出典:家庭医学大全 6訂版(2011年)
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心挫傷
しんざしょう

心挫傷とは?

どんな外傷か

 心挫傷は、鈍的外力によって心臓が強く圧迫された結果、心筋組織の断裂や壊死、出血、浮腫(むくみ)などが生じ、さまざまな程度の心機能障害を起こすものをいいます。

 その多くは特殊な治療は必要でなく、良好な経過で治りますが、まれに心タンポナーデ心原性ショックなどの重い心機能障害を伴って死に至る場合もあります。

原因は何か

 自動車事故でのハンドル外傷などにより胸骨と脊椎の間で心臓が強い圧迫を受ける、高所からの墜落など急激な減速により心臓が胸壁に強打される、挟圧外傷(はさまれたことによる外傷)などにより急激に胸腔内圧が上昇する、などの場合に発生します。

症状の現れ方

 胸部外傷後の胸痛や胸内苦悶が主な症状です。重い場合には、心タンポナーデ(閉塞性ショック)や心原性ショックを合併し、頻脈、不整脈、血圧低下、頻呼吸、四肢冷汗および冷感、頸静脈怒張(頸〔首〕の静脈がふくれる)、意識障害などが現れます。

検査と診断

 前述した症状と、心電図検査、血液検査、心臓超音波検査、心臓核医学検査、心臓カテーテル検査などにより診断されます。

治療の方法

 心挫傷の治療は急性心筋梗塞に準じます。心電図検査で異常が認められればベッド上で安静を保ち、酸素吸入を行って心電図の変化を厳重に監視します。不整脈に対しては抗不整脈薬を投与します。

 心原性ショックに対しては、昇圧薬や強心薬の投与など、適切な薬物療法を行います。また心タンポナーデが認められれば心嚢穿刺(針をさす)や心嚢ドレナージ(管を挿入して排液する)が行われ、重いショック状態であれば、機械を用いた補助循環を行います。

応急処置はどうするか

 心挫傷に対して一般の人ができる応急処置はとくにありません。本症が疑われたら、一刻も早く救急車を呼び、適切な医療機関へ搬送することが大切です。病院に着くまでは絶対に負傷者のそばを離れず、励まし続けることを忘れてはなりません。

(執筆者:日本医科大学千葉北総病院救命救急センター長・教授 益子 邦洋)

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