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[ヘルスケアニュース] 2021/08/31[火]

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関節リウマチの症状や困りごとを俳句に

 みなさんは、俳句を詠むことはありますか? 出版事業や通信販売事業を手がけるハルメクと製薬会社の日本イーライリリーは8月6日、「GoodDAY 関節リウマチ俳句ワークショップ」と題し、関節リウマチの症状や困りごとについて、患者さんや家族が作成した俳句を通して考えるイベントを開催しました。審査員長で俳人の髙柳克弘先生は、「俳句を詠むときに病を抱えている自分を客観的に見ることで、人生にほのかな余裕が生まれるのではないか」と病気を持ちながら俳句を詠むことの意義について考えを述べました。

 イベントでは、「伝えづらい言いづらい私の関節リウマチ症状」「医療者に伝えたい私の望み・困っていること」をテーマとした俳句を関節リウマチ患者さんや家族から募集し、10句が入選しました。本記事では、入選した俳句を紹介します。


入選した作品(ハルメク、日本イーライリリー提供)

入選した作品(ハルメク、日本イーライリリー提供)

「足と靴仲良く出来て春散歩」

 この句を詠んだ高野はるみさんは、「足の親指に人差し指が重なり、去年まで履いていた靴が履けなくなってしまいがっかりしていたが、デザインも気に入った靴を見つけることができた。その靴で散歩に出かけたときの句だ」と俳句にまつわるエピソードを披露しました。


髙柳克弘先生(ハルメク、日本イーライリリー提供)

 髙柳先生は、「足に靴が『馴染む』のような言い方をすることが多いが、足と靴が仲良くしていると言い換えたところは詩的な表現になっている」と評価。その上で、「『春散歩』を『桃の花』など散歩で見た草花に置き換えると、読者に散歩の場面を具体的な映像として想像してもらうことができる」と助言しました。

 同句に対し、北播磨総合医療センターの三崎健太先生(リウマチ・膠原病内科)は

「『履けたんだ!』向日葵も咲き医者冥利」

と返句。「お気に入りの靴を履いて、生き生きと診察室に入ってきてくれるのは嬉しい。私の治療は間違っていなかったんだなと思うことができる」と話しました。

「動かれへんけどまあええわ扇風機」

 患者家族の立場から俳句を応募した作者の稲畑とりこさんは、「活発だった祖母がリウマチになり動けなくなってしまった。辛いだろうと周囲は心配していたが、実際にはそれほど気にした様子がなかったことを思い出し、祖母が使っていた関西弁で表現した」と解説しました。扇風機と祖母を重ねた背景については、「祖母のもとに子どもを連れていくと、座ったまま首だけを動かして子どもをみるので、まさに首振りの扇風機のようだった。私たちの方も向いてくれると嬉しくなるのも、扇風機と合うと思った」。(稲畑さん)

 髙柳先生は、「季語に自分の心を重ねると、世界には自分以外にもいろいろなものがあるのだなと、機械や生き物との仲間意識が芽生える。そういった俳句の良さを生かした句だ」とコメントしました。

「こわばる手薬味大盛りそうめん」

 作者のぴよぴよさんは、「暑いのでそうめんをよく作っているが、包丁でネギを切るのが大変。痛い、辛いと思うことが増えた。でも、自分に勢いをつけるつもりで薬味は大盛りにしている」と俳句に込めた思いを語りました。髙柳先生は、「『薬味大盛り』という言葉に力強さを感じる。上手くいかないこともあるが、薬味を大盛りにして気持ちだけでも盛り上げていこうという意思が感じられる」とした上で、「五七五のリズムに乗せられると、夏のエネルギーをより感じることができる句になる」とアドバイス。

「そうめんに 薬味大盛り こわばる手」

と添削した句を紹介しました。

「関節の曲りいとほし桜餅」

 この句を作成したのは鹿沼湖さん。「小指の第一関節曲がってしまっていることに、長年付き添ってきた愛おしさを感じる。その気持ちと、やわらかくてピンク色の桜餅が似合っていると思い、取り合わせた」と説明しました。

 髙柳先生は、「関節の曲がりからはネガティブな言葉が続いてしまう予感があるが、ポジティブに捉えなおしている。桜餅という季語も良い」とコメントしました。

「夏至の駅孤軍奮闘昇り降り」

 句を詠んだ早起き猫さんは、「駅の階段では右ひざが悲鳴を上げる。まして、夏の盛りはなおさら。ひざの声を聞きながらゆっくり昇り降りする」とのエピソードを寄せました。髙柳先生は、「孤軍奮闘という硬くて強い言葉を生かしていて大胆」と評価。「孤軍奮闘をもう少し目立たせたい。人物から場面にカメラが引きでうつっていくという構成に変えてはどうか」と提案し、

「昇り降り孤軍奮闘夏至の駅」

と詠みました。

 この句について兵庫医療大学看護学部の神﨑初美先生(療養支援看護学)は

「走馬灯懸命に生き清々し」

と返句。「走馬灯が回っている様子と、階段を一生懸命のぼる姿を合わせた」といいます。

「天高し 痛みなき日の スケジュール」

 俳句の作者である黒木緑さんは「関節を動かしにくい日が多いが、痛みの弱い日はとても嬉しい。気持ちにハリが出て、『天高し』の爽やかな気分になる」と話しました。髙柳先生は、「スケジュールの内容が句ではあえて省略されているので、読者がそれぞれの思いを重ねやすい、共感を呼ぶ句だ」と感想を述べました。

 この句について東京大学医学部附属病院の庄田宏文先生(アレルギーリウマチ内科)は

「痛み去ね天高き日の天上へ」

と返句を詠みました。

俳句は仲間との強い絆を生み、本音を話し合える関係性を築く

「励まされ我も励まし小春風」

 この句を詠んだのは、はつみそらさん。「同僚達が励ますためにお見舞いに来てくれたのだが、いつしか私は同僚が話す仕事の愚痴や悩みの聴き役に。『スッキリした、ありがとう』と笑顔で帰る同僚を見たら、病気も悪いことばかりではないと思えた」とエピソードを語りました。

 髙柳先生は、「季語に含まれる『風』が互いの絆を象徴している。励まし合う様子が胸を打つ句だ」とコメントしました。

「花冷えや下から拝むこんぴらさん」

 作者ののりのりさんは、「日によって体調が異なり、治療で落ち着いていた症状が突然出ることもある。香川の金刀比羅宮へ友達と行ったとき、出発前は行けそうだったが、春の急な冷え込みで、身体が辛くなり一人下から拝んだ」と説明しました。

 髙柳先生は、「下から拝むということは、石段の下から見ている。書かなくても伝わる『石段』を書かないところに潔さを感じる」と述べました。

 返句を詠んだのは慶應義塾大学医学部の金子裕子先生(リウマチ・膠原病内科)。

「神様の見守る雪解けの参道」

「石段の下で待っている人のことも神様はちゃんと見ているよ、という思いを込めた」(金子先生)

「リウマチで腫れた母の手紅葉の手」

 俳句について作者の岡田美幸さんは、「母の手が紅葉のように真っ赤に腫れていて驚いたことを、思ったままに詠んだ」といいます。髙柳先生は、「紅葉は秋を代表する美しい風物。痛ましいな、大丈夫かなといたわる気持ちと、病や痛みに耐えてきたことを称える気持ちが込められており、奥行きのある句になっている」と話しました。髙柳先生は、「『紅葉の手』は赤ちゃんの手を想像する方もいると思う」として、

「リウマチで腫れた母の手紅葉いろ」

と添削した句を示しました。

「花冷や専門用語分かる振り」

 この句を詠んだ瀬川令子さんは、「主治医の先生は専門用語で詳しく説明してくれるが、わからないこともある」と経験談を話し、「花冷えの頃は体調が悪くなることが多く、気候が良くなってきているのに残念だという気持ちも表した」と解説しました。髙柳先生は、「『専門用語』は硬い言葉で詩歌では入れにくいと思うが、思い切って使っており、溶け込んでいる。自分の思いに忠実に作った点が良い」と評価しました。


イベント参加者の集合写真(ハルメク、日本イーライリリー提供)

 日本リウマチ友の会の長谷川三枝子会長は、自身がリウマチを発症してから専門医に出会うまで時間がかかったことや医師に聞きたいことを聞けなかった経験を同句に重ね、

「医師の一言理解できずに梅雨に入る」

と返句しました。

 髙柳先生はイベントの総括で「松尾芭蕉にせよ、正岡子規にせよ、それぞれ病を抱えながら素晴らしい俳句を作ってきた」とし、「病になっている自分を客観的に見ることで生まれる余裕、ユーモアが彼らの句を名句にしてきた」との考えを述べました。髙柳先生はまた、「作品を人と共有できるのも俳句の素晴らしいところだ」と指摘。「季語を入れる、五七五のリズムで詠むという共通のルールに従って作成することで仲間との強い絆が結ばれる」と話し、「本音が話し合えるような関係性も生まれるのではないか」と俳句の持つ効果に期待を示しました。

 みなさんも俳句作りに挑戦してみてはいかがでしょうか? 自分の健康状態を、いつもと違った視点でとらえられるかもしれません。(QLife編集部)

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