出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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発がん性および抗がん性を有する植物毒
はつがんせいおよびこうがんせいをゆうするしょくぶつどく

もしかして... 皮膚がん  白血病  卵巣がん

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発がん性および抗がん性を有する植物毒とは?

 発がん性物質の代表として、TPAという有名な化合物があげられます。

①巴豆

 トウダイグサ科植物の種子で、クロトン油(巴豆油)の原料にされます。クロトン油は発がん性のジテルペンエステルであるTPAを含み、皮膚の発がんを促進します。

 クロトン油は最も激烈な下剤で、1滴内服しただけで口腔や胃の粘膜に灼熱感や嘔吐を起こし、やがて激しい腹痛を伴って下痢を起こします。クロトン油を外用すると皮膚刺激作用で発赤を起こし、膿疱、壊死に至ります。工芸品などの制作にクロトン油を常用しているところでは、皮膚がんが多く発生しています。

 トウダイグサ科の植物は粘液が多く、そのなかに発がん性のジテルペン系化合物を含んでいることがあります。ナツトウダイ、ヒロハタイゲキなども毒性が強い植物です。

②ソテツ

 ソテツ科のこの植物に含まれるアゾキシ配糖体サイカシンは、β-グルコシダーゼによって加水分解されてジアゾメタンを生じ、このジアゾメタンがアルキル化剤として作用し、発がんさせます。

③ワラビ

 ウラボシ科のワラビは、湯通しをしないで食べると中毒を起こします。ノルセスキテルペン配糖体のブタキロシドが毒性本体であり、発がん性を示します。

④毒性が強く抗がん薬が開発された植物

 すでに臨床で用いられているニチニチソウのビンカアルカロイドが有名です。インドール系のビンクリスチンやビンブラスチンを含み、白血病性のがん(血液のがん)に有効です。

 ポドフィルム根に含まれるポドフィロトキシンはリグナンの一種で、抗がん活性も強いのですが、副作用も強く出ます。

 また、イチイの成分であるタキソールおよびタキソテレはジテルペン系の化合物で、卵巣がんに有効とのことですでに臨床に用いられています。

発がん性および抗がん性を有する植物毒と関連する症状・病気

(執筆者:ノースカロライナ大学客員教授 糸川 秀治)

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