[公共空間で進む禁煙化の流れ] 2010/04/02[金]

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 英国の王立医科大学(Royal College of Physicians)の煙草勧告研究班(Tobacco Advisory Group)が、『受動喫煙と子供達(Passive Smoking and Children)』という報告書を2010年3月24日に発表しました。その内容は、英国のほぼ全てのマスメディアが大きく報道しました。なぜなら「自家用車を含む全ての車や公園での喫煙は全面禁止にすべき」と提案したからです。

英国は日本の先を行く?「自家用車でも喫煙は禁止化」と勧告

 なぜ「自家用車や公園を全面禁煙」するか?というと、子供の受動喫煙防止が目的です。「子供は自らの力で受動喫煙を避けることはできない」「子供の健康に害を与えるのは、親の嗜好の自由とは関係ない」という発想があります。さらに深くは、「低所得者・低教育層/地域」≒「喫煙者層/地域」≒「健康度が低い層/地域」が固定され、それが世代を超えて繰り返されてしまっており、それは当該層/地域の子供達にとってフェアではない、という発想があるようです。

 前回の報告書は2002年に発表されましたが、それがきっかけとなって英国では2006年に「公共施設での全面禁煙化」が法律となった経緯があります(2007年7月施行)。当時は「英国名物のパブまで全面禁煙とは何事か!」と猛烈な議論となったものの、この報告書が根拠となって「屋内の公共的施設は全面禁煙」が議会で多数決されました。そのため今回の報告書も、数年後の法律制定へと進展していく可能性は充分にあります。

受動喫煙に起因する子供の患者数と医療費は

 報告書では、受動喫煙によって発生している患者数や医療費を算出しています。

「受動喫煙」が引き起こしていると推計される年間発症数(子供のみ

  • 「肺~気管支の呼吸器感染症」2万例
  • 「中耳炎」12万例
  • 「喘息」2.2万例
  • 「細菌性髄膜炎」200例
  • 「乳幼児突然死症候群」40例(これは全ての乳幼児突然死の1/5にあたる)

「受動喫煙」が原因で医療機関を受診していると推計される年間の患者数(子供のみ

  • 診療所30万人
  • 病院9500人

「受動喫煙」が原因で発生していると推計される年間の診療費(子供のみ

  • 診療所970万ポンド(約13億円)
  • 病院1360万ポンド(約19億円)

あわせて年間約32億円に上る。成長後の医療費なども含めるとさらに高額になる。

「親の煙」から子供は逃げることができない、社会が守るしかない

 また報告書は、「喫煙家庭の子供は、健康被害を認識していても、受動喫煙から逃げられない」「喫煙家庭の子供は、喫煙習慣の連鎖を生みやすい」ことも非常に重視しています。そして、それが「個人の自家用車であっても全面禁煙とすべき」という結論に至っているわけです。

 先進国共通の「少子化」現象下では、「子供の健康や将来を守る」という御旗がますます強まっています。QLifeの「全面禁煙」施設別賛否アンケート結果でも、日本の生活者でも、「子供が出入りする場所は、喫煙者も含め、全面禁煙に賛成する人が多い」という傾向が出ました。

 今回の報告書では、喫煙者などの反対意見を押し切って厳格な禁煙環境を実現しようとする医学界の、「複眼的なエビデンスに基づいた議論の推進が必要」との姿勢が感じられます。日本でも、同様のエビデンス固めを行ったうえで禁煙を法律制定していく流れにあるのでしょうか。

  • 両親が非喫煙者の子供に比べて、父親が喫煙する家庭の子供は約3倍「受動喫煙」している。母親が喫煙すると6倍以上、両親ともに喫煙すると9倍近くの量になる。
  • 80%の子供は「受動喫煙が自分に害である」と分かっているにもかかわらず、親が喫煙する子供の半数は自宅で受動喫煙し、1/3は車のなかで受動喫煙している。
  • 親兄弟が喫煙していると90%以上の確率で、子供は喫煙し始める。
  • 喫煙者がいる家庭では、乳児の突然死が2倍以上多い。

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