約2週間続けます。

 オフィスホワイトニングでは薬剤を歯面に塗布してから光を当てて漂白剤を活性化します。オフィスホワイトニング剤としては35%過酸化水素または光触媒配合の6%過酸化水素、ホームホワイトニング剤としては10%過酸化尿素が用いられます。過酸化水素の活性化で生じるラジカル(不対電子をもつ、反応性に富んだ分子や原子)が、歯のなかの有機色素を分解して歯の明度を上げると考えられています。過酸化尿素では分解して生じる過酸化水素の漂白効果に加えて、尿素の蛋白分解作用で漂白効果が歯の深部まで波及することが期待されます。

 ホワイトニング処置で大なり小なり知覚過敏を生じることがありますが、あくまで一時的なもので、多くの場合は適切な対応で回避できます。自分の歯であればむし歯や歯周病、知覚過敏が強い場合などを除いて、原則的にホワイトニングできますが、人工の歯や金属で変色した歯ではできません。

 ホワイトニング効果の個人差は、歯の変色の程度や原因、生活習慣、嗜好品等が異なるためと考えられます。淡い黄色の変色に対して、グレー系や濃い茶褐色のような重篤な変色の場合は白くなりにくい傾向がありますので、オフィスとホームの両ホワイトニングを併用することもあります。

 また、ホワイトニングの効果は2~4年持続するといわれていますが、少しずつあともどりする傾向があるので、1年に1~2回の定期的なメンテナンスを受けて、必要に応じてクリーニングや再漂白処置を受けるなど、術後の管理を行うことが大切です。

コラムフッ化物とむし歯予防

岩手医科大学歯学部口腔保健育成学講座口腔保健学分野教授 米満正美

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 この時、フッ化物が唾液中に微量あると、歯の溶解が抑制され、しかも再石灰化が格段にスピードアップし、その結果、歯は強化されて酸への抵抗性が高まります。これは、フッ化物があると、初期むし歯のなかにフルオロアパタイトという、元の歯よりも安定した結晶が形成されるためです。

 再石灰化は、フッ化物イオンが唾液中に1mg/Lほどあれば促進されるので、むし歯予防には低濃度フッ化物の頻回作用が有効です。最大のむし歯予防効果はフッ化物を添加した水道水で得られ、次いで毎日のフッ化物洗口やフッ化物配合歯みがき剤の使用が有効です。

 初期むし歯の治癒促進には、濃度の高いフッ化物の塗布も併用されます。むし歯のなりやすさ(カリエスリスク)に応じた適切な方法を歯科医に相談しましょう。

甘味料とむし歯に関する医師Q&A