患者さんは「食べ物の制限が少ない」などのQOLを重視している~経口抗凝固薬に関する患者実態調査から
[選択肢が拡大する脳卒中予防の現在] 2013/05/24[金]
がんや心臓病と並び、「日本人の三大死因」として広く認知されてきた脳卒中。その中でも心房細動による脳梗塞(心原性脳塞栓症)は重症化しやすいことから、予防が重要視されています。その予防の中心として経口抗凝固薬の服用による、抗凝固療法がありますが、近年、新規経口抗凝固薬が登場したことで、治療の選択肢が広がってきています。そこで、現在ワルファリンを服用している患者さん60名と新規経口抗凝固薬を服用している患者さん60名の計120名を対象に、経口抗凝固療法の現状について、国立病院機構 九州医療センター 脳血管センター 脳血管内科科長 矢坂正弘先生監修のもと、意識調査を行いました。
服用している経口抗凝固薬を変更したことがありますか。また、変更したことに、どの程度満足していますか。
約3人に1人が経口抗凝固薬を変更していました。変更理由について、「ワルファリン→新規経口抗凝固薬」へ変更した患者さんは、「医師の勧め」や「食事制限の無い」「血液検査が無い」を挙げる回答が多く見られた一方、「新規経口抗凝固薬→ワルファリン」に変更した患者さんは価格面が主な変更理由でした。また、経口抗凝固薬の変更による満足度はワルファリン、新規経口抗凝固薬ともに半数以上が「とても満足」「やや満足」と回答。新規経口抗凝固薬において「とても満足」が若干ワルファリンを上回る結果となりました。
経口抗凝固薬の服用を始めるにあたり、医師から他の経口抗凝固薬についての説明はありましたか。
約7割の患者さんが経口抗凝固薬の処方にあたり、他の選択肢についての説明を受けていることが分かりました。薬剤別では、新規経口抗凝固薬服用者は80%以上が説明を受けたと回答した一方、ワルファリン服用者は約半数が「全く説明を受けなかった」と回答。新規経口抗凝固薬が登場し、選択肢が拡大した、服用期間3年未満に絞っても、新規経口抗凝固薬服用者は過半数が「詳細に説明を受けた」と回答している一方、ワルファリン服用者は46.7%が「全く説明を受けなかった」と回答。患者さんが受け取る治療選択肢の情報に大きな差が生じていることが分かりました。
経口抗凝固薬について、「薬の効果」以外で重視するものは何ですか。
患者さんに対し、3つ「薬の効果」以外で重視するものを聞いたところ、「制限される食べ物の種類が少ない」が51.7%と最も重視されていることが分かりました。次いで「副作用が少ない」(49.2%)、「費用が安い」(46.7%)でした。
ご自身の病気や飲んでいるお薬についての情報を知りたい時、どこからの情報を重視しますか。
「かかりつけの医師」からの情報を重視する、と回答したのは120人中119人となりました。次いで「薬局・薬剤師」が75.8%と医療者からの情報を重視することが分かりました。
この結果について、監修した矢坂正弘先生は以下のようにコメントしています。
「今回の調査で分かった重要なポイントは『患者さんは“かかりつけの医師”を情報源として極めて重要視している』しかしながら、『ワルファリン療法中の方は、他の薬剤の説明を受けていない』ということです。
新規経口抗凝固薬は「管理が容易」「脳梗塞予防効果はワルファリンと同等かそれ以上」「大出血発現率はワルファリンと同等かそれ以下」「頭蓋内出血がワルファリンと比較して激減する」というベネフィットがありながらも、この事実が、十分に医師に伝わっておらず、その結果、患者さんへの説明に繋がっていないのではないかと考えています。」
抗凝固療法で治療中の患者さんはまずは担当の医師に対し、どんな治療選択肢があるのかを聞いてみてはいかがでしょうか。
⇒経口抗凝固薬に関する患者実態調査結果報告書
矢坂正弘(やさか・まさひろ)先生
1982年熊本大学卒業。1985年~2005年まで国立循環器病センター脳血管内科勤務、途中1994年から2年間メルボルン大学オースチン病院神経内科で脳血流や脳神経超音波に関する臨床研究に従事。2005年から現職。専門は脳卒中学、抗血栓療法学、脳神経超音波学。
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