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変形性膝関節症の治療法執筆者:聖路加国際病院院長 福井 次矢

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変形性膝関節症とは、どんな病気でしょうか?

おもな症状と経過

 変形性膝関節症とは、膝の関節の軟骨が変性したり、摩耗したり、あるいは増殖性の変化をおこしたりする病気です。朝起きて歩き始めたときに、膝に違和感を覚えるといった症状が、最初に現れる代表的な症状です。

 病気が少し進むと、安静時には痛みませんが、歩いたり階段を昇り降りしたりしたとき、あるいは和式トイレ、正座など膝を深く曲げる動作が必要なときに痛みがでるようになります。痛みを感じるのはおもに関節の内側です。

 さらに病気が進んでくると関節が十分に動かなくなり、膝の曲げ伸ばしができなくなります。炎症がおきて膝の周辺が腫れたり、熱感を伴ったり、むくんだりすることもあります。

 また、膝に水がたまって腫れる関節水腫(関節水症)もしばしばみられます。水が多くたまると安静時にも痛みがでます。膝の内側の軟骨が磨耗すると、体重が膝の内側にかかってO脚になります。日本人はこのタイプが多いのですが、なかには外側の軟骨がすり減ってX脚になることもあります。

病気の原因や症状がおこってくるしくみ

 主な原因は加齢によるものですが、軟骨の磨耗は、筋肉の衰えや肥満、無理な動作、膝に負担のかかるスポーツなど多くの要因が絡みあっておこると考えられています。関節水腫は軟骨が摩耗するだけでも発症することがありますが、関節の内部を覆う組織である滑膜が増殖したり、厚くなったりすることによって発症することもあります。このように必ずしも要因がはっきりしないものを一次性の変形性膝関節症といいます。一方、けがや病気など要因がはっきりしているものを二次性の変形性膝関節症といい、要因となるけがや病気としては、膝半月板損傷、靱帯損傷、関節内骨折などの外傷性、関節リウマチ、化膿性関節炎などによる炎症性、痛風などの代謝に関係するもの、内分泌性のものなどがあります。

病気の特徴

 中高年に多い病気ですが、とりわけ肥満の女性に多く、50歳を超えるととくにこの病気に悩む人が増えてきます。

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治療法とケアの科学的根拠を比べる

治療とケア 評価 評価のポイント
減量する ★5 減量することで膝にかかる負担が減り、変形性膝関節症の症状が軽減することが、非常に信頼性の高い臨床研究で確認されています。 根拠(1)
大腿四頭筋を鍛える ★5 大腿四頭筋という太ももの筋肉が衰えると、膝関節の安定性と衝撃をやわらげる効果が弱まり、変形性膝関節症の原因になるといわれています。大腿四頭筋を鍛えることが治療に有効なことは、非常に信頼性の高い臨床研究で確認されています。 根拠(2)(3)
消炎鎮痛薬を用いる ★5 消炎鎮痛薬が変形性膝関節症の痛みを軽減させることは非常に信頼性の高い臨床研究で確認されています。消炎鎮痛薬の種類による効果の差は、それほどないといわれています。ただし、胃潰瘍・十二指腸潰瘍などの副作用に十分注意しながら使用する必要があります。 根拠(4)
消炎鎮痛薬の入った湿布や、塗り薬を用いる ★5 患部に消炎鎮痛薬の入った湿布を貼ったり、塗り薬を塗ったりすることで、変形性膝関節症の症状がやわらぎます。これは非常に信頼性の高い臨床研究で確認されています。 根拠(5)
関節内にヒアルロン酸ナトリウム製剤を注射する ★2 ヒアルロン酸ナトリウムは関節液などに含まれる粘りけのある物質です。ヒアルロン酸ナトリウム製剤を関節内に注射で注入する治療は、いくつかの臨床研究で効果が確認されていますが、最近になって、それに反対する意見もでており、評価は定まっていません。 根拠(6)~(8)
関節内に副腎皮質ステロイド薬を注射する ★2 短期的に症状を改善させる効果は、非常に信頼性の高い臨床研究で確認されています。長期的に使用すると軟骨変性を促進する場合もあり、痛みの強いときに短期間の使用が勧められます。長期的な使用についての臨床研究はまだ報告されていません。 根拠(9)(10)
温熱療法をする ★3 患部を温める温熱療法が変形性膝関節症の症状を緩和したと、日本で行われた臨床研究で報告されています。 根拠(11)(12)
足底板を利用する ★4 膝の内側の軟骨がすり減ると、重心が内側に偏ってO脚になりがちです。そこで足底板と呼ばれる靴の中敷きのような装具を利用して、重心の偏りを矯正します。この方法は日本で行われた信頼性の高い臨床研究で有効であると報告されています。 根拠(13)~(15)
滑膜切除術を行う ★3 慢性の変形性膝関節症に対し、滑膜切除術が有効であることが臨床研究によって報告されています。関節内で異常増殖した滑膜は、膝に水がたまる原因となります。最近は、関節鏡で行う手術が発達しており、従来の手術に比べ、皮膚の切開が少なくてすむ、リハビリテーションを術後早期から行える、入院期間が短くなる(あるいは入院の必要がない)、術後の関節を動かす範囲の制限がわずかである、などの利点があります。 根拠(16)~(19)
高位脛骨骨切り術を行う ★2 高位脛骨骨切り術が変形性膝関節症の症状緩和と関節機能の回復に有効であることが臨床研究によって確認されています。これは、脛の骨の上部を切り取ることで、膝の内側の軟骨にかかる負担を軽減する手術です。半分以上の患者さんは手術後10年以上たっても効果が持続しています。 根拠(20)
人工膝関節置換術を行う ★4 人工膝関節置換術が変形性膝関節症の症状緩和と関節機能の回復に有効であることが臨床研究によって確認されています。すり減った関節軟骨の部分に人工膝関節をはめ込む手術です。除痛効果が証明されています。 根拠(21)(22)

よく使われる薬の科学的根拠を比べる

消炎鎮痛薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
非ピリン系解熱鎮痛薬 ピリナジン/アンヒバ/アルピニー/カロナール(アセトアミノフェン) ★2 非ステロイド抗炎症薬のジクロフェナクナトリウムに比べ効果は劣るという臨床研究がありますが、副作用のおこりにくさから欧米の医師向け教科書などでは推奨されている薬です。症状の程度やその人の体質によっては第一選択となりうる薬でしょう。 根拠(23)
非ステロイド抗炎症薬 アスピリン(アスピリン) ★2 炎症や痛みをやわらげる非ステロイド抗炎症薬のなかでは、ロキソプロフェンナトリウム水和物、ジクロフェナクナトリウム、インドメタシンについて、非常に信頼性の高い臨床研究で変形性膝関節症への効果が確認されています。そのほかの薬も、専門家の意見や経験から支持されています。 根拠(23)(24)(25)
ポンタール(メフェナム酸) ★2
セレコックス(セレコキシブ) ★4
ロキソニン(ロキソプロフェンナトリウム水和物) ★5
ボルタレン(ジクロフェナクナトリウム) ★5
インダシン/インテバン(インドメタシン) ★5

消化性潰瘍治療薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
オメプラール/オメプラゾン(オメプラゾール) ★3 これらの消化性潰瘍治療薬について、消炎鎮痛薬を用いたときにおこる胃潰瘍・十二指腸潰瘍の予防効果は臨床研究によって認められています。 根拠(26)
タケプロン(ランソプラゾール) ★3
パリエット(ラペプラゾールナトリウム) ★3
ネキシウム(エソメプラゾールマグネシウム水和物) ★3
サイトテック(ミソプロストール) ★2 これらの消化性潰瘍治療薬は消炎鎮痛薬を用いたときにおこる胃潰瘍・十二指腸潰瘍を予防するために用いられます。専門家の意見や経験から支持されています。

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総合的に見て現在もっとも確かな治療法

太っている人はまず減量を

 姿勢を矯正したり、減量して肥満を改善させたりすることで、膝への過剰な負担を軽減できます。また、大腿四頭筋などの関節周囲の筋肉を強化したり、温熱療法を試みたりするのもいいでしょう。

 これらの方法は、信頼性の高い臨床研究で有効性が証明されていますし、なにより簡便で、副作用もありません。まずは試みるべき治療法といえます。

消炎鎮痛薬は副作用に注意

 痛みを抑えるうえで消炎鎮痛薬が有効なことは、信頼性の高い臨床研究で明確に示されています。しかし、問題は胃潰瘍や腎障害などの重度な副作用がおこりうることです。

 そのため、まずは副作用がおこりにくい鎮痛薬のピリナジン/アンヒバ/アルピニー/カロナール(アセトアミノフェン)を選択したり、また消炎鎮痛薬を用いるときには、消化性潰瘍を予防する作用がある胃粘液産生・分泌促進薬のサイトテック(ミソプロストール)などやプロトンポンプ阻害薬のオメプラール/オメプラゾン(オメプラゾール)、パリエット(ラペプラゾールナトリウム)、ネキシウム(エソメプラゾールマグネシウム水和物)、タケプロン(ランソプラゾール)などを同時に用いたりする必要があります。

 消炎鎮痛薬を長期間、大量に用いると副作用の発症率が高まることがわかっていますので、使用量を減らす工夫も必要です。毎日定時(たとえば1日3回、食後)に服用するのではなく、疼痛時にのみ1回限りの服用とするのが好ましいでしょう。

痛み止めが効かない場合はステロイド薬の注射も

 消炎鎮痛薬で痛みが軽減しない場合には、関節内に副腎皮質ステロイド薬を注射することもあります。短期的に症状を改善させる効果があるとされていましたが、最近の研究で運動療法や偽薬と比較して大差なしとの研究結果も報告されており、議論が分かれています。

重症の場合は手術を

 症状が進んで薬物療法が効かない場合は、整形外科的な手術が必要になります。滑膜切除術や人工膝関節置換術などが一般的に行われています。

 いずれも臨床研究で効果が確認されている治療ですが、手術を受ける際には主治医とよく話し合うことが大切です。

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出典:EBM 正しい治療がわかる本 2003年10月26日初版発行(データ改訂 2016年1月)