出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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血胸
けっきょう

血胸とは?

どんな外傷か

 胸腔内に血液がたまった状態を血胸といい、心・大血管損傷、肺損傷、胸壁血管損傷(内胸動静脈損傷、肋間動静脈損傷)などに伴ってみられます(図38図38 血気胸)。また、胸腔内に空気と血液がともにたまった状態を血気胸といい、肺損傷の際にみられます。

図38 血気胸

原因は何か

 相当大きな外力が胸郭に作用した場合にみられる外傷で、交通事故や高所からの墜落はもとより、挟圧外傷(はさまれたことによる外傷)や暴行による胸部打撲などによっても発生します。また、胸部の刺創切創に伴ってみられることもあります。

症状の現れ方

 胸部外傷後の胸内苦悶、胸痛、呼吸困難、チアノーゼ(皮膚などが紫色になる)、顔面蒼白、頻脈、四肢冷汗および冷感などです。

 胸腔内には大量の血液がたまることが可能なので、大量血胸では、循環血液量の減少による出血性ショックを来し、血圧は低下して意識障害が現れ、同時に肺の虚脱(収縮)に基づく呼吸不全が現れます。

検査と診断

 血胸の診断は、胸部の身体所見(視診、聴診、触診、打診)と胸部単純X線撮影によりなされます。最近では、救急外来に超音波検査装置が常備され、迅速かつ非侵襲的に(体を傷つけることなく)血胸の診断が可能になりました。

治療の方法

 胸腔ドレナージ(コラム)を行って胸腔内にたまった血液を排除し、時間あたりの胸腔内出血量を測定するとともに、輸液、輸血を中心とした適切な循環管理を行います。胸腔内への出血が大量であれば、緊急開胸手術を行って出血を制御する必要もあります。

 最近では、血管造影検査で出血源を探し、出血源となっている動脈が特定できたら、血管内に塞栓物質を注入して止血する方法も一般的になりました(経カテーテル動脈塞栓術)。

応急処置はどうするか

 血胸に対する応急処置はとくにありません。出血性ショックの症状がみられたら、負傷者をあお向けにして下肢を高くし、血液が脳と心臓に少しでも多く供給されるよう努める必要があります。

 救急車が到着するまでの間、体温が低下しないよう、毛布や衣類をかけて、負傷者の保温を図ることも大切です。

(執筆者:日本医科大学千葉北総病院救命救急センター長・教授 益子 邦洋)

急性肺傷害に関連する可能性がある薬

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コラム胸腔ドレナージ

日本医科大学千葉北総病院救命救急センター長・教授 益子邦洋

 気胸、開放性気胸、緊張性気胸、血胸、血気胸などの際に行われる治療法です。胸腔内に胸腔ドレーンと呼ばれるチューブを挿入して、胸腔内に溜まった空気や血液を体外へ排出することで、虚脱(収縮)した肺を再び膨張させ、呼吸障害を軽くすることができます(図39図39 胸腔ドレナージ)。

図39 胸腔ドレナージ

 チューブは通常、第5~6肋間の前~中腋下線から挿入します。胸腔内は、常に陰圧(外界よりも低い)を保っていなければ呼吸障害が現れるので、チューブの端は接続管をへて低圧持続吸引器に接続し、マイナス5~20cmH2Oの陰圧で吸引します。

 チューブを挿入したら、空気漏出と血液流出の状態を経時的にチェックし、胸部X線撮影で胸腔内の変化を観察します。その結果、必要があれば、緊急開胸手術を行います。

血胸に関する医師Q&A