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大腸ポリープの治療法執筆者:聖路加国際病院院長 福井 次矢

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大腸ポリープとは、どんな病気でしょうか?

おもな症状と経過

 ポリープとはギリシャ語の「多くの足」という言葉に由来します。同様の由来をもつ言葉にオクトパス(タコ)があります。医学的には大腸などの消化管およびそのほかの臓器に生ずる、隆起性の病変の総称です。したがって、単にポリープといった場合には、良性も悪性も含まれ、形状の違いからも細かく分類すると多岐にわたります。大腸ポリープには、大腸がんや将来的にがんになる可能性のある腺腫、ほかには過形成性ポリープ、炎症性ポリープなどがあります。これらは良性でがんになる危険性はほとんどありません。

 大腸ポリープが小さい場合、症状はとくにありません。ある程度の大きさになると、便がポリープに接触することで擦れて、便に血が混じることがあります。目に見える出血がなくても、便潜血検査をすると出血があったことを示す(陽性)ことがあります。そのほか、おなかが張る、おなかが痛い、便が出にくいなどの症状が現れる場合もあります。

 ポリープを発見するための検査としては、直接的には内視鏡や3D-CTがあります。そのほか、バリウムを用いる注腸検査やカプセル内視鏡(日本では保険適用に制限があります)もあります。これらの方法のなかで、内視鏡は検査と同時にポリープを切除して治療まですることができます。また、ポリープが疑われる間接的な検査として、便潜血などの検査もあります。

 大腸ポリープすべてを治療する必要はありません。ただし、がんになる可能性が大きい場合は、できるだけ早期の正確な診断、治療が大切です。ポリープはサイズと形状により悪性の可能性が類推されます.また適宜,内視鏡で観察しながらポリープの一部を切除して顕微鏡で精査する生検も併用すると、診断の精度はより確実なものになります。

 しかし、腺腫の一部にはがんがまぎれ込んでいることもあり(腺腫内がん)ます。ポリープの一部を少し取っただけの生検ではがんを見落とすおそれがあり、適切な検査法の選択が望まれます。正確な診断をつけるためにはポリープ全体を切除して組織の検査をする必要があり、病変全体の生検と治療をかねて、内視鏡による切除が有効です。ポリープのサイズや形状によっては、最初から外科での手術が選択される場合もあります。

病気の原因や症状がおこってくるしくみ

 大腸ポリープから大腸がんを発生させる、次のようなリスク因子がわかっています。①年齢(40歳以上)、②家族歴、③高カロリー摂取および肥満、④大量のアルコール摂取、⑤喫煙、など。(1)~(7)

 病変が小さいうちは自覚症状もなく便潜血も陽性にならないので、上記に該当しリスクが高い人は、適宜、内視鏡等の検査で早期発見に努めることが大切です。ポリープのサイズが小さいうちに発見できれば、治療の負担も少なく、合併症等の危険性も少なくなります。

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治療法とケアの科学的根拠を比べる

治療とケア 評価 評価のポイント
内視鏡によってポリープを切除する ★5 患者さんへの負担が小さい(侵襲の少ない)内視鏡による切除(ポリペクトミー、内視鏡的粘膜切除術、内視鏡的粘膜下層剥離術)が第一選択となります。 根拠(8)~(10)
外科手術を行う ★3 すでにがんに進行して粘膜まで浸潤していることが疑われる場合や、内視鏡を用いた切除が困難な位置にポリープがある場合には、開腹手術が行われます。 根拠(11)~(23)

総合的に見て現在もっとも確かな治療法

内視鏡による摘出が第一選択

 すべての大腸ポリープががんに変化するわけではありませんが、大腸ポリープのなかでも腺腫は大腸がんの発生に深いかかわりがあることがわかっています。

 大腸がんに変化する危険性が高いポリープはできるだけ切除すべきです。各種検査でポリープの存在が確認され、切除の適応があると判断された場合は、内視鏡による切除を行います。内視鏡でポリープを観察しながら、サイズや部位に応じて各種器材を用いて高周波電流で切除します。

 内視鏡による検査でポリープが見つかった場合、専門医であれば、ポリープの形状、表面の模様や大きさなどからがんに変化する危険性を判断できますので、適応に応じて内視鏡による切除ができます。

手術が必要なこともある

 しかし、すでにがんになり、粘膜より深いところまで進行していることが疑われる場合や、ポリープが発生している位置によって、内視鏡による切除が困難な場合があり、そうした場合には、各種検査で十分検査したうえで開腹手術をすることになります。

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根拠(参考文献)

  • (1) Bond JH. Polyp guideline: diagnosis, treatment, and surveillance for patients with colorectal polyps. Practice Parameters Committee of the American College of Gastroenterology. Am J Gastroenterol. 2000;95:3053-3063.
出典:EBM 正しい治療がわかる本 2003年10月26日初版発行(データ改訂 2016年1月)