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尿道炎の治療法執筆者:聖路加国際病院院長 福井 次矢

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尿道炎とは、どんな病気でしょうか?

おもな症状と経過

 細菌や微生物が尿道内に侵入しておこる病気です。淋菌性尿道炎と非淋菌性尿道炎に分けられています。

 淋菌性尿道炎では、感染から数日後の排尿時に、尿道に焼けるような痛みを感じ、尿道口から黄色い膿がでてきます。

 非淋菌性尿道炎の原因となる代表的なものはクラミジアです。感染後1~2週間してから、尿道に軽い痛みやかゆみを覚えます。クラミジアによるものは、膿がでても透明で目立たず、気がつかないこともあります。

 尿道の分泌物で菌を検査しますが、最近は高感度の遺伝子診断法で尿から簡便に調べることが可能となりました。淋菌やクラミジアは咽頭にもすみ着くので、オーラルセックスによっても感染します。抗菌薬で治りますが、再発させないためにも、パートナーとともに治療することが大切です。

病気の原因や症状がおこってくるしくみ

 多くは性交渉による感染で、STD(性行為感染症)の一種といえます。女性の場合、自覚症状が現れないことも多いため、早期に治療を受けることができず、感染が拡大することが少なくありません。また、抗菌薬の治療を始めると症状がすぐに消えるため、治療途中で薬を飲むのをやめてしまうことがあります。このため病気が長引いたり、感染者を増やしたりしがちです。

 一方、尿道にもともとすみ着いている細菌が、過労などで体の抵抗力が弱ったときに活動を始めて尿道炎となることもあります。また、手術や治療で尿道にカテーテルと呼ばれるゴム製の管を入れたときなどに、尿道炎を引きおこすこともあります。

病気の特徴

 尿道炎として治療されるのは、ほとんど男性です。女性の場合は尿道炎単独ということはあまりなく、膀胱炎として治療されます。

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治療法とケアの科学的根拠を比べる

治療とケア 評価 評価のポイント
淋菌性尿道炎の場合 セフェム系抗菌薬を用いる ★5 セフェム系抗菌薬は、非常に信頼性の高い臨床研究によって有効性が確認されています。 根拠(1)(2)
アミノグリコシド系抗菌薬(トロビシン)を筋肉内注射する ★5 アミノグリコシド系抗菌薬は、専門家の意見や経験から支持されています。 根拠(2)
ペニシリン系抗菌薬を用いる ★3 ペニシリン系抗菌薬の使用については、専門家の意見や経験から支持されています。 根拠(2)
非淋菌性尿道炎の場合 マクロライド系抗菌薬を用いる ★5 クラリスロマイシンやアジスロマイシン水和物の内服治療の有効性は、非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。 根拠(2)
テトラサイクリン系抗菌薬を用いる ★5 塩酸ミノサイクリンや塩酸ドキシサイクリンの内服治療の有効性は、非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。 根拠(2)
ニューキノロン系抗菌薬を用いる ★5 非常に信頼性の高い臨床研究によって有効性が確認されています。 根拠(2)

よく使われる薬の科学的根拠を比べる

抗菌薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
セフェム系 ロセフィン(セフトリアキソンナトリウム水和物) ★5 セフトリアキソンナトリウム水和物やセフォジジムナトリウムは、淋菌性尿道炎に対して効果があることが非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。セフィキシムは、ある程度の効果が認められるものの、無効例も報告されています。 根拠(1)(2)
ケニセフ(セフォジジムナトリウム) ★5
セフスパン(セフィキシム) ★3
アミノグリコシド系 トロビシン(スペクチノマイシン塩酸塩水和物) ★5 淋菌性尿道炎に対して効果があることが非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。 根拠(2)
ペニシリン系 オーグメンチン(アモキシシリン水和物・クラブラン酸カリウム) ★3 淋菌性尿道炎に臨床的に効果があることが報告されています。 根拠(2)
サワシリン(アモキシシリン水和物) ★3
テトラサイクリン系 ミノマイシン(ミノサイクリン塩酸塩) ★5 いずれの薬も非淋菌性尿道炎に対する有効性が、非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。 根拠(2)
ビブラマイシン(ドキシサイクリン塩酸塩水和物) ★5
マクロライド系 クラリス(クラリスロマイシン) ★5 いずれの薬も非淋菌性尿道炎に対する有効性が、非常に信頼性の高い臨床研究によって報告されています。 根拠(2)
ジスロマック(アジスロマイシン水和物) ★5
ニューキノロン系 クラビット(レボフロキサシン水和物) ★5 非淋菌性尿道炎に対する有効性が信頼性の高い臨床研究によって確認されています。ほかのニューキノロン系薬についても専門家の意見や経験から支持されています。 根拠(2)

総合的に見て現在もっとも確かな治療法

原因となっている細菌や微生物を調べる

 淋菌性、非淋菌性どちらであっても適切な薬物療法を行えば、治療にてこずる病気ではありません。ただし、原因となる細菌や微生物の種類により、それにもっとも適した抗菌薬があるので、症状が現れたら早めに受診し、原因となっている菌や微生物の種類を特定する必要があります。

治療の中心は抗菌薬の内服

 淋菌性尿道炎は抗菌薬に耐性を持った菌が増えており、現在確実に効果があると考えられているのはセフェム系抗菌薬のロセフィン(セフトリアキソンナトリウム水和物)やケニセフ(セフォジジムナトリウム)、アミノグリコシド系のトロビシン(スペクチノマイシン塩酸塩水和物)であり、まずはこれらの抗菌薬による治療を行います。また、非淋菌性尿道炎を合併している可能性が高いため、同時にマクロライド系抗菌薬のジスロマック(アジスロマイシン水和物)を用いることもあります。

 非淋菌性尿道炎と考えられた場合は、ジスロマック(アジスロマイシン水和物)あるいはテトラサイクリン系抗菌薬のビブラマイシン(ドキシサイクリン塩酸塩水和物)などが用いられます。

自己判断で薬の服用を中止しない

 これらの治療を行うことによって、淋菌性なら数日から1週間、非淋菌性なら約1週間で完治します。ただし、抗菌薬の治療を始めると症状がすぐに消えるため、治療途中で薬を飲むのをやめてしまうとなかなか完治には至りません。自己判断で薬の服用を中止せず、医師の指示にしたがうべきでしょう。

 いずれの場合も、治療は性的パートナーも同様に行う必要があります。

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根拠(参考文献)

  • (1)Kimberly AW, Stuart MB, et al. Emerging antimicrobial resistance in Neisseria Gonorrhorar: Urgent need to strengthen prevention strategies. Ann Intern Med. 2008; 148: 606-613.
  • (2)岸本寿男、岡慎一、その他. 性感染症 診断・治療ガイドライン 2011. 日本性感染症学会誌. 2011; 22( supp1).
出典:EBM 正しい治療がわかる本 2003年10月26日初版発行(データ改訂 2016年1月)