[慢性じんましん] 2019/07/04[木]

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突然起こる強烈な痒みと腫れ。原因がよくわからず、なかなか治らない蕁麻疹(特発性の慢性蕁麻疹)で、毎日の生活に支障が出ているという患者さんもいるのではないでしょうか?
特発性の慢性蕁麻疹と診断されて治療を続けている山本さんと、主治医で皮膚科専門医の葉山惟大先生(日本大学医学部附属板橋病院皮膚科)にお話を伺いました。

仕事中に突然の蕁麻疹。職場に迷惑をかけるのではと不安に


山本さん

山本さん:病院に行く必要を感じるほど蕁麻疹の症状がひどくなったのは、3年前のことです。フライヤーの掃除をしていたときに、蕁麻疹が出て、唇や目も腫れました。目の腫れがひどく、眼科を受診したところ、油のアレルギーではないかと言われました。それを機に、たびたび蕁麻疹が出るようになりました。子どもを連れて遊園地へ遊びに行った際にも蕁麻疹が出て、顔が腫れるだけでなく息も苦しくなってしまったり、その1か月後には、入浴後に蕁麻疹と目や唇の腫れで、救急車で搬送されたこともあります。

フライヤーの掃除で腫れてしまったことや、遊園地でも顔が腫れて息苦しくなったことなどは、忘れないようにメモしておいて、以前から定期的に通っていた皮膚科のクリニックを受診した際に相談しました。この先生は、患者さんの話をよく聞いてくれると評判の先生で、私もとても信頼してかかっていました。私が遊園地での症状を話すと、「命にかかわることがあるから」といって、アナフィラキシー補助治療剤を処方してくれました。

この後にも、救急車では何度か運ばれたことがあります。夫が不在のときには子どもを預けられませんので、子どもも一緒に救急車に乗って病院へ行きます。当時、子どもは2~3歳くらいでしたが、保育園で「ママが救急車で運ばれちゃった」と話していたそうで、子どもながらに心配していたのだろうと思います。

葉山先生:特発性の慢性蕁麻疹は、20~40代の女性に多い疾患だといわれています1)。お子さんがいる患者さんも多く、入院となるとお子さんの預け先で困るケースをよく見かけます。

山本さん:身体を動かすと蕁麻疹が出てしまうので、周囲に迷惑をかけることになるという不安から、仕事も辞めました。子どもを連れて外出することも減り、引きこもりがちな生活を送っていました。

葉山先生:蕁麻疹が心配で汗をかくような活動を控え、家にこもりがちになると、それがストレスになって蕁麻疹が悪化することもあります。慢性蕁麻疹患者さんは、仕事での生産性や日々の活動が、アトピー性皮膚炎の患者さんと同じくらい障害されているという調査結果もあるんですよ2)

疾患別 労働生産性
Itakura A et al.:J Dermatol 2018;45(8):963-970より作図
著者にノバルティスの社員が3名含まれます。
著者にノバルティスより講演料/コンサルタント料を受領している者が含まれます。

外で遊んであげたいけれど、蕁麻疹が不安で引きこもりがちに

山本さん:朝や日中に、子どもを保育園に送って帰ってくる、その往復だけでも蕁麻疹が出ることもありました。送り迎えだけで蕁麻疹が出てしまうので、公園で子どもと遊ぶようなことは一切しなくなってしまいました。外出も避けるようになり、可能な限り室内で遊ぶようになってしまって。

葉山先生:外出が怖くなってしまい、屋内にこもりがちになると、それがまたストレスになって蕁麻疹の症状を悪化させるという悪循環が起こってしまいます3)

山本さん:保育園の先生には事情を説明し、「私の健康上の都合で、週末もあまり外に遊びに連れていけない」と伝えたところ、保母さんから「お母さん、無理しなくてもいいんですよ。保育園にいる間、たくさん外で遊ばせますから」と言っていただいて、ありがたかったですね。

蕁麻疹の症状が出るのを抑えることができないと、子どもと遊んであげたいという思いはあっても、子どもと一緒に外出した先で蕁麻疹のアナフィラキシー症状が出たらどうしよう、子どもから手も目も離せないのに…と考えてしまい、とても外出する気になれませんでした。

特発性の慢性じんましんを悪化させる要因
日本皮膚科学会蕁麻疹診療ガイドライン改定委員会:蕁麻疹診療ガイドライン2018,
日皮会誌 2018;128(12):2503-2624

親身になってくれる主治医から専門施設を紹介


葉山惟大先生

山本さん:通院していた皮膚科のクリニックでは、大きな病院を受診するようにと、紹介状も書いてくれました。その紹介状を持って大きな病院を受診して、いろいろな検査を受けました。アレルギーを疑われていたようで、食べたものについて詳しく聞かれましたが、何を食べたわけでもなかったので、結局、原因が特定できないと言われてしまって…。その後、別の病院も受診したのですが、そこでは検査をするわけでもなく、「蕁麻疹の急性悪化だからどうしようもない」との説明を受けました。

葉山先生:アレルギーを疑う先生もいらっしゃるようですが、実は蕁麻疹のうち、アレルギー性の蕁麻疹は5%くらいしかいません1)。蕁麻疹患者の約50%が、原因不明の慢性蕁麻疹です。

山本さん:クリニックで病院での診察結果を伝えると、先生が心配してくださって、皮膚科医の勉強会で葉山先生のお話を聞く機会があったとのことで、紹介していただいて、早速受診しました。フライヤーの掃除で蕁麻疹が出てから、1年が経っていました。

最初の診察では、時間をかけて話を聞いていただきました。「僕ができることは全てやりましょう」と言ってくださったと聞いていたので、心強い思いでした。治療してほしいというより、原因がわかればいいと思っていましたが、葉山先生から「原因はわからないけれど、治療はできる」と言われて、治療を開始しました。

症状はスマートフォンで記録。症状を数値化できる日記も活用

山本さん:蕁麻疹の症状は、入浴中や入浴後に出ることが多いので、お風呂に入るときにはいつも時計を気にしていました。10分以内にお風呂からでなければ、蕁麻疹が出てしまう時期があったのです。冬でも湯船で温まることができず、寒さを感じながら浴室を出ていました。

蕁麻疹が出たときは、スマートフォンで写真をとったりメモをつけたりして記録しています。症状記録用の日記も活用しています。どのくらい蕁麻疹がでたか、どのくらいかゆかったのかを、0から3の4段階で記入する日記で、症状の比較がしやすくなっています。

葉山先生:症状を数値化して記録し、目標とする数値を示して、数値が少しずつ改善されていくのが目に見えると、患者さんにとっても治療を続けるモチベーションになります。ただ、治療で症状が出なくなってくると、記入を忘れてしまう患者さんも多いですね。

山本さん:私もいまは症状が落ち着いているので、スマートフォンでのメモもつけなくなってしまいました。日記のほうも、0ばかりの日が続くとつい、記入を忘れてしまいます。

治療前には思ってもみなかった「日常生活のよろこび」

山本さん:最初のうちは、服用する薬の量も多く、服用するだけでも大変で、いつまで服用を続けなければならないのかと不安もありました。自分に合った治療を受けるようになってからは、蕁麻疹の症状も出なくなり、もう一度仕事を探そうという意欲が湧いてきました。面接では、蕁麻疹で治療中であることや、仕事中に暑さの影響などで蕁麻疹が出る可能性があることも隠さず伝えました。久しぶりに仕事を再開してみて気づいたことがあるのです。以前は、お金のために働いていると思っていたのですが、いまは働けること自体が楽しく、うれしくて。ふつうに働くことがこんなに楽しいのだとわかると、今度はいろいろなことが面白くなってきます。日々の生活がこんなに楽しくなるとは、治療前は思ってもみませんでした。

葉山先生:治療を受けて、労働生産性も活動量も改善したようですね。

山本さん:いまは、趣味の盆栽に力を入れていて、盆栽に関わる仕事がしたいと考えているところです。入浴の不安も減りましたので、今度は温泉旅行を計画しています。

  1. 田中稔彦ほか:アレルギー 2006;55(2):134-139
  2. Itakura A et al.:J Dermatol 2018;45(8):963-970 著者にノバルティスの社員が3名含まれます。著者にノバルティスより講演料/コンサルタント料を受領している者が含まれます。
  3. 日本皮膚科学会蕁麻疹診療ガイドライン改定委員会:蕁麻疹診療ガイドライン2018, 日皮会誌 2018;128(12):2503-2624
提供 ノバルティスファーマ株式会社
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