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[ヘルスケアニュース] 2020/01/22[水]

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大手3社の人事担当者が語った、各社が取り組む「D&I」とは

司会者の質問に答える小林拓先生

 昨今、日本でも「ダイバーシティ推進」や「健康経営」が声高に叫ばれるようになり、個人の能力を尊重して最大限に活かす働き方を推奨する動きが活発になりつつあります。しかし、その一方で、受け入れる側の「どうしたら良いのかわからない」という戸惑いに対する答えが十分に無いのも事実です。

 ヤンセンファーマ株式会社は「Beyond the Pills(患者に寄り添い充実した生活を送るための課題に共に向き合う)」を合言葉に、国の指定難病で患者数が最も多い炎症性腸疾患(IBD)の患者会「NPO法人 IBDネットワーク」と、難病専門就労移行支援事業所「株式会社ゼネラルパートナーズ」と共同で、「IBDとはたらくプロジェクト」をスタート。IBD患者さんが自分らしく働けるのが当たり前の世の中を目指して、さまざまな活動を行っています。その一環として「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)推進セミナー『“病”と仕事の両立支援にどう取り組むか?』」と題したセミナーが都内で開催されました。

 第1部の「病を抱える人の活躍を支えるD&I施策」では、日本航空株式会社、野村證券株式会社、ジョンソン・エンド・ジョンソン株式会社の人事担当者が登壇し、実際に行っている施策・支援の紹介とパネルディスカッションが行われました。

 日本航空では、予防を重視した健康推進プロジェクト「JAL Wellness」を数年前に発足。その中で社員の復帰や両立支援にも取り組んでいるそうです。具体的には、病気から復帰する際に、主治医だけでなく本人の意思を確認。復帰決定後には、産業医が復帰支援プログラムを実施するほか、社内にカウンセラーを置き、心の不安も取り除くようにしているとのこと。また、客室乗務員は「搭乗したら100%のパフォーマンス発揮が必須」であることから、復帰直後は「日帰り限定乗務」や「中距離乗務」など、無理のない乗務を選べるようにしているそうです。また、地上勤務の社員に関しても、フレックス勤務、テレワーク、時間給勤務など、働く時間にフレキシビリティを持たせていると語りました。

 ジョンソン・エンド・ジョンソンは、「you belong=あなたの居場所」を合言葉に、「ダイバーシティを当たり前に」「病気のことを言いたいけど言えないという壁をなくす」などの実現に社長自らが強くコミット。さらに、有志で構成された社員グループが率先して職場のD&Iを促進しているそうです。なかでも最も特徴的なのは定期的に行っているという「社内調査」。定期的にアンケート調査を実施することで、施策の効果や改善点を知ることができるだけでなく、社員一人ひとりに「自分たちの意思で会社を変えていく」という気持ちが芽生えるそうです。

 今回登壇した3社はいずれも、日本を代表するD&I推進企業ばかり。しかし、今回のディスカッションで新たに学んだことも多かったようで、最後に問われた今後の抱負や感想では、「みなさんの意見を聞き、今後は健康推進だけでなく両立支援についても指導していこうと思った」「健康な人も病気の人も“その人にとってのベストな状態”で働くために、両立支援は重要だと思った」「日本人はまじめすぎるので病気を理由に仕事を辞めるということを考えがちだが、ライフステージで起こり得る困難をともに乗り越えられる会社として成長していきたい」という前向きな意見が聞かれました。

「難病=働けない」は誤解。医師が病気のカミングアウトを勧める理由とは?

 第2部の「難病IBDから考える「病と仕事の両立支援」の具体事例 ~職場のコミュニケーションを円滑にするコツ~」では、北里大学北里研究所病院 炎症性腸疾患先進治療センター 副センター長の小林拓先生、IBDネットワーク 副理事長の中山泰男さん、ヤンセンファーマ株式会社 コミュニケーション&パブリックアフェアーズ部マネージャーの岸和田直美さんが登壇し、難病・IBDの就労環境に関する調査結果と、そこから見えてきた課題点などが議論されました。

 ヤンセンファーマが、20~69歳のフルタイム勤務の一般社会人1,000人、人事・総務250人に対して行った調査(実施期間:2019年8月5~9日)によると、「難病を抱えながら働く人が多くいることを知っていますか?」という質問に対し、一般社会人、人事・総務ともに50%以上が「知らなかった」と回答しました。この結果から、「難病=働けない」ではないのに、難病という言葉の響きや周囲に難病患者がいないなどの理由から、誤解が生じている可能性が示唆されました。

 また、「難病の方と共に働くことについて、どのように感じるか?」という質問に対しては、一般社会人の24.4%、人事・総務の35.2%が「心配・ためらいがある」と回答。その一方で、クロス集計の結果から、病名・症状の認知が高い人ほど「心配・ためらいはない」と回答していることが判明し、病気の認知がいかに重要かということが明らかになったそうです。

 病気を認知してもらうには「病気のカミングアウト」がとても重要になってきます。中山さんによると、「以前に比べて、IBDであることを上手に伝えられる人が増えてきた」とのこと。一方で、「入院したら、契約社員にされた」「病気をカミングアウトしたら異動させられた」などの声も依然としてあり、そのような話を先輩患者さんに聞いて怖くなり、カミングアウトを躊躇してしまう人もいるそうです。勤務先で人事担当でもあるという中山さんは、「病気のことを話しやすい環境作りを心がけている。また、病気について相談された際は、どんな配慮が必要か確認して配属先を考えるなど、できる限り対応している」と、自らの施策について語りました。

 小林先生は、「IBD患者さんの中には、病気のことを打ち明けられないがために、最善の治療が受けられずにいる人もいる。しかし、仕事を続けるために隠していたはずが、結果として悪化につながり、長期間の休職を余儀なくされるというケースもある。そのような事態を防ぐためにも、職場に病気のことを共有する必要があると考える。実際に、10~20年前に発症した人と、発症したばかりの人の10~20年後は明らかに違う。治療は今後さらに治療選択肢が充実して治療環境が整っていくはずなので、患者さんはカミングアウトし、企業側も採用を前向きにとらえていただきたいと思います」と語りました。さらに、「会社にとって自分は迷惑な存在なのではないか、このような職種は無理なのではないかといった、患者さんの思い込みを否定することも、診療する自分の役目だと思う」との持論を述べました。

 ヤンセンファーマの岸和田さんによると、同社では現在、IBD患者さんが会社に病気のことを伝えるためのサポートブックを作成中とのこと。患者さん、企業はもちろんのこと、病院とも連携し、できるだけ多くの人に届くように努力したいと意気込みを語りました。

 今回、患者・企業・医師という3つの視点から見てきた「病と仕事の両立支援」の実態。登壇者が語った「D&Iにはわかりやすいもの、わかりにくいものがあるが、特に病気や介護は本人が言わないとわからない。その“言いにくい”部分を、会社がいかに知ることができるかという意識が大事」という言葉がとても印象に残りました。ダイバーシティ推進を形骸化させないためにも、人事担当者だけでなく、一人ひとりがそれぞれの立場からできることを考え、実行していくことが必要なのではないでしょうか。(QLife編集部)

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