肝臓損傷
かんぞうそんしょう
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肝臓損傷とは?
どんな外傷か
肝臓は容積が大きいことと実質に対して被膜の比率が小さいために損傷を受けやすく、腹腔内臓器のなかでは最も損傷の発生頻度が高い臓器です。肝臓には肝臓動脈と門脈の2つの大きな血管を介して血液が流入し、静脈血は2本の肝臓静脈を介して下大静脈に流出しています。
このように、肝臓は血流に富んでおり、また太い血管と接しているため、損傷の程度によっては容易に出血性ショックを生じます。
原因は何か
刺創や銃創による損傷は少なく、交通事故や転落、墜落事故などによる損傷が多いようです。
ハンドルや右下部肋骨骨折などによる直達外力(外から加わる直接的な力)が関係していることが多いのですが、減速力(体が停止した時肝臓は前方に移動する)による時は肝臓の固定されている部位が損傷を受けやすいようです。
症状の現れ方
肝臓損傷に特異的な症状はないため、外傷機転(原因)、右側胸部から側腹部にかけての打撲痕や右上腹部の圧痛などがみられるならば、肝臓損傷を疑って診断をすすめます。
検査と診断
前記の症状・所見に加えて、血液検査で肝臓逸脱酵素であるトランスアミナーゼが上昇している時は、肝臓の損傷を疑って腹部超音波検査を行い、肝臓損傷の存在および腹腔内出血の程度を把握します。輸液により血圧が安定している時には、CT検査を行い損傷形態をより詳細に把握します。
治療の方法
輸液の投与により血圧が安定すれば保存的治療を選択します。造影CTにより造影剤の漏れがみられる時には、患者さんを血管撮影室に移して、出血の原因になっている肝臓動脈の塞栓術(コイルなどを用いて出血している動脈を詰めて止血する方法)を行います。大量の輸液投与によっても血圧が不安定な時には手術を選択することになります。
患者の状態が不安定な時(低体温、凝固異常、代謝性アシドーシス)には、最も簡単な術式(ダメージコントロール)を選択し、状態が改善してから根本的治療を行わなければなりません。
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脾臓は2つの免疫のはたらきをもつ臓器です。ひとつは細菌などの異物を貪食(細胞が異物を細胞内に取り込んで消化する作用)する機能、他のひとつは免疫グロブリンや貪食作用を容易にする補体を産生する機能です。
貪食作用
ヒトの体のなかで、貪食作用の75%は肝臓に、25%は脾臓に依存しています。肝臓が貪食作用を発揮するためには特異抗体が必要ですが、脾臓は特異抗体の存在なしでも貪食作用を発揮できるのが特徴です。
抗体産生
脾臓は免疫グロブリンのなかでIgMを産生します。IgMは血流に侵入する細菌などの抗原に対してすみやかに反応して、生体に対する攻撃力を弱めます。同時に補体(異物などの貪食作用を容易にする)を産生する臓器でもあります。
脾臓はこのように重要なはたらきをするため、できるだけ脾臓の摘出は避けるべきです。脾臓の摘出が行われた時には、肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス)を接種し、小児の場合、半年はペニシリン系の経口薬を服用すべきです。
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