出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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筋肉の病気〈総論〉
きんにくのびょうき〈そうろん〉

筋肉の病気〈総論〉とは?

 筋疾患は筋力低下を主症状とし、神経筋接合部(重症筋無力症の項で説明)、筋線維鞘(筋細胞の膜)や筋細胞内など骨格筋そのものに原因がある疾患です。

 筋疾患は、遺伝性疾患と後天性疾患に分けられます。前者には筋ジストロフィー先天性ミオパチー、筋強直性疾患、周期性四肢麻痺など、後者ではフォルクマン拘縮多発性筋炎重症筋無力症などがあります。

 症状は筋力低下、筋萎縮、筋肥大、深部腱反射低下、筋痛などですが、症状だけで診断は不可能です。四肢近位筋の筋力低下、筋萎縮、深部腱反射低下などの主要な症状がある場合には筋疾患を疑い、さらに血液生化学検査、筋電図、筋生検、遺伝子検査などを行って確定診断をします。

 血液検査では、筋線維からの逸脱酵素(筋細胞が壊れると筋細胞内にあった酵素が血中に放出される)の上昇を確かめます。これらが有意に上昇していれば筋障害があるといえます。一般的にクレアチンキナーゼ、アルドラーゼなどが調べられます。

 筋電図では、神経筋接合部の疾患を疑う場合は反復刺激誘発筋電図を、神経原性疾患(筋を支配する神経系に原因がある病気)と筋原性疾患(骨格筋そのものに原因がある筋肉の病気)の鑑別には針筋電図で筋原性変化の有無を確認します。

 筋生検では、凍結標本から組織化学的染色を行い、免疫染色やDNA・RNA解析を行います。各筋疾患に特異的な筋病理所見を確認して確定診断を行います。近年、遺伝子や欠損蛋白の研究がめざましく進歩し、一部の疾患で確定診断が可能となってきています。

 治療については、重症筋無力症には胸腺摘出、ステロイド薬や免疫抑制薬で、多発性筋炎にはステロイド薬でコントロールされるなど一部の疾患では治療法が確立されつつあります。しかし、そのほかのほとんどの筋疾患では根本的治療法はなく、理学療法が治療の中心となっています。

(執筆者:兵庫県立身体障害者更生相談所参事 藤井正司)

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