トイレ・パイプ洗浄剤中毒
といれ・ぱいぷせんじょうざいちゅうどく
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もしかして... 熱傷 吐血 腹膜炎 縦隔炎 播種性血管内凝固症候群
トイレ・パイプ洗浄剤中毒とは?
どんな病気か
トイレ・パイプ洗浄剤は、強い酸またはアルカリです。これを事故で、または自殺目的で飲むと、強酸、強アルカリの腐食作用によって、口やのど、食道、また酸ならば胃の粘膜・筋層が損なわれ、潰瘍を形成したり、しばしば穿孔(孔があくこと)がみられます。
原因は何か
酸、アルカリによって、口腔や咽頭、消化管が熱傷を負ったような状態になります。
アルカリの場合は、ある程度胃酸で中和されるので、主に食道が損なわれますが、酸の場合は、胃を中心に障害が現れます。
そのほか、物質によっては下部消化管も損なわれることがあります。
症状の現れ方
摂取後ただちに、強酸、強アルカリの刺激によって、悪心(吐き気)・嘔吐、口腔内灼熱感、前胸部痛、上腹部痛が起こります。その後、口腔から食道または胃、十二指腸までの広範囲の粘膜のはれや浮腫(むくみ)、びらんなどが生じ、そこから出血することにより、吐血が起こります。この部位は潰瘍になります。
また消化管穿孔を起こすこともあり、その場合、腹膜炎や縦隔炎になって、死亡する危険があります。
浮腫が大きい場合は、全身の体液がそこに集まるため、ショック、DIC(播種性血管内凝固症候群)などが起こることもあり、やはり死亡する危険を伴います。運よく回復しても、潰瘍の修復の結果、しばしば食道や幽門の狭窄などが起こります。
検査と診断
同様の症状を起こすものに、クレゾール中毒、洗剤・界面活性剤中毒、パーマ液中毒、パラコートなど一部の農薬中毒などがありますが、それぞれ治療法が違っており、とくにトイレ・パイプ洗浄剤中毒では治療のうえで行ってはならないことが多いので、摂取した薬剤の特定が重要になります。
治療の方法
冷えた牛乳や卵白を飲ませます。無理に吐かせないのが基本です。また、水を与えることも、酸だからアルカリを与えるとか、アルカリだから酸を与えて中和するということもしてはなりません。下剤も与えません。
胃の洗浄は、胃管チューブにより食道や胃に孔があくことがあるので、通常は行いません。ただし、あまりにも多くの洗浄剤を飲んだ場合、直後であれば行うこともあります。その場合は、チューブを慎重に挿入して洗浄剤を十分に吸い出したうえで、牛乳で洗浄します。輸液は十分に行いますが、それに加えて、抗生物質の投与などの対症療法も行うことがあります。
穿孔がある場合は手術が必要です。咽喉頭の浮腫により呼吸困難になった場合、気管内挿管などによる気道確保が必要です。また、消化管の保護のため、数週間食事を中止し、高カロリー輸液を行うこともあります。
病気に気づいたらどうする
たとえ少量に思えても、牛乳または卵白を飲ませ、すぐに救急病院に搬送してください。
トイレ・パイプ洗浄剤中毒と関連する症状・病気
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コラムトイレ・パイプ洗浄剤
トイレ洗浄剤のなかには一部中性のものもありますが、一般にトイレ・パイプ洗浄剤は、スルファミン酸(アミド硫酸)や塩酸などを主成分とする強酸性のもの、または次亜塩素酸などを主成分とする強アルカリ性のものがほとんどです。したがって、トイレ・パイプ洗浄剤を誤って口に含むと、強酸または強アルカリによる中毒が生じます。
また、これらが眼や皮膚につくと、強い刺激を与えて腐食させるので、眼に入った場合は、流水で最低15分は洗浄したうえで眼科を受診します。皮膚についた場合は、まず水で洗い流し、石鹸でよく洗浄してから、症状をみて皮膚科を受診してください。
なお、トイレ・パイプ洗浄剤に"混ぜるな 危険"と表示されているように、酸性の洗浄剤とアルカリ性の洗浄剤を混ぜると、化学反応により塩素ガスが発生することがあり、それを吸い込むと塩素ガス中毒を起こします。酸性とアルカリ性の洗浄剤は混ぜないよう十分に注意してください。