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関節リウマチの治療法執筆者:聖路加国際病院院長 福井 次矢

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関節リウマチとは、どんな病気でしょうか?

おもな症状と経過

 関節リウマチは、おもに関節のなかにある軟骨の滑膜部分が炎症をおこす自己免疫疾患です。全身の倦怠感や筋肉の痛み、発熱などで発病し、その後、関節の痛み、こわばる感じ、腫れなどの症状がみられます。

 とくに、関節リウマチで特徴的なのは、左右対称に複数の関節で炎症がおこることで、ある一つの関節から始まっても、いずれは複数の関節に広がっていきます。最初は手の指の関節からおこることが多く、手首、ひじ、足の指、膝などにも徐々に炎症がおよびます。

 当初は関節を動かすときにだけ痛みますが、病状が進むと動かさなくても痛みを感じるようになります。また、朝起きてから何時間か関節のこわばりが感じられるのも、関節リウマチに特徴的な症状の一つです。

 長期間にわたって炎症が続くと、痛みだけでなく、関節が変形したり破壊されたりして動きが制限されるようになり、歩行ができなくなったり、荷物を持つことができなくなったりします。原因は現在も不明で診断の決め手もないため、いくつかの症状と検査所見がそろえば関節リウマチと判断します≪アメリカリウマチ学会、ヨーロッパリウマチ学会による2010年分類基準≫。

病気の原因や症状がおこってくるしくみ

 多くの患者さんの血液中から、リウマトイド因子や抗CCP抗体という自己抗体が検出されています。そのことから、関節リウマチの患者さんの免疫システムにはなんらかの異常がおきていて、本来は外敵を攻撃するはずの免疫システムが、関節のなかの正常な自分自身の組織を攻撃しているため炎症がおこることがわかっています。

 関節のなかで炎症が続くと、関節全体を包み込んでいる関節包の内側にある滑膜に血管や細胞が増え、滑膜表面の滑らかさが失われてしまいます。このようになると関節の動きがぎくしゃくしたり、こわばったりし始め、さらに炎症が進行すると骨の軟骨部分や靭帯、やがては骨そのものを破壊することになります。

病気の特徴

 わが国では、現在、人口の0.4~0.5パーセント、30歳以上の人口の1パーセントにあたる人がこの病気にかかっています。7対3の割合で女性に多く、大部分の患者さんは30~60歳代で発病します。

関節リウマチの分類基準

 1987年に発表されたアメリカリウマチ学会の診断基準は、早期診断には不向きであるため、2010年にアメリカリウマチ学会とヨーロッパリウマチ学会が合同で新基準を提唱しました。次の項目ごとの点数の合計が6点以上であれば関節リウマチに分類されます。 (1)

 1.関節病変(5点満点)

 2.血清学的因子(3点満点)

 3.滑膜炎持続期間(1点満点)

 4.炎症マーカー(1点満点)

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治療法とケアの科学的根拠を比べる

治療とケア 評価 評価のポイント
非ステロイド抗炎症薬を用いる ★4 関節リウマチが疑われる場合は関節の痛みや炎症を抑えるために非ステロイド抗炎症薬を用います。その効果は信頼性の高い臨床研究により認められていますが、病気の進行を抑える効果はありません。 根拠(2)
抗リウマチ薬を用いる ★5 関節リウマチと診断されたら、3カ月以内のなるべく早期に抗リウマチ薬を開始することが推奨されています。抗リウマチ薬は、大きく非生物学的抗リウマチ薬と生物学的抗リウマチ薬に分けられ、第一選択薬として非生物学的抗リウマチ薬が用いられることが多くなっています。非生物学的抗リウマチ薬は数種類ありますが、これらの薬剤を単独あるいはいくつか組み合わせることにより病気そのものの進展が抑えられます。代表的な非生物学的抗リウマチ薬はメトトレキサートであり、症状を抑え、同時に病気そのものの進展も抑制することがわかっています。生物学的抗リウマチ薬は、ほかの薬で治療しても効果が弱い場合や、病気の進行が激しいときに使用されます。 根拠(3)(4)(5)(6)(1)
副腎皮質ステロイド薬</▲>やく</▲>を用いる ★4 炎症が非常に強い場合は、非ステロイド抗炎症薬、抗リウマチ薬に加えて副腎皮質ステロイド薬を用います。プレドニン1日10mgまでの少量の副腎皮質ステロイド薬が症状を軽減し病気の進行を抑えることを示す非常に信頼性の高い臨床研究が複数あります。しかし、2年以上長期間にわたって副腎皮質ステロイド薬を使用することによって、骨粗しょう症、糖尿病、高血糖、高血圧、クッシング症候群、緑内障などの副作用を認めることがあるので、注意が必要です。 根拠(1)
手術によって人工関節を装着する ★2 一般的に、外科的な治療法は薬物治療を中心とした保存的治療が無効であり、激しい痛みや著しい関節の損傷がある場合に選択されています。 根拠(7)
リハビリテーションを行う ★5 リハビリテーションによって筋力をはじめ、自立した日常生活を営むための身体の機能が維持されることを示す非常に信頼性の高い臨床研究があります。 根拠(8)

よく使われる薬の科学的根拠を比べる

非ステロイド抗炎症薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
ロキソニン(ロキソプロフェンナトリウム水和物) ★4 明らかな消炎鎮痛効果が専門家によって認められています。また、非ステロイド抗炎症薬の種類によって消炎鎮痛効果に差がないことを示す臨床研究があります。 根拠(9)
ボルタレン(ジクロフェナクナトリウム) ★4
レリフェン(ナブメトン) ★4
オステラック/ハイペン(エトドラク) ★4
モービック(メロキシカム) ★4

抗リウマチ薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
非生物学的抗リウマチ薬 リウマトレックス(メトトレキサート) ★5 いずれの薬も効果を示す非常に信頼性の高い臨床研究がありますが、強い副作用がでることがあります。 根拠(10)(11)(4)
エンドキサン(シクロホスファミド水和物) ★5
イムラン/アザニン(アザチオプリン) ★5
アザルフィジンEN/サラゾピリン(サラゾスルファピリジン) ★6 効果を示す非常に信頼性の高い臨床研究があります。 根拠(12)(4)
リマチル(ブシラミン) ★5
メタルカプターゼ(D-ペニシラミン) ★5 リウマチの進行を抑える効果を示す非常に信頼性の高い臨床研究がありますが、副作用が多く、ほかの抗リウマチ薬に比べて有利なところはありません。 根拠(13)
生物学的抗リウマチ薬 レミケード(インフリキシマブ) ★5 生物学的抗リウマチ薬は、一般的に非生物学的抗リウマチ薬が効果不十分の際に適応になります。 根拠(14)
エンブレル(エタネルセプト) ★5
ヒュミラ(アダリムマブ) ★5
シンポニー(ゴリムマブ) ★5

副腎皮質ステロイド薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
プレドニン(プレドニゾロン) ★4 痛み、炎症を抑える効果については非常に信頼性の高い臨床研究があります。少量のステロイドを長期間使用することにより、病気の進行を抑える効果が示唆されています。また、非生物学的抗リウマチ薬と併用することにより、関節破壊を予防する効果も示唆されています。 根拠(1)

軟骨保護薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
スベニール/アルツ(ヒアルロン酸ナトリウム) ★2 軟骨を保護し、患者さんの苦痛をやわらげる効果は専門家の意見や経験によって認められています。

総合的に見て現在もっとも確かな治療法

薬、手術、リハビリが治療の3本柱

 関節リウマチの治療には、薬物療法、手術療法、リハビリテーションの三つの柱があります。それぞれの治療の有効性は非常に信頼性の高い臨床研究で確認されており、病気の進行具合や日常生活を過ごすうえでの不便さを考慮しながら治療法が選択されます。とくに近年では生物学的製剤など新薬の開発が目覚ましく、治療の中心になりつつあります。

薬は効果と副作用のバランスを考え、切り替えながら選択する

 関節リウマチに対する薬物療法には、痛みと炎症を抑える非ステロイド抗炎症薬、関節の破壊を阻止し、病気そのものの進行を抑える抗リウマチ薬や副腎皮質ステロイド薬などがあります。

 基本となる抗リウマチ薬は数種類ありますが、人それぞれによって効果に違いがみられたり、副作用の現れ方も違ってきたりしますので、一定の期間使いながら、必要な場合にはほかの薬に切り替えます。

 また、抗リウマチ薬は効果が現れるまでに1カ月から半年ほどかかるので、関節リウマチと診断されたら早期から使用します。

 病気そのものの進行をくい止める効果はありませんが、非常に苦痛となる痛みを抑えるために、非ステロイド抗炎症薬は長期間使われます。

 この際、副作用として胃潰瘍・十二指腸潰瘍などの胃腸障害がおこりやすいので、注意が必要です。

薬だけに頼らずリハビリを継続する

 薬によって症状が抑えられても、痛みが完全にとれるわけではないため、どうしても関節を動かすのがおっくうになりがちです。動かさないでいると、ますます関節は固くなってこわばり、筋肉も衰えていきます。

 その結果、いろいろな動作が困難になり、日常生活に支障をきたすようになってしまいますから、自立した生活を維持するために、積極的にリハビリテーションを継続するようにしましょう。

著しく運動の機能が損なわれる場合は手術を

 手術療法については、薬やリハビリテーションではもはや痛みや炎症が抑えられない、関節の破壊が進んで日常生活に非常に不都合を生じる場合に選択することになります。破壊された関節を人工関節に置き換える手術が行われます。

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根拠(参考文献)

  • (1) Aletaha D, Neogi T, Silman AJ et al. 2010 Rheumatoid arthritis classification criteria: an American College of Rheumatology/European League Against Rheumatism collaborative initiative. Arthritis Rheum. 2010 Sep;62(9):2569-81
  • (2) American College of Rheumatology Subcommittee on Rheumatoid Arthritis Guidelines. Guidelines for the management of rheumatoid arthritis: 2002 Update. Arthritis Rheum. 2002 Feb;46(2):328-46
  • (3) Singh JA, Furst DE, Bharat A, et al. 2012 update of the 2008 American College of Rheumatology recommendations for the use of disease-modifying antirheumatic drugs and biologic agents in the treatment of rheumatoid arthritis. Arthritis Care Res (Hoboken). 2012 May;64(5):625-39
  • (4) Smolen JS, Kalden JR, Scott DL, et al. Efficacy and safety of leflunomide compared with placebo and sulphasalazine in active rheumatoid arthritis: a double-blind, randomised, multicentre trial. European Leflunomide Study Group. Lancet. 1999;353:259-266.
  • (5) Sharp JT, Strand V, Leung H, et al. Treatment with leflunomide slows radiographic progression of rheumatoid arthritis: results from three randomized controlled trials of leflunomide in patients with active rheumatoid arthritis. Leflunomide Rheumatoid Arthritis Investigators Group. Arthritis Rheum. 2000;43:495-505.
  • (6) Suarez-Almazor ME, Belseck E, Shea B, et al. Methotrexate for treating rheumatoid arthritis. Cochrane Database Syst Rev. 2000;(2):CD000957.
  • (7) Wasserman AM. Diagnosis and management of rheumatoid arthritis. Am Fam Physician. 2011 Dec 1;84(11):1245-52
  • (8) Sokka T, Kotaniemi A, Hannonen P. A randomized two-year study of the effects of dynamic strength training on muscle strength, disease activity, functional capacity, and bone mineral density in early rheumatoid arthritis.Hakkinen A, Arthritis Rheum. 2001;44:515-522.
  • (9) Gotzsche PC. Non-steroidal anti-inflammatory drugs. Clin Evid. 2002;7:1063-70.
  • (10) Suarez-Almazor ME, Belseck E, Shea B, et al. Cyclophosphamide for treating rheumatoid arthritis. Cochrane Database Syst Rev. 2000;(4):CD001157.
  • (11) Suarez-Almazor ME, Spooner C, Belseck E. Azathioprine for treating rheumatoid arthritis. Cochrane Database Syst Rev. 2000;(4):CD001461.
  • (12) Kim HA, Song YW. A comparison between bucillamine and D-penicillamine in the treatment of rheumatoid arthritis. Rheumatol Int. 1997;17:5-9.
  • (13) Suarez-Almazor ME, Spooner C, Belseck E. Penicillamine for treating rheumatoid arthritis. Cochrane Database Syst Rev. 2000;(4):CD001460.
  • (14) Singh JA, Furst DE, Bharat A, et al. 2012 update of the 2008 American College of Rheumatology recommendations for the use of disease-modifying antirheumatic drugs and biologic agents in the treatment of rheumatoid arthritis. Arthritis Care Res (Hoboken). 2012 May;64(5):625-39
出典:EBM 正しい治療がわかる本 2003年10月26日初版発行(データ改訂 2016年1月)