[僕と私の難病情報] 2022/10/12[水]

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国の指定難病のひとつ視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)の患者数は全国で数千人、女性が大多数を占めます。主に視神経に障害が起こるとされていますが、症状は多岐にわたります。

自身もNMOSDの症状に悩まされながらも、NPO法人日本視神経脊髄炎患者会の代表を務めるオペラ歌手の坂井田真実子氏に、患者会設立の想いや今後の展望などを伺いました。

坂井田真実子氏
国立音楽大学および同大学院を修了。ロータリー財団奨学生として伊・ボローニャへ留学。平成25年度文化庁新進芸術家在外派遣員としてウィーンへ派遣。ソレイユ音楽コンクール2位および優秀賞受賞。伊・セギッツィ国際ソリストコンクール聴衆賞(2位)受賞。順調に歌手としてキャリアを積んできた2016年、37歳のときにNMOSDを発症。一時は下半身不随となるも、現在は病症や後遺症と共存しつつステージに復活。2022年にNPO法人日本視神経脊髄炎患者会を設立、代表を務める。

患者が取り残されない社会を目指すため患者会を設立

オペラ歌手としてのキャリアアップを目指してウィーンへ留学し、プロとして活動の幅を広げようとしていた矢先の2016年に、私はNMOSDを発症しました。当時はNMOSDをネットで調べても難しい論文しか見つけられないほど情報が乏しい状態でしたから、NMOSDに特化した患者会があったら助かる方がいるのではないか、という気持ちがありました。

患者会立ち上げのきっかけとして大きかったのは、私がTwitterで「なぜNMOSDの日がないんだろう」とつぶやいたのをNPO法人のMSキャビンさんが拾い上げてくれたことです。その後、10月24日がNMOSDの日となりました。RDD JAPANや2020年のNMOSDの日イベント(中外製薬株式会社・アレクシオンファーマ合同会社共催)など、さまざまなイベントに呼んでいただくようになりました。イベントで演奏や講演を行う中で、同じ病気の方の声を耳にして、皆さんも私と同じように悩んでいるのだな、課題も多いのだな、と感じる体験や出会いが自分の中に積み重なり、そのような想いや出逢いが私の背中を”グッ”と押してくれて、2022年に日本視神経脊髄炎患者会を立ち上げる運びとなりました。

日本視神経脊髄炎患者会

同じ悩みを抱えている当事者の助けになりたい、というのがNMOSD患者会立ち上げの一番大きな理由です。私たちは「神経脊髄炎が取り残されない社会~見えない痛みに耳を傾け隠れている弱さに手を差し伸べる~」というヴィジョンを掲げています。視神経脊髄炎という病気の啓発、同じ病気の仲間が集える場であること、これらに積極的に取り組んでいきたいと考えています。

患者会をNPO法人にした理由もここにあります。社会的認知を高め、活動の幅を広げるために、市民公開講座や企業との共催イベントなど、NPO法人だからこそ一歩踏み出して行える活動がたくさんあります。

患者会の活動内容

2022年4月にNPO法人を設立してから半年ほど経ちましたが、患者会と歌手活動の両立がこんなに大変だったんだ、と改めて実感しています。反面、毎日がすごく楽しいです。

4月に行ったキックオフイベントの後、主な活動として、イベントの開催や当事者の心の悩みに特化した音声コンテンツの配信を行っています。また、薬にまつわるお悩みも多いので、製薬会社の方を招いて勉強会も開催しました。

毎月末の日曜日には、オンラインで繋がる「NMOJカフェ」を開催しています。患者会のコアメンバーが中心となって、午後のひととき、皆さんが集って柔らかく交流できる場を提供したい、そんな思いで運営しています。

たったひとりの「あなた」に届いてほしいという想いで活動

NMOSDは症状もニーズもひとりひとりで全く違うため、さまざまなイベントを通して、活動の方向づけをしていくつもりです。

心の悩み、人間関係、病気や薬について、など皆さんが求めているものを何かひとつ、私たちの活動を通して見つけていただけたらいいなと思っています。

私は演奏会で、会場のお客様のうちたったひとりの「あなた」に届けたい、と思い演奏しています。同様に患者会でも、参加された中のたったひとりの「あなた」に伝わるような活動がしたいと思っています。

先日開催した市民講座でも、「入院中のベッドの中から市民講座を聞きました」、とおっしゃってくださった方がいました。そういった今必要としているひとりに届けたい、という気持ちで活動しています。

ひとりひとり皆違う。でも同じ仲間

患者会を運営する中で、私たちが空っぽの状態で当事者に寄り添い、悩みを聞き、その方の求めるもの、必要としていることに少しでも応えていくことが大切だと思っています。

NMOSDの症状や環境などが違っても同じ病気の仲間である、という意識をもって活動しています。

当事者が集まってコミュニケーションを取ることは、心のケアだけでなく、よりよい治療生活にとっても大切なことだと考えています。もっと多くの当事者に患者会を知ってもらい、その人その人に合った方法で役立ててもらえれば、こんなにうれしいことはありません。

医療に対する課題や要望

NMOSDの症状は多岐にわたるため、例えば私の場合は眼科、神経内科、リハビリ、とスタンプラリーができるんじゃないかというくらい多くの診療科にかかります。そのときに、例えば眼科などの主となる科が主体となり薬剤師さんも巻き込み、チームでNMOSD患者を診断・治療する未来が来ると、いろいろ変わるのではないかという気がしています。

患者数から考えても、これから先もNMOSDの専門家は少ないままでしょう。ですから、NMOSDの知識が少しでもある神経内科医の先生が各地に増えてくれるといいなと思います。地方の、少し小さめの町でサポートしてもらえる医療機関が増えてほしいと考えています。

NMOSDの日イベント「第1回 HOME COMING DAY 2022」とその先に見据えるもの

10月22日に行う「第1回 HOME COMING DAY 2022」は、集まってくださった方から、「楽しかったね」とか、「また来年集まれるといいね」という声が聞こえてくるような企画をたくさんご用意しています。ご家族で楽しんでいただけるイベントなので、ぜひ、会場にお越しください。オンライン配信も行います。

NMOSDというのは本当に個性豊かな病気です。多種多様な症状があり、そこに自分が歩んできた道やこれからの未来といったいろいろなものがクロスしています。そのクロスしている場面場面で、人の助けを必要とするときが必ず来ます。周りを恐れずに自分の疾患について話したとき、手を差し伸べてくれる人が現れ、NMOSD当事者も安心して声をあげられるような社会にしていきたいと願っています。

日本視神経脊髄炎患者会

関連リンク
NPO法人 日本視神経脊髄炎患者会 HP
NPO法人 日本視神経脊髄炎患者会 公式Twitter
NPO法人 日本視神経脊髄炎患者会 公式Instagram

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