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水ぼうそう(水痘)の治療法執筆者:聖路加国際病院院長 福井 次矢

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水ぼうそう(水痘)とは、どんな病気でしょうか?

おもな症状と経過

 一般に水ぼうそうと呼ばれる水痘は、虫さされによく似た小さな丘疹が、最初ほおや顔にでます。発疹は徐々に全身に広がり、水ぶくれになり、激しいかゆみがあります。かさぶたができるまでに7~10日間、かさぶたがとれるまでには、さらに1、2日間かかります。かさぶたのあとはしばらく残りますが、やがてなくなります。

 発疹がでる1~2日前に発熱、全身のだるさ、食欲低下、頭痛、腹痛がみられることもあります。潜伏期間は10~21日間です。12歳未満の子どもの場合はふつう自然に回復し、軽い症状で終わります。成人や免疫力が低下した人では、皮膚の細菌感染症、肺炎、肝炎、脳炎などをおこし重症化することがあります。まれに2度感染することがあり、2度目の感染のほうが重症化しやすいことが報告されています(1)。

病気の原因や症状がおこってくるしくみ

 水痘・帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV)の感染によっておこる病気です。くしゃみや咳にまじる唾液がつくことによる感染や、直接患者さんにふれることによる感染だけでなく、空気感染もおこります。このため、水ぼうそうに対する免疫のない患者さんの家族が感染するリスクは90パーセントを超えます。帯状疱疹は同じウイルスでおこります。

病気の特徴

 2~8歳の子どもが、冬場に多くかかる病気です。水痘は、感染症法の5類感染症であり、指定された小児科からの報告数しか、患者数の統計がありません。この数値から推測される1年あたりの患者数は約100万人とされます。このうち4000人程度が重症化により入院し、約20人の死亡者数が出ると推測されています。(2)

 学校保健安全法施行規則により、水ぼうそうの患者さんに学校長などが出席停止を指示することが義務付けられています。このため、水ぼうそうにかかった場合は、すべての発疹がかさぶたになるまで、学校や保育所、幼稚園に行くことはできません。また、治ってから登校・登園する際、医師が記載した治癒証明書を学校などに提出する必要があります。水ぼうそうで学校を休んだ場合は、欠席扱いにはなりません。(3)

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治療法とケアの科学的根拠を比べる

治療とケア 評価 評価のポイント
ワクチン接種によって予防する ★5 ワクチン接種で水ぼうそうにかかる率が下がります。またワクチン未接種の場合でも、水ぼうそうの患者さんとの接触後、72 時間以内であればワクチンの接種により発症の予防、あるいは症状の軽減が期待できます。 根拠(4)~(6)
抗ウイルス薬を用いる ★5 発疹がでてから24時間以内、遅くとも48時間以内に抗ウイルス薬を投与できれば、発疹がでる皮膚の範囲は少なく、発熱期間は約1日短くなります。特に、成人を含む12歳以上の人、2度目の感染、皮膚疾患や心肺疾患があり細菌感染のリスクが高い場合、吸入や内服のステロイド(副腎皮質ホルモン薬)を使用している場合、アスピリン内服者、免疫力が低下している場合は、重症化を防ぐため積極的に抗ウイルス薬を使用する必要があります。逆にこれらのリスクのない健康な12歳未満の小児では、抗ウイルス薬を使用しないで自然治癒を待つことも可能です。 根拠(7)
高熱には解熱薬、かゆみが激しい場合は抗ヒスタミン薬を用いる ★2 水ぼうそうの患者さんを対象にした臨床研究は見あたりませんが、専門家の意見や経験から支持されています。また、皮膚は細菌感染の合併が起こりやすいため、引っかき傷をつくらないように、かつ清潔に保つことが必要です。

よく使われる薬の科学的根拠を比べる

予防のためのワクチン

主に使われる薬 評価 評価のポイント
水痘ワクチン ★5 非常に信頼性の高い臨床研究によって、ワクチン接種で水ぼうそうにかかる率が下がることが確認されています。2014年10月より、水痘ワクチンは定期接種化されました。定期接種の対象期間は1歳から1歳3カ月までに1回目と、1回目から3カ月以上あけて3歳になるまでに2回目となっています。(8) また、年長者や成人の水ぼうそうは重症化するため、13歳以上で、水ぼうそうにかかったことがなくかつワクチン未接種の場合は、免疫を確実にするために2回接種が勧められます。(2)ワクチンは、十分な効果が得られるまでには接種後1カ月くらいの時間を要します。ただしワクチンによって抗体ができてしまえば、予防効果は長期にわたって続きます。

抗ウイルス薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
ゾビラックス(アシクロビル) ★5 非常に信頼性の高い臨床研究によって、抗ウイルス薬の効果は確認されています。
バルトレックス(バラシクロビル塩酸塩) ★5
ファムビル(ファムシクロビル) ★5

解熱薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
アンヒバ/アルピニー/カロナール(アセトアミノフェン) ★2 子どもではライ症候群(急性脳症、肝障害)のリスクがあるため、アスピリンは使えません。解熱薬としてアセトアミノフェンが勧められています。(9)

かゆみを抑える薬

主に使われる薬 評価 評価のポイント
ザイザルシロップ(レボセチリジン塩酸塩) ★2 これらをはじめとする、さまざまな抗ヒスタミン薬を使用することがあります。年齢によって使用できる薬が異なります。
クラリチン(ロラタジン) ★2

総合的に見て現在もっとも確かな治療法

定期接種のワクチン接種を行う

 この病気に対するワクチン接種の予防効果は、確実であることが非常に信頼性の高い臨床研究によって明らかになっています。1歳を過ぎたら、定期接種を行ってください。また、13歳以上で水ぼうそうに対する免疫がない場合は、予防接種をすることが勧められます。

免疫がない状態で、水ぼうそうの患者さんとの接触があった場合

 72時間以内であれば水痘ワクチンの接種により、発症の予防や症状の軽減が期待できます。

発症した場合、抗ウイルス薬の使用を考慮する。

 発症から24時間以内、遅くとも48時間以内に抗ウイルス薬を使用すると症状は軽くなります。免疫力が正常な子どもでは、使用しなくても回復してきます。皮膚をかきむしって二次感染がおこるのを防ぐために指の爪を短く切り、皮膚を清潔に保ちます。熱でつらい場合は、アンヒバ/アルピニー/カロナール(アセトアミノフェン)を用います。

すべての発疹がかさぶたになるまでは外出を控える

 発疹のでている時期に、ウイルスの感染力はもっとも強くなっています。この間は、感染が広がらないように外出を控えましょう。また、小児科を受診する際は、発疹が全身にでていることを電話などで伝えましょう。他の患者さんにうつらないように、違う待合室を設けている施設が多いので、受付で案内してもらいましょう。

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根拠(参考文献)

  • (1)Hall S, Maupin T, Seward J, et al. Second varicella infections: are they more
  • common than previously thought?Pediatrics. 2002 ;109:1068-1073.
  • (2)国立感染症研究所. 水痘ワクチンに関するファクトシート(平成22年7月7日版)
  • http://www.mhlw.go.jp/stf2/shingi2/2r9852000000bx23-att/2r9852000000bxqx.pdf
  • アクセス日2015年3月22日
  • (3)文部科学省. 学校において予防すべき感染症の解説
  • http://www.mext.go.jp/a_menu/kenko/hoken/__icsFiles/afieldfile/2013/05/15/1334054_03.pdf 
  • アクセス日2015年3月22日
  • (4)Chaves SS, Zhang J, Civen R et al.Varicella disease among vaccinated persons: clinical and epidemiological characteristics, 1997-2005.J Infect Dis. 2008;197 Suppl 2:S127-131.
  • (5)Marin M, Watson TL, Chaves SS, et al.Varicella among adults: data from an active surveillance project, 1995-2005.J Infect Dis. 2008;197 Suppl 2:S94-S100.
  • (6)Asano Y.Varicella vaccine: the Japanese experience.J Infect Dis. 1996;174 Suppl 3:S310-313.
  • (7)Klassen TP, Hartling L, Wiebe N, et al.Acyclovir for treating varicella in otherwise healthy children and adolescents.Cochrane Database Syst Rev. 2005 Oct 19;(4):CD002980.
  • (8)日本小児科学会. 日本小児科学会が推奨する予防接種スケジュール 2014年10月1日版https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/vaccine_schedule.pdf アクセス日2015年3月22日
  • (9)Hurwitz ES, Barrett MJ, Bregman D et al.Public Health Service study on Reye's syndrome and medications. Report of the pilot phase. N Engl J Med. 1985;313:849-857.
出典:EBM 正しい治療がわかる本 2003年10月26日初版発行(データ改訂 2016年1月)