リンパ管腫
りんぱかんしゅ
- 耳鼻咽喉科
- 診療に適した科
リンパ管腫とは?
どんな病気か
外界からの異物やウイルス、細菌などに対する防御のために、リンパ組織が体中に張り巡らされています。その中心的なはたらきをするものとして、リンパ節とそれらを結ぶリンパ管があります。このリンパ管の先天的な形成異常により生じる病気がリンパ管腫です。
なかがいくつもの部屋に分かれた、大きく拡張したリンパ管が腫瘤(こぶ)を形成し、ほとんどは2歳以下の乳幼児に頸部腫脹という形で発症します。
原因は何か
通常は発育とともになくなってしまう胎生期の頸静脈から生じたリンパ嚢がそのまま残り、嚢胞状の腫瘤を生じたものと考えられています。
症状の現れ方
多くの場合、下顎や頸の外側、鎖骨上方の頸部などが、軟らかく、境界がはっきりせず、何となく全体にはれてくるのが普通です。嚢胞の壁は非常に薄く、なかに黄色く透明な液がたまっているため、はれた部分に触ると水を入れた軟らかい袋を押しているような感触があります。頸部の少し深い部位にあると、通常はほとんど症状が出ません。
一方、頸部には血管や神経、筋肉によってできた隙間があり、嚢胞はこの隙間に広がっていく性質があります。口のなかやのどのほうに広がり、大きくなると物がのみ込みにくくなり、気管を圧迫すると呼吸が苦しくなり、頭や腕からの血液がもどってくる大きな静脈を圧迫するようになると、顔や上肢にむくみが出ることがあります。
検査と診断
顎下部にある場合はラヌラ(がま腫)の顎下型との区別が必要になります。この区別にはMRIが有用です。ラヌラは、舌下腺から発生する嚢胞で、嚢胞と舌下腺が連続している画像が得られることがあります。はっきりしない場合は穿刺(針で刺すこと)が行われます。ラヌラでは、非常に粘性が高く細い針では吸えないような液体がたまっています。一方リンパ管腫の場合は、粘性の低い黄色で透明な液が吸引できます。
他部位のものでは他の嚢胞性疾患や脂肪腫などとの区別が必要ですが、CTやMRI、場合によっては穿刺などにより診断が行われます。
治療の方法
以前は摘出手術が主な治療法でした。しかし、リンパ管腫は頸部の構造物の隙間に入り込み広がっていることが多く、手術での完全摘出は困難なことも少なくありません。また、完全に摘出されないと残存再発が生じ、再手術はさらに困難になります。
そのため近年では、手術と薬剤を併用、あるいは薬剤のみでの治療が試みられるようになりました。使用される薬剤は、嚢胞のなかに注入することにより嚢胞壁に炎症を起こし、壁の癒着を生じさせ腫瘤を消失あるいは縮小させるものです。
病気に気づいたらどうする
発症年齢や大きさ、症状の程度により、検査や治療を急ぐ必要があるかどうかが決まりますが、頸部のはれが気になる場合は専門医に相談するとよいでしょう。
おすすめの記事
コラム多形腺腫、腺リンパ腫、唾液腺がんなど
●良性の腫瘍
唾液腺には多くの組織学的特徴をもつ腫瘍が発生します。多形腺腫は、良性腫瘍のなかで、最も頻度の多いものです。中年女性にやや多く、発育速度が非常に遅いのが特徴です。
なかには、気がついてから何年もたってから病院を受診される患者さんもいます。しかしながら放置すると非常に大きくなってしまいます。摘出腫瘍の重さが1kg以上になった報告もあります。通常は痛みや顔面神経麻痺などの症状を伴わず、多発することはありません。触診では、ごつごつして硬い、よく動く腫瘤(こぶ)が特徴です。
腺リンパ腫は、多形腺腫に次いで頻度の高い良性腫瘍です。高齢男性に多く発生します。多形腺腫と異なり、時に同時に数個の腫瘍が発生することがあります。まれには両側の耳下腺に発生することもあります。多くの場合、耳の下方に比較的軟らかい、丸い腫瘤を触れます。
良性腫瘍でも放置すると大きくなり、大きくなるほど手術における顔面神経麻痺などの合併症や再発の危険性が高くなります。また、うまく手術されず再発すると、2回目の手術はかなり難しくなります。
●唾液腺のがん
唾液腺にもさまざまながんが発生します。がんでは、痛みや、顔面神経麻痺、頸部リンパ節転移などがみられることがあります。唾液腺のがんのほとんどは、放射線治療では根治させることが困難なタイプのものなので、手術による治療が第一選択となります。術後に放射線治療や化学療法を追加することもあります。
手術においては、良性腫瘍とは異なり、周囲組織の合併切除が必要なため、顔面神経麻痺などの合併症が出ることが少なくありません。そのような場合は、さらに形成外科的手術の追加が必要となります。
腫瘍の性質にもよりますが、再発や転移のため予後不良の例も少なくありません。また、再発・転移が5年以上たって生じるような腫瘍もあり、たとえ切除がうまくいったと思われても、普通のがんよりは長期間経過をみる必要があります。
81歳の父なのですが、10年ほど前に大腸がんの手術をし、今は二年ごとにCTを撮っています。今までは特に問…