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[ヘルスケアニュース] 2020/02/06[木]

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シェアード・ディシジョン・メイキング(SDM)を実施すべき病気は?

群馬大学大学院 医学研究科 医療の質・安全学講座 小松康宏教授

 昨今、日本でも患者さんの意思を尊重した治療が重要視されるようになり、インフォームドコンセントや、セカンドオピニオンという言葉が一般的に浸透しつつあります。しかし、「シェアード・ディシジョン・メイキング(SDM)」という言葉を耳にしたことがある人は、まだ少ないのではないでしょうか?

 SDMは「共同意思決定」という意味を持ちます。インフォームドコンセントが「医師が患者に情報を伝え、患者自身が意思決定」するのに対し、SDMでは「医療者と患者が治療法や患者個人の価値観などを共有し、話し合いながら共に意思決定」するのです。

 一般社団法人 米国医療機器・IVD工業会(AMDD)は2020年1月27日、SMDの普及を推進のため、都内で「医療現場におけるシェアード・ディシジョン・メイキングの実践 ~患者さん一人ひとりが、自分にとって最善の選択ができるようになるために~」と題したメディアレクチャーを開催。医師、患者サポート団体、患者さんの視点から、SDMの現状と重要性が語られました。

 まず初めに、「医療現場における共同意思決定の実践 患者参加型医療とシェアード・ディシジョン・メイキング」と題し、群馬大学大学院 医学研究科 医療の質・安全学講座の小松康宏教授が講演されました。近年、慢性疾患の増加などで患者さんが長期的に治療に参加するケースが増え、「患者さんも含めたチーム医療」という考え方が広まりつつあります。

 小松先生は、病状改善を目指すうえで、薬や医療機器の進歩以上に「患者自身が病気・薬・治療方針についてきちんと把握していること」「医師が患者の生活スタイルや価値観を知っていること」の2つが非常に重要だと述べました。実際に、アメリカやカナダでは「患者参加こそがブロックバスター(従来の治療体系を覆す超大型新薬)になり得る」という考え方が浸透しつつあるそうです。患者参加型医療を行うことは、「QOLの向上」「不要な入院・外来の減少」「医療費の削減」「医療者の職務満足度の向上」といったメリットも。海外の半数以上の病院が患者諮問委員会を設け、実に4300万人以上が自分のカルテをオンラインで自由に見ることができるそうです。

 さらに小松先生は、SDMには「合理的な選択肢とそれらの利益やリスクに関するバイアスのない情報」「エビデンスを患者の状況に合わせて伝える医療者の専門技能」「患者の価値観・目的・意向・懸念事項」という3要素が欠かせないと語りました。これだけでも、SDMをきちんと実施するのは簡単なことではないように思えますが、例えば、慢性腎臓病に対する透析療法などにおいて、正しくSDMが行われれば、患者さんにとって「生き方の選択」にもなるのです。透析を始めるにあたり、医師はその説明を行いますが、手法の説明などが難しく、患者さんの誰もが知りたいであろう「透析で日常生活がどのように変わるのか?」などの情報は、あまり伝えられていないのが現状だからです。

 SDMは「インフォームドコンセントの進化版」とも言われていますが、全ての治療に必要というわけでもないそうです。SDMが必要と考えられるのは、「唯一最善・有効な治療法が不明で、QOL・予後への影響、患者負担が大きいケース」であり、例えば、市中肺炎(通常の社会生活で罹患する肺炎)で抗菌薬を使用する場合など、最適な治療法が明らかになっている疾患とは区別して考える必要があるそうです。

 「先生に全てお任せします」という患者さんもいまだに多いそうですが、そのような場合も、医師が自分で決めるように押し付けるのではなく、日頃の話し合いの中から、ごく自然に患者さんの意向を引き出し、医師側が理解すればSDMは成立するそうです。また、意思決定の支援ツールの配布や、ロールプレイングによる研修も開始されており、SDMへの取り組みは着実に広がりつつあるようです。最後に、小松先生は「あくまで最終目的は、患者さんにとって、ベストの治療・ケアが実現すること」だと述べ、講演を締めくくりました。

双方向のコミュニケーションが「治療」を大きく変える

 続く講演では、NPO法人腎臓サポート協会理事長の松村満美子さんが「患者が治療に主体的に関わることの重要性~腎臓病患者さんの声から~」と題し、同協会実施の「腎臓病患者アンケート」(実施期間:2018年10月15日~11月22日、有効回答数:2,806件/回答者の約8割が腎臓に不安がある患者本人、うち6割弱が60代以上)を例に挙げ、サポートする側が感じたSDMの重要性について講演しました。

 アンケートでは、透析中の患者さん(回答455人)へ治療選択の決定について質問したところ、「医療従事者に決めてもらった」が31.2%、「話し合って自分で決めた」が30.5%、「医療者と一緒に決めた」が33.2%でした。一方、保存期(透析療法開始前)の患者さん(回答1,103人)へ「もしも透析または移植が必要となった場合、治療についてどのように決めたいか?」と質問すると、「医療者と相談して一緒に決めたい」、つまりSDMを望む人が56.4%で、他の意思決定に比べて非常に多いという結果でした。また、医療従事者に判断を任せた人に比べ、SDMを実施した人は「腹膜透析」を選んだ人が圧倒的に多いことから、治療選択の幅も広がっていると推察できます。松村さんは、「この調査結果からも、患者自身が治療に主体的に関わる気持ちを持つことの大切さと、SDMの重要性がわかる。今後も同様の調査を続けていきたい」とし、これからも協会の活動を通して、SDMの啓蒙活動をしていきたいと語りました。

病気と共に歩む人生を「前向き」に変えてくれたSDM

 最後の講演では、「未来を担う子どもたちのために ~治療法を医師と共に選ぶ~」と題し、1型糖尿病歴数十年の患者さんが講演しました。高校1年生の頃に1型糖尿病と診断されてからインスリン治療を開始。心の動揺と不安があったそうですが、医師からは「近視などと同じで、インスリン注射を続ければいいだけ」と、冷たく言われたそうです。その後も数回転院し、そのたびに医師に不安な気持ちを訴えたそうですが、気持ちを汲み取って話を聞いてくれる医師とは出会えず、やがて「注射を打つことは恥ずかしい。病気のことは他人に言わない方がいいんだ…」という考えに変わっていったそうです。そのまま数十年が経ち、治療に対して消極的になっていた中、インスリンポンプ(CGM)との出逢いで、人生が大きく変わったそうです。また、治療を変えたことでQOLが向上しただけでなく、新しい主治医の先生が話をじっくり聞いて不安を取り除いてくれたため、自分の人生にも前向きになれたそうです。やがて、「教員である自分が恩返しできるのは教育の現場だ」と再認識し、それまで諦めていた試験に挑戦。今では副校長として充実した毎日を送っているそうです。

 恥ずかしながら、レクチャー参加前はインフォームドコンセントとSDMの違いが曖昧でした。しかし今回、3つの視点からSDMのメリットを聞き、一方向が双方向に変わるだけで、治療の質も互いのモチベーションも、大きく変わることを知りました。高齢化が進むいま、日本人一人ひとりがSDMについて正しく理解していく必要があるのではないでしょうか。(QLife編集部)

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