出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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食物アレルギー
しょくもつあれるぎー

食物アレルギーとは?

どんな病気か

 食べ物を経口摂取した時に、その食べ物に対するアレルギー反応により生じます。多くは食べ物を摂取して数分から1時間以内にじんま疹や腹痛などの症状が出る即時型ですが、数時間以上経過してから湿疹の悪化や下痢などがみられる遅延型もあります。

 成人にもみられますが、消化管粘膜の未熟な小児に多くの症状がみられます。

原因は何か

 食物中のアレルゲンは消化管粘膜をとおって血液中に入り、その結果アレルゲンに反応する免疫グロブリンE(IgE)などの抗体やT細胞がつくられます。再びその食べ物を摂取することでアレルギー反応が生じ、症状が現れます。多くの食べ物が原因になりますが、そのうち頻度の高いものを表3表3 食物アレルギーを起こす原因食物に示します。

表3 食物アレルギーを起こす原因食物

 そのほか、アレルギーではありませんが、食物中に含まれる成分(仮性アレルゲン)によりアレルギーとよく似た症状が現れることがあります。その代表的なものがサバ、タケノコ、ナスに含まれるヒスタミン様物質、ジャガイモなどに含まれるサリチル酸化合物です。

症状の現れ方

 即時型では、腹痛・下痢などの消化器症状やじんま疹・顔面腫脹などの皮膚症状、鼻炎、結膜炎気管支喘息症状、のどの詰まる感じ(喉頭浮腫)などが現れます。さらに重症になると血圧が低下し、アナフィラキシーショックを起こします。果物などのアレルギーでは初めに口唇のはれや口内のかゆみがみられ、口腔アレルギー症候群と呼ばれます。

 遅延型では食べ物によりアトピー性皮膚炎などの湿疹が悪化したり、下痢をすることがあります。

検査と診断

 血液中のアレルゲン特異的免疫グロブリンE(IgE)抗体の測定や、アレルゲンを白血球に作用させて反応をみるヒスタミン遊離試験を行います。ただし、これらの結果が陽性でも、必ずしも症状の原因ではないので、値が低い場合にはその他の検査結果を合わせて総合的に判断します。

 食物を用いたプリックテストは即時型の判定に有用です。

 症状の原因になる食べ物の特定には、食物除去試験や負荷試験を行います。負荷試験は症状を誘発する危険があるため、食物の負荷を少量より開始し、徐々に増やして反応をみます。

治療の方法

 原因となる食べ物を食べないようにするのが最も良い方法です。しかし、小麦や卵など多くの食品に含まれているものでは完全に除去するのは難しい場合があり、非吸収性の抗アレルギー薬(クロモグリク酸など)を食前に服用して症状が出るのを防ぎます。

 症状が出た時は、対症療法として抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬を内服し、湿疹の悪化にはステロイド外用薬を塗ります。

 気管支喘息アナフィラキシーショックの治療については、該当する項目を参照してください。

病気に気づいたらどうする

 食物アレルギーが疑われたら、まず原因と思われる食べ物を食事から除去します。低アレルギーミルクや低アレルギー米など、市販されている低アレルギー食品を代替食品として利用するのも有効です。小児の場合、1~2年除去していれば自然に食べられるようになることが多いので、負荷試験を行って、食べても大丈夫かどうか確認後に再開します。

(執筆者:横浜市立大学附属病院皮膚科教授 相原 道子)

食物アレルギーに関連する可能性がある薬

医療用医薬品の添付文書の記載をもとに、食物アレルギーに関連する可能性がある薬を紹介しています。

処方は医師によって決定されます。服薬は決して自己判断では行わず、必ず、医師、薬剤師に相談してください。

・掲載している情報は薬剤師が監修して作成したものですが、内容を完全に保証するものではありません。

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コラム見落としやすい食物アレルギー(魚卵、豆乳、ピーナッツなど)

横浜市立大学附属病院皮膚科教授 相原道子

●魚卵

 寿司を食べた直後のじんま疹やアナフィラキシーは、エビやイカ、マグロなどの魚介類が原因と考えられがちですが、魚卵のアレルギーが原因のことがあります。

 魚卵のなかでは、最も多くかつ重症となるのはイクラによるアレルギーで、魚卵1粒でもアナフィラキシーが起こることがあります。同じ卵といっても魚卵と鶏卵はアレルゲンが違うので、交叉反応(それぞれの食物に含まれるアレルゲンが類似するために、一方の食物で感作されるともう一方の食物でも反応すること)は起こりません。

●豆乳

 牛乳と違って豆乳は安全と考えられがちですが、豆乳も口唇のはれや違和感などの口腔症状や流涙、鼻閉、じんま疹などのアレルギー症状を起こします。豆乳に含まれる大豆蛋白の一部がアレルゲンとなって症状を起こすため、同じ成分が含まれる大豆もやしでもアレルギー症状がみられます。

 一方、このアレルゲンは、にがりで固める豆腐にはあまり含まれていません。そのため、豆腐では異常反応がみられず、大豆のアレルギーではないと誤解されてしまうことがあります。

 また、大豆のアレルギーには、消化管から吸収されることで感作される場合と、シラカバやハンノキの花粉で感作されて花粉症がみられる人に、花粉のアレルゲンに類似する大豆中のアレルゲンが反応して症状を起こす場合(花粉と食物の交差感作)とがあります。豆乳によるアレルギーは後者と考えられています。

●ピーナッツ

 ピーナッツは、ピーナッツバターや菓子類、おつまみなどのほか、中華料理やてんぷらの衣などいろいろな食品に含まれ、そのアレルギーは小児から大人まで幅広い年代にみられます。

 ピーナッツは木の実ではないため、同じナッツといっても木の実であるクルミ、アーモンド、カシューナッツなどとは交叉反応を起こすことがありません。しかし、ミックスナッツなどナッツ類が好きな人は多くのナッツで感作されていることがあり、他のナッツが必ずしも安全というわけではありません。

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