出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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心筋症
しんきんしょう

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心筋症とは?

どんな病気か

 心筋症とは、心臓の機能異常を伴う原因不明の心筋(心臓の筋肉)の病気で、主なものに肥大型心筋症、拡張型心筋症、拘束型心筋症があります。(図17図17 各種の心筋症の特徴)にそれぞれの心筋症の特徴を示しました。

図17 各種の心筋症の特徴

 診断は、心電図の変化や心エコーなどの画像診断、心臓カテーテル検査、心筋生検(心筋の組織の一部を採取して検査)などで行います。

①肥大型心筋症

 心筋が非対称的に肥大する病気です。筋肉が肥大すると収縮する力は保たれますが、筋肉が厚いので伸びなくなって拡張が困難になります。約半数に家族歴があり、最近、その人たちのなかで心筋を構成する遺伝子の異常が報告されています。また、心室中隔が肥大して左心室から大動脈への通路が狭くなったり、僧帽弁がきちんと閉まらなくなって血液の逆流がみられることもあります。

 症状は、疲れやすい、運動時の息切れ、胸痛、胸部不快感、失神、めまいなどのほか、不整脈がみられることがあります。一方、無症状で心電図の異常や心雑音から偶然発見されることもあります。

 予後は、他の心筋症より比較的良好ですが、突然死があり、突然死の家族歴や失神の前歴、心室性不整脈などとの関連が示唆されています。また、徐々に心臓が大きくなり、後述する拡張型心筋症のように収縮能が低下して心不全が増強する場合も予後は不良で、心臓移植の適応となることがあります。

 本症と診断された場合は、血行動態を悪化させないように激しい運動はひかえる必要があります。また、症状がある場合には、その程度に応じて薬物療法や肥大した心筋による狭窄を解除する外科手術などを行います。また、不整脈には薬物療法やペースメーカーによる治療なども行われています。

②拡張型心筋症

 心室筋が薄くなって収縮する力が低下し、心室全体が拡大する病気です。原因は不明ですが、いろいろな心筋疾患の終末的な病態と考えられています。

 症状は、疲れやすい、呼吸困難、浮腫(むくみ)などの心不全の症状が主です。また、不整脈を伴う場合もあります。

 治療は、まず過労、感染症、塩分や水分の過剰摂取などの心不全の増悪因子を避けることです。薬物治療としては利尿薬、強心薬、血管拡張薬などのほか、β遮断薬などが使われます。不整脈の治療が必要になる場合もあります。外科的治療としては、左心室心筋を一部切除するバチスタ手術などがあります。

 予後は一般的に不良で、治療に抵抗する重症心不全を伴った場合は心臓移植の適応となります。

③拘束型心筋症

 前記2つの心筋症のような心筋の著しい肥大や薄さはありませんが、心筋が拡張しづらくなる心筋症です。そのため、心室に血液を送っている心房が非常に大きくなることが特徴です。3つの心筋症のなかでは、最もまれな病気です。

 症状は、疲れやすい、呼吸困難、肝臓腫大、浮腫(むくみ)などがみられます。

 治療は、心不全に対する薬物療法が中心ですが、予後は一般的に不良で、心臓移植の適応となる場合もあります。

(執筆者:新潟県立新発田病院小児科部長 塚野 真也)

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 機能性心雑音とは、心臓に異常がないのに心臓から聞こえる雑音のことです。無害性心雑音ともいいます。これは、正常に心臓が血液を送り出している時に聞こえる音で、典型的な場合は楽器の弦を鳴らした時のようなブーンという音のようになります。

 そのほか、貧血があったり、発熱、運動後など心臓から送り出される血液量が多い時などに聞こえる雑音もこの分類に入ります。

 一方、多くの先天性の心臓病では、心臓の壁に穴があいていたり(欠損孔)、弁や血管が狭かったり(狭窄)、弁が逆流(僧帽弁の閉鎖不全)しているため、やはり心雑音が聞こえます。これらは狭いすきまから血液がもれる時の音で、風が吹くようなザーとかシューというような長い音として聞こえます。

 このような心雑音が聞こえた場合には、機能性心雑音との区別が必要です。聴診器である程度可能ですが、心エコーなどの検査での確認が必要な場合もあります。

コラム無酸素発作

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 この発作は、生後2カ月~3歳くらいまでにみられ、大きな心室中隔欠損症と肺動脈弁下狭窄を併せもつチアノーゼ型の先天性心臓病に起こります。ファロー四微症が代表的ですが、両大血管右室起始症、単心室、三尖弁閉鎖症などにもみられます。

 症状は、睡眠後の不機嫌、号泣、排便などをきっかけにチアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色になること)が増強し、呼吸が速くなり、ぐったりしてきます。進行すると意識がなくなったり、けいれんを起こすことがあります。また、発作は午前中に多く、脱水、感染による発熱、貧血などは症状を助長します。

 発作の機序(仕組み)は、前記の状況をきっかけに心臓を収縮させるホルモンが多量に分泌されて右心室の出口の筋肉を過収縮させるため、右心室から肺動脈への静脈血(酸素が少ない血液)が減り、その分、心室中隔欠損を通って大動脈へ流れるために起こります。

 この発作は、悪循環に陥ると命に関わるので、発作の初期に治療することが重要です。もし自宅で発作を起こしたら体を折りたたむように膝を胸につける体位(膝胸位)で抱きかかえます。これによって右心室から大動脈へ流れる動脈血流を減らし、チアノーゼを改善することができます。酸素吸入も効果的です。

 しかし、これらの処置でチアノーゼが改善しない場合は、至急医療機関を受診してください。また、発作予防にβブロッカー(インデラル)を内服する場合もあります。加えて、便秘や貧血などは日ごろから予防し、感染などによる発熱や下痢などの際には水分を十分に補給することも必要です。

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