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ドライアイの治療法執筆者:聖路加国際病院院長 福井 次矢

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ドライアイとは、どんな病気でしょうか?

おもな症状と経過

 ドライアイは、なんらかの原因により涙液が減少したために、眼球の表面が乾き、結膜が充血したり、角膜に傷がつきやすくなった状態をいいます。

 おもな症状としては、目が疲れる、目が乾いた感じがしてかすむ、目に不快感を覚える、などで、乾燥の度合いが強くなってくると痛みを感じることもあります。症状が軽ければ、人工涙液を点眼したり、眼鏡やコンタクトレンズをはずして目を休ませるといった方法で改善しますが、長引くようであれば眼科医を受診して、角膜に傷がついていないか、また細菌などが感染していないかなど、検査してもらうほうがいいでしょう。

病気の原因や症状がおこってくるしくみ

 涙液は目の表面を覆って、乾燥や細菌、ゴミなどから眼球を保護する役目をしています。通常はまばたきによって目に涙の薄い膜をつくり、乾燥防止や殺菌を行いますが、まばたきが少なくなったり、乾燥した室内など涙が蒸発しやすい環境にいたりすることがドライアイを引きおこすと考えられています。

 ドライアイは、涙の量が減少しているためにおこるタイプと、涙の量が十分であってもすぐに蒸発してしまうためにおこるタイプの二つに、大きく分けられますが、重症になってくるとこれら両方のメカニズムが合併してみられます。

 原因として、シェーグレン症候群、テレビやコンピュータなどのディスプレイ画面を長時間見続けるVDT(VisualDisplayTerminal)作業、コンタクトレンズの装用、スティーブンス・ジョンソン症候群などが背景にある場合もあります。

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治療法とケアの科学的根拠を比べる

治療とケア 評価 評価のポイント
人工涙液などを点眼し、水分を補給する ★5 軽い場合は、眼の表面を乾かさないように足りなくなった涙液を人工涙液で補充したり、ヒアルロン酸製剤で潤いをもたせます。水分を補給することで、症状が改善されることが非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。 根拠(1)(2)(6)(7)
VDT作業を長時間にわたって行う人は十分な休憩をとり、目を休ませる ★3 いくつかの臨床研究で、VDT作業のドライアイは、涙の蒸発する量が増えることによるものであるとされています。画面を長時間眺めることによるまばたきの減少、ストレス、VDTの環境などが影響しています。したがってしばしば十分な休憩をとり、目を休ませることは適切な対処法です。 根拠(3)(4)
異物感の強い場合は点眼薬を用いる ★3 ごろごろ感などの異物感が強い場合には、副腎皮質ステロイド薬の点眼薬を用いると症状が改善することが、臨床研究によって認められています。うるおいをもたらすヒアルロン酸製剤、ムチンや水分を分泌促進する点眼薬、ムチンをつくり出す点眼薬なども用いられます。また、海外では免疫抑制薬の点眼薬の効果が、質の高い臨床研究で確認されていますが、日本では保険適応となっていません。 根拠(8)(9)(10)(11)
涙の蒸発を防ぐケアを行う ★3 乾燥した環境では涙は蒸発しやすくなってしまいます。涙の蒸発を防ぐために、蒸しタオルでまぶたを温めたり、まぶたを軽く押して涙液の分泌を促すことは、臨床研究によって効果が認められています。また、室内に加湿器などをおいて保湿することも病気の成り立ちとしくみからいって適切な処置といえます。 根拠(4)(5)

よく使われる薬の科学的根拠を比べる

水分を補給する点眼液

主に使われる薬 評価 評価のポイント
人工涙液マイティア(人工涙液) ★5 人工涙液、ヒアルロン酸ナトリウムによって水分を補給することは、非常に信頼性の高い臨床研究によって効果が確認されています。重い副作用の報告もありません。 根拠(1)(10)(2)(6)(7)(9)
ヒアレイン(ヒアルロン酸ナトリウム) ★5
ムコスタ(レバミピド) ★5
ジクアス(ジクアホソルナトリウム) ★5

異物感が強い場合の点眼薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
副腎皮質ステロイド薬 フルメトロン(フルオロメトロン) ★3 ごろごろ感など異物感などの症状が強いときには、フルオロメトロンなどの点眼薬が有効であることが臨床研究によって認められていますが、副作用があるので、できるだけ短期間で中止すべきです。海外では、シクロスポリンの効果が確認されていますが、日本では、ドライアイの治療薬として保険適応になっていません。 根拠(11)(8)
免疫抑制剤 パピロック(シクロスポリン) ★5

総合的に見て現在もっとも確かな治療法

まずは目の休息を

 VDT作業に携わっている人のように目を酷使している人では、薬を使わず十分な休憩をとることでかなり症状は軽くなるはずです。また、蒸しタオルでまぶたを温めたり、まぶたを軽く押したりするなどして涙液の分泌を促すのもよいでしょう。

症状が強いときには点眼薬を

 一方、シェーグレン症候群が原因で涙液の産生が減少しているときには、人工涙液などで対症的に目の表面が乾かないようにするとともに、目以外の場所(腎臓/や肺、全身の血管、関節)に症状が現れているときには副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬を用います。

 人工涙液では、マイティア(OTC薬)、ヒアレイン(ヒアルロン酸ナトリウム)が、また、うるおいを促進する点眼薬なども有効なことが確認されていますし、重い副作用の報告もありません。異物感など、症状が強いときにはフルメトロン点眼液(フルオロメトロン)などが用いられますが、副作用があるので、できるだけ短期間で中止すべきです。

おすすめの記事

根拠(参考文献)

  • (1) Nilforoushan MR, Latkany RA, Speaker MG. Effect of artificial tears on visual acuity. Am J Ophthalmol 2005; 140:830.
  • (2) Willen CM, McGwin G, Liu B, et al. Efficacy of cyclosporine 0.05% ophthalmic emulsion in contact lens wearers with dry eyes. Eye Contact Lens 2008; 34:43.
  • (3) 佐藤直樹・山田昌和・坪田一男;VDT作業とドライアイの関係、あたらしい眼科9:1992;1121-1127
  • (4) 鹿島みのり,坪田一男. VDT作業とドライアイ. 病院図書館. 2001;22:10-13.
  • (5) 松本幸裕. ドライアイをケア!眼科ケア. 2002;4:110-111.
  • (6) Condon PI, McEwen CG, Wright M, et al. Double blind, randomised, placebo controlled, crossover, multicentre study to determine the efficacy of a 0.1% (w/v) sodium hyaluronate solution (Fermavisc) in the treatment of dry eye syndrome. Br J Ophthalmol. 1999;83:1121-1124.
  • (7)Vogel R, Crockett RS, Oden N, et al. Demonstration of efficacy in the treatment of dry eye disease with 0.18% sodium hyaluronate ophthalmic solution (vismed, rejena). Am J Ophthalmol 2010; 149:594.
  • (8) Avunduk AM, Avunduk MC, Varnell ED, Kaufman HE. The comparison of efficacies of topical corticosteroids and nonsteroidal anti-inflammatory drops on dry eye patients: a clinical and immunocytochemical study. Am J Ophthalmol 2003; 136:593.
  • (9)Kashima T, Itakura H, Akiyama H, et al. Rebamipide ophthalmic suspension for the treatment of dry eye syndrome: a critical appraisal.ClinOphthalmol. 2014 May 30;8:1003-10.
  • (10)Yamaguchi M, Nishijima T, Shimazaki J, et al. Clinical usefulness of diquafosol for real-world dry eye patients: a prospective, open-label, non-interventional, observational study. AdvTher. 2014 Nov;31(11):1169-81.
  • (11) Sacchetti M, Mantelli F, Lambiase A, et al. Systematic review of randomised clinical trials on topical ciclosporin A for the treatment of dry eye disease. Br J Ophthalmol 2014; 98:1016.
出典:EBM 正しい治療がわかる本 2003年10月26日初版発行(データ改訂 2016年1月)