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皮膚筋炎(多発性筋炎)の治療法執筆者:聖路加国際病院院長 福井 次矢

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皮膚筋炎(多発性筋炎)とは、どんな病気でしょうか?

おもな症状と経過

 自分自身の細胞や組織に免疫反応をおこしてしまう自己免疫疾患の一つで、おもに全身の多くの骨格筋に炎症がおき、皮膚や筋肉が侵される病気です。皮膚症状を伴うものを皮膚筋炎、筋肉症状が中心のものを多発性筋炎と呼びますが、これらは病気の要因やしくみが近いと考えられています。

 筋肉の症状としては、上腕部や大腿部(太もも)、首まわりの筋力が低下するため、しゃがみ立ち、階段の昇り降り、腕の上げ下ろしや上げたままにしておくこと、あごを上げることなどが難しくなり、ものを持っても力が入らず落としてしまうなど筋脱力がみられます。

 人によってはものを飲み込みにくくなる嚥下障害や、言葉を発しにくくなる構語障害をおこすこともあります。

 約半分の患者さんで筋肉痛が認められ、慢性期になると筋の萎縮が認められるようになります。

 皮膚の症状としては、まぶたに赤紫色の斑紋ができるヘリオトロープ疹や、手の指背(関節の上部)、とくに第二関節(中手指節関節)上の皮膚に青味がかった皮疹が生じるゴットロン徴候がしばしばみられます。また皮膚がかさかさになる鱗屑性紅斑も、ひじや膝、首まわり、肩のあたりに認められることがあります。

 間質性肺炎、多発関節痛、関節炎、寒冷条件下で手指が白くなるレイノー現象などがおこることもあります。

 不整脈や、心筋炎による心不全などを合併すると、その後の経過が悪くなります。とくに50歳以上の男性で皮膚症状が中心となる患者さんでは、悪性腫瘍の併発が高い頻度でみられます。

病気の原因や症状がおこってくるしくみ

 自己免疫がかかわっていることは確かですが、はっきりとした原因はいまのところわかっていません。ウイルスなどの感染、悪性腫瘍、薬剤の影響による炎症であるとの説もあります。

 筋肉をごく少量切除して顕微鏡で調べる筋生検という検査を行うと、炎症は、まず筋肉の間にある間質という部分におこっています。そこから炎症が筋肉に広がっていくと、筋線維が侵され筋肉に力が入らなくなってきます。

 ただし、その炎症がもともと血管に炎症が生じたためにおこっている二次的なものであるのか、筋肉そのものが自己免疫の標的になっているのか、などは不明です。

病気の特徴

 多発性筋炎、皮膚筋炎の患者数は、1991年の調査ではおよそ6,000人でしたが、2009年の調査では17,000人と増加傾向にあり、現在では20,000人を超えていると推測されます(1)。ほかの膠原病と同様に女性に多いとされ、3対1の割合で女性に多く、60歳以上での発病が25%程度を占めます。しかし患者数では小児期(10歳前後)にも一つピークを認めます。厚生労働省の特定疾患(難病)に指定され、公費による治療の対象となっています。

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治療法とケアの科学的根拠を比べる

治療とケア 評価 評価のポイント
副腎皮質ステロイド薬を用いる ★4 薬物療法では、副腎皮質ステロイド薬を第一選択として用います。中等症の皮膚筋炎に対しては、内服の副腎皮質ステロイド薬を用いますが、再発した場合や重症の場合は副腎皮質ステロイド薬の点滴やパルス療法を行います。また、皮膚の病変に対して副腎皮質ステロイド薬の軟膏を使用することもあります。,   根拠(2)(3)
免疫抑制薬を用いる ★3 副腎皮質ステロイド薬が無効であったり、量が減らせない場合には免疫抑制薬の使用を考慮します。近年のシステマティックレビューでは、免疫抑制薬は有意な臨床症状の改善を認めないと報告されています。メトトレキサート、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル、シクロホスファミド等が使用されます。 根拠(2)
γグロブリン大量静注療法を行う ★3 副腎皮質ステロイド薬が無効であったり、重症の症例に使用されることがあります。 根拠(2)(4)(5)
生物学的製剤を使用する ★3 ほかの薬と同様に、副腎皮質ステロイド薬が無効であったり、重症の症例に使用されることがあります。いくつかの生物学的製剤は、後ろ向き研究で有効であったとする報告があります。 根拠(6)(7)
急性期から関節が固まってしまわないように拘縮防止の運動を行う ★2 急性期には安静を保ったほうがよいという意見もありますが、関節の拘縮(固まってしまう状態)がおこらないように、むしろ、急性期から関節を中心とした運動療法などリハビリテーションを行ったほうがよいという臨床研究があります。 根拠(8)
外傷、感染、薬物、紫外線曝露など、症状の悪化を招く因子を避ける ★2 外傷、感染、薬物、紫外線を多量に浴びる(曝露)などは、症状を悪化させることが専門家の経験上明らかですから、それを避けるのは基本となります。 根拠(2)
急性期から積極的にリハビリテーションを行う ★4 症状が落ち着くのを待たず、急性期から積極的にリハビリテーションを開始しても筋肉の炎症は悪化せず、筋力は改善することが信頼性の高い臨床研究によって確認されています。 根拠(9)

よく使われる薬の科学的根拠を比べる

副腎皮質ステロイド薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
プレドニン(プレドニゾロン) ★4 専門家の意見や経験から、副腎皮質ステロイド薬の炎症を抑制する効果は広く支持されており、第一選択薬となります。

免疫抑制薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
リウマトレックス(メトトレキサート) ★3 臨床的な治療効果の差は、現在までの研究でははっきりしませんが、副腎皮質ステロイド薬の補助療法として行われます。 根拠(2)
アザニン/イムラン(アザチオプリン) ★3
エンドキサン(シクロホスファミド水和物) ★3

γグロブリン大量静注療法

主に使われる薬 評価 評価のポイント
グロブリン-Wf(人免疫グロブリン) ★3 人免疫グロブリンの皮膚筋炎の患者さんに対する効果も、免疫抑制剤と同様に、限定的とされています。 根拠(2)

生物学的製剤

主に使われる薬 評価 評価のポイント
リツキサン(リツキシマブ) ★3 生物学的製剤が、皮膚筋炎に効果があるとの報告がありますが、日本ではまだ使用が承認されていません。 根拠(6)(7)
シムレクト(バシリキシマブ) ★3
オレンシア(アバタセプト) ★3
レミケード(インフリキシマブ) ★3

総合的に見て現在もっとも確かな治療法

できるだけ早く診断し、治療を開始する

 大部分の患者さんで、筋肉が障害され、疲れやすくなったり、力が入らなくなったり(筋力低下)しますが、症状の現れ方は、最初はごく軽く、ほとんど自覚しない患者さんもいます。

 なるべく軽症のうちに治療を開始したほうが、その後の経過がよいので、しゃがんだ姿勢から立ち上がりにくい、手に力が入らずものを落としてしまうなどの症状が気になったら、早めに医師を受診したほうがいいでしょう。

 60代以降の女性に多くみられる病気ですが、10歳前後にも一つのピークがあります。

炎症を鎮め、筋力を回復させ、ADLを維持

 治療は、筋肉の炎症をしずめること、筋力を回復させること、日常生活活動(ADL)を回復させることを目標として行われます。

 まず、症状が激しいときは筋肉に負担をかけないように当初はある程度安静にするとしても、できるだけ早い時期から関節の拘縮がおこらないように屈伸運動などのリハビリテーションを行うことが勧められています。

 ただし、いつから、どの程度行えばいいかは病状によってさまざまです。病状をよく観察して判断します。

 また、外傷、感染、薬物、紫外線曝露などの症状の悪化を招く因子は避けるようにします。

第一選択は副腎皮質ステロイド薬

 全身でおこっている炎症をしずめるために薬物療法が必要です。

 薬物療法は、副腎皮質ステロイド薬を第一選択として用い、それだけでは筋肉の炎症症状や血液検査での異常所見が改善しない場合には、免疫抑制薬あるいはγグロブリン大量静注療法などを行うことになります。

 これらの薬物療法でかなりの患者さんは改善し、以前と同じような日常生活が送れるようになります。しかし、悪性腫瘍などの合併症を併発した場合などは、必ずしもこの限りではありません。

 現在、とくに問題になっているのは、肺の間質に炎症をおこして呼吸困難などをきたし、しかも急激に悪化する急性間質性肺炎であり、原因、治療法とも、いまだ確立しておらず、今後の研究が待たれるところです。

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根拠(参考文献)

  • (1) 皮膚筋炎・多発筋炎。難病情報センター
  • (2) Ernste FC, Reed AM. Idiopathic inflammatory myopathies: current trends in pathogenesis, clinical features, and up-to-date treatment recommendations. Mayo Clin (3) Rider LG, Miller FW. Deciphering the clinical presentations, pathogenesis, and treatment of the idiopathic inflammatory myopathies. JAMA. 2011 Jan 12;305(2):183-90
  • (4) Dalakas MC, Illa I, Dambrosia JM, et al. A controlled trial of high-dose intravenous immune globulin infusions as treatment for dermatomyositis. N Engl J Med. 1993;329:1993-2000.
  • (5) Cherin P, Pelletier S, Teixeira A, et al. Results and long-term followup of intravenous immunoglobulin infusions in chronic, refractory polymyositis: an open study with thirty-five adult patients. Arthritis Rheum. 2002;46:467-474.
  • (6) Aggarwal R, Bandos A, Reed AM, et.al. Predictors of clinical improvement in rituximab-treated refractory adult and juvenile dermatomyositis and adult polymyositis. Arthritis Rheumatol. 2014 Mar;66(3):740-9
  • (7) Zou J, Li T, Huang X. et al. Basiliximab may improve the survival rate of rapidly progressive interstitial pneumonia in patients with clinically amyopathic dermatomyositis with anti-MDA5 antibody. Ann Rheum Dis. 2014 Aug;73(8):1591-3
  • (8) Alexanderson H, Stenstrom CH, Jenner G, et al. The safety of a resistive home exercise program in patients with recent onset active polymyositis or dermatomyositis. Scand J Rheumatol. 2000;29:295-301.
  • (9) Wiesinger GF, Quittan M, Aringer M, et al. Improvement of physical fitness and muscle strength in polymyositis /dermatomyositis patients by a training programme. Br J Rheumatol. 1998;37:196-200.
出典:EBM 正しい治療がわかる本 2003年10月26日初版発行(データ改訂 2016年1月)