[身近な病気を知ろう ~QLife調査~] 2014/09/12[金]

いいね!つぶやく はてなブックマーク

 患者数が増加傾向にあるアレルギー疾患。その治療の実態について、厚生労働省研究班(「アレルギー疾患対策の均てん化に関する研究班」)が大規模な調査を実施しました。この調査は、患者さん側の要望(厚生労働省疾病対策課アレルギー対策作業班2011年2月会議)を受けて厚生労働省と日本アレルギー学会が協力する形で実現。2014年2~3月に実施され、有効回答は医師1,052人、患者さん8,240人と、この種の調査としては例をみない規模で行われました。今回の調査で明らかとなった「巷でよく行われている、診療ガイドラインから外れた治療法」をいくつか紹介します。

【ご注意】調査で判明した「実態の%」データには様々な誤差が含まれます。例えば、患者さんが医師の指導を勘違いしている(あるいは医師の説明不足)ケース、医師の指示通りに患者さんが薬を使用していない(同)ケースなどの可能性があることにご注意ください。

外用剤を「できるだけ薄くのばす」?

アトピー性皮膚炎でステロイド薬などを「できるだけ伸ばして塗る」のは、良くないことです。なぜなら薬は、治療の段階に応じて適切な量を使用することが重要であり、「できるだけ薄くのばそう」とすると使用量が日によって増減したり、常に少な目になってしまい、結果的に治療が長引いたりこじれたりする可能性があります。
ところが今回の調査では、医師の23%がステロイド薬を「できるだけ薄くのばして塗るよう指導」、患者さんの56%(成人の58%、小児の54%)も医師からそのように指導されていると回答しています。

皮脂を守ろうと「入浴時の石けん禁止」?

医師の8%が、アトピー性皮膚炎の患者さんに入浴時の石けん使用を禁止しており、患者さんの12%(成人の12%、小児の12%)も「入浴時に石けんを使用しない」よう主治医から指導を受けていると回答しています。
ところが標準的には、石けんの使用が皮膚症状を悪化させるとは考えられていません。きちんと「石けんを使用せよ」と指導されている患者さんの方が絶対数としては2.5倍(成人の29%、小児の33%)いましたが、あたかも別々の流派が存在するかのごとく正反対の指導が行われている事態は、治療現場に混乱を起こしている可能性があります。

喘息発作が月1回以上あっても「予防薬を使用しない」?

喘息の治療薬には、発作が起こった時に使う「発作治療薬」と、発作がない時に使う「発作予防薬」があり、その2種類は明確に区別されています。そして月に1回以上発作がある、つまり喘息のコントロールがうまくできていない場合は、発作予防薬を使用することが標準治療です。
しかし、「ゼーゼー・ヒューヒュー」する発作が月1回以上ある患者さんの17%(成人で15%、小児で21%)は予防薬を使用していないといいます。週1回以上発作がある患者に絞っても、15%(成人で13%、小児で19%)は予防薬を使用していません。

喘息発作が月1回以上あっても「発作止めは使用しない」?

診療ガイドラインには、科学的根拠に基づき、発作治療薬として推奨できる吸入薬や飲み薬、貼り薬が挙げられています。
ところが月1回以上の発作に悩む患者さんのうち、26%(成人で25%、小児で28%)は「発作止め」を全く使用していません。週1回以上発作がある患者さんでも、17%(成人で17%、小児で17%)は発作治療薬を服用していません。

発作治療薬は「予防薬としても使える」?

喘息の薬がまだ少なかった時代には、発作予防薬と発作治療薬が区別なく使われるケースもあったようです。しかし副作用の問題もあり、現在ではこの2種類は明確に区分して使います。少量を使えば治療薬が予防薬の代わりにもなる、ということではありません。
にもかかわらず、患者さんの16%(成人で23%、小児で10%)が発作治療薬であるメプチン、サルタノール、ストメリンDといった短時間作用型β刺激薬を、予防薬として日常的に使用しているようです。

アナフィラキシーあっても「エピペンは様子見」?

アナフィラキシーとは、アレルギーが原因でけいれんや呼吸困難など激しい症状が続く危険な状態を指しますが、この治療に有用な「エピペン」というお薬を予め患者さん自身に持たせたり、学校や幼稚園などに常備して教師や保育者が緊急時に使用することが推奨されています。
ところが実際には、注射薬の処方がされないことが珍しくありません。2012年12月には東京都に住んでいた当時11歳の女児が、エピペン注射が遅れて食物アレルギーのショックで死亡した事故が大きく報道されるなど、社会的にも認知が広がりつつありますが、医師の49%しかこのような患者さんにエピペンを処方しないようです。

「IgG検査」で食物アレルギー診断?

食物アレルギーを確認する検査として、診療ガイドラインでは、食物抗原特異的IgE抗体の検査を推奨しています。これとは別に、抗原特異的IgG抗体検査というものもあります(一文字違いだから分かりにくいですね)。このIgG抗体検査は保険適用でないため比較的高額な費用が必要です。さらに標準的にはその有効性は疑問視されています。
しかし、患者さんの6%(成人の7%、小児の5%)が「抗原特異的IgG抗体陽性だったことを根拠に」特定の食物を除去することを決めたと回答しています。

関連リンク

アレルギーに関する
この記事を読んだ人は
他にこんな記事も読んでいます。
記事の見出し、記事内容、およびリンク先の記事内容は株式会社QLifeの法人としての意見・見解を示すものではありません。
掲載されている記事や写真などの無断転載を禁じます。