出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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遺伝性脊髄小脳変性症
いでんせいせきずいしょうのうへんせいしょう

遺伝性脊髄小脳変性症とは?

どんな病気か

 左右に体が揺れて歩きにくくなったり、指先が震えたり、ろれつが回らないなど、運動をスムーズに行うために必要な小脳が障害されたり、脳からの運動の指令を筋肉に伝える脊髄や末梢神経が障害されたりする病気です。

 遺伝性という名前がついているものの、実際は遺伝子性で、さまざまな遺伝子(30以上)の変化を原因とした、さまざまな種類(病型)のあることがわかってきています。また、その遺伝子変化を基にした細かい病名が付けられています。しかし、全体の約3分の1は、原因がわかっていません。

原因は何か

 日本で比較的頻度が高いのは、SCA3という遺伝子の変化で起きるマカド・ヨセフ病、SCA6という遺伝子の変化で起きる病気、アトロフィン1という遺伝子の変化で起きるDRPLAなどがあります。これらは優性遺伝といって、患者の父か母が症状をもっている場合が比較的多いですが、親の症状は軽くて見逃されていることもあります。

 一方、劣性遺伝といって、いとこ婚の父母から生まれた子に発症したり、父母に症状はなく一見突然現れたように患者が見つかったりするものもあります。病気の遺伝子が特定できても、なぜ症状が現れるかについてはほとんどわかっていません。

症状の現れ方

 発症する時期は、原因となる遺伝子の種類、変化の度合いによってさまざまです。多くは成人(20~50代)になってから発症し、ゆっくり進行するのが一般的です。

検査と診断

 疑われた病型の遺伝子検査を行うことで診断します。しかし、確定できるのは全体の半数くらいと思われます。特定の遺伝子の変化によっては、運動の症状以外に、認知症、筋萎縮、筋のぴくつき、耳が聞こえにくい、などの特徴的症状がでることがあり、確定診断に結びつくことがあります。

治療の方法

 特異的な治療法はありません。リハビリテーションが中心となります。

病気に気づいたらどうする

 神経内科のある病院で、専門医の診察を受けてください。また、遺伝子検査や遺伝についての疑問があれば、遺伝カウンセリングを行っている医療施設にご相談ください。

遺伝性脊髄小脳変性症と関連する症状・病気

(執筆者:国立精神・神経医療研究センター神経研究所疾病研究第二部部長 後藤 雄一)

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