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眼瞼けいれんの治療法執筆者:聖路加国際病院院長 福井 次矢

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眼瞼けいれんとは、どんな病気でしょうか?

おもな症状と経過

 眼瞼けいれんは、まぶたを閉じるための眼輪筋が過度に緊張し、本人の意思に関係なくけいれんする病気です。まばたきが増える、まぶしさを感じやすくなるなどの症状で始まり、やがて、けいれんがおこるようになります。症状が重くなると、まぶたが開かなくなって目が見えない状態にまで進む場合もあります。

病気の原因や症状がおこってくるしくみ

 この病気のはっきりとした原因はわかっていませんが、ものもらいや角膜炎、結膜炎などによる目の炎症、ゴミが目に入るといった異物の刺激、眼精疲労、肉体的・精神的ストレスが引きがねになるなどして、症状を悪化させることがわかっています。脳に異常があって、突然まぶたが閉じ、しばらくその状態が続くものは、本態性眼瞼けいれんと呼んでいます。

病気の特徴

 40歳~70歳の中高年に発病することが多く、約1対2の比率で女性に多くみられます。

目がまったく開けられないほど重症な例は少ないですが、一見しただけではわからないような軽症例を含めると、日本には少なくとも30~50万人以上の患者さんがいると推定されます。

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治療法とケアの科学的根拠を比べる

治療とケア 評価 評価のポイント
ストレスを避け、睡眠不足や過労に注意する ★3 疲れたときやストレスがたまったときなど、安静にして目を休め、疲れをとり、眼輪筋の過度な緊張がとれれば症状がおさまることが臨床研究によって確認されています。 根拠(1)~(3)
抗アレルギー薬の点眼を行う ★4 角膜や結膜の炎症によるけいれんに対する抗アレルギー点眼薬の効果は信頼性の高い臨床研究によって確かめられています。 根拠(7)(8)
副腎皮質ステロイド薬の点眼を行う ★3 角膜や結膜の炎症が激しい場合は副腎皮質ステロイド薬の点眼薬を用いることがあります。これの効果は臨床研究によって確かめられています。 根拠(6)
重症の場合は、ボツリヌスA型毒素療法を行う ★5 ボツリヌスA型毒素を眼輪筋に注射するのがボツリヌスA型毒素療法です。ボツリヌスA型毒素は、神経の神経接合部末端から神経伝達物質が放出されるのを防ぎます。その結果、異常な興奮が眼輪筋へ伝わらなくなるので、けいれんがおこらなくなります。この治療の効果は非常に信頼性の高い臨床研究によって確認されています。ボツリヌスA型毒素の効果は約1カ月後にもっとも強くなり、2~4カ月程度効果は続きますが次第に弱まります。再注射が必要となる場合もあります。 根拠(4)(5)

よく使われる薬の科学的根拠を比べる

筋肉の緊張をやわらげる薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
ボトックス(ボツリヌスA型毒素) ★5 眼瞼けいれんに対するボツリヌスA型毒素は、非常に信頼性の高い臨床研究によって効果が確認されています。 根拠(4)(5)

副腎皮質ステロイド薬点眼用

主に使われる薬 評価 評価のポイント
フルメトロン(フルオロメトロン) ★3 まぶたや結膜の激しい炎症がけいれんの原因と考えられる場合に用います。眼瞼けいれんに対する副腎皮質ステロイド薬の効果は臨床研究によって確かめられています。 根拠(6)

抗アレルギー薬点眼用

主に使われる薬 評価 評価のポイント
アレギサール(ペミロラストカリウム) ★4 アレルギー性の炎症が原因と考えられる場合に用います。いずれも信頼性の高い臨床研究によって効果が確認されています。 根拠(7)(8)
リザベン/トラメラス(トラニラスト) ★4

総合的に見て現在もっとも確かな治療法

症状が軽い場合は、日常のケアで解消する

 一般的には症状が軽い場合は、副作用の可能性が少しでもある薬物治療は勧められません。ストレスや睡眠不足、過労などによっておこっているということが明らかな場合には、これらの原因をなくすライフスタイルにするように心がけます。たったこれだけでも、けいれんがなくなったり、緩和したりするものです。

ボツリヌスA型毒素の注射が効果的

 もっとも効果的と考えられている対症療法は、ボトックス(ボツリヌスA型毒素)の注射です。けいれんがおこっている眼輪筋の周囲に数カ所、注射します。この治療の効果は非常に信頼性の高い臨床研究で確認されています。

 この方法は、専門医による治療が大前提です。ボツリヌスA型毒素の場合、治療効果は、注射してから約1カ月後にピークに達し、その後徐々に弱まりながら2~4カ月程度続きます。そのため、その後症状が再発した場合は、再注射が必要になってきます。

炎症によるけいれんは点眼液

 まぶたや結膜の炎症が原因のけいれんだと考えられる場合、抗アレルギー薬のアレギサール点眼液(ペミロラストカリウム)やリザベン点眼液/トラメラス点眼液(トラニラスト)が用いられます。症状に応じては副腎皮質ステロイド薬のフルメトロン点眼液(フルオロメトロン)も用いられることがあります。いずれも臨床研究などによって効果が確認されているものです。

病気に対する理解を深め、メンタルを管理し焦らずに向き合う

 眼瞼の運動障害や目の感覚過敏に加えて、抑うつ、不安、不眠など精神症状を訴える人も半数近くあり、うつ病などと間違えられることもあります。また、診断がつかないために引きこもってしまう患者さんもいると推定されています。

 抑うつ感があると症状が悪化するので、心の安定が必要な病気でもあり、メンタルケアが必要とされます。自分自身でメンタルを管理するには、病気に対する理解が非常に重要で、治そう治そうと焦らないようにすることがとても大切です。

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根拠(参考文献)

  • (1) Hallett M. Blepharospasm: recent advances. Neurology. 2002;59:1306-1312.
  • (2) Defazio G, Livrea P. Epidemiology of primary blepharospasm. MovDisord. 2002;17:7-12.
  • (3) Defazio G, Hallett M, Jinnah HA, Berardelli A. Development and validation of a clinical guideline for diagnosing blepharospasm. Neurology 2013; 81:236.
  • (4) Hallett M, Evinger C, Jankovic J, et al. Update on blepharospasm: report from the BEBRF International Workshop. Neurology 2008; 71:1275.
  • (5)Simpson DM, Blitzer A, Brashear A, et al. Assessment: Botulinum neurotoxin for the treatment of movement disorders (an evidence-based review): report of the Therapeutics and Technology Assessment Subcommittee of the American Academy of Neurology. Neurology 2008; 70:1699.
  • (6)石川哲,疋田春夫,北野周作,他. フルメトロン点眼薬の二重盲検法による臨床効果. 医学のあゆみ. 1974;88:442-449.
  • (7) 北野周作,小倉文雄,湯浅武之助. 結膜アレルギー疾患に対する0.1%ぺミロラストカリウム点眼薬の有効性,安全性の検討. あたらしい眼科. 1993;10:323-332.
  • (8) 岩城陽一,長崎比呂志,黒瀬眞一,他. 結膜アレルギーに対するトラニスト(N-5’)点眼薬の臨床効果. 臨床と研究. 1993;70:1669-1674.
出典:EBM 正しい治療がわかる本 2003年10月26日初版発行(データ改訂 2016年1月)