認知症の疑いを持ったら
[よくわかる「認知症」] 2010/07/30[金]
認知症の疑いを持ったら
認知症は何科で診てもらうといいのでしょうか?
認知症の早期発見のためには、専門医に診てもらうことが大切です。最近では「もの忘れ外来」や「認知症外来」などの認知症診療の専門外来を設けている医療機関も多く、こうした外来を利用すれば、専門医に診てもらうことができます。
精神科、神経内科、老年科などでも認知症の診療を担当していますが、医療機関によっては認知症の専門医がいない場合もあるので、電話などで確認をしてから受診するようにしましょう。
必ずしも規模の大きい医療機関を選ぶ必要はありませんが、認知症を正確に診断するためには、SPECT(脳血流シンチグラフィ)やCT(コンピュータ断層装置)、MRI(核磁気共鳴コンピュータ断層装置)などによる脳の画像が有力な手がかりになります。こうした医療機器を備えている病院を選ぶようにするといいでしょう。かかりつけの医師に相談し、認知症の専門機関を紹介してもらう方法もあります。
また、認知症の専門医を紹介してくれる相談窓口も各地域に設置されていますし、インターネットでも検索できるようになりました。
本人が病院に行きたがらないのですが。
認知症の診察のために病院に連れて行きたくても、家族はなかなか言い出しにくいものです。また、本人が受診を嫌がることもあります。嘘をついたり、無理やり病院に連れて行ったりすると、家族との信頼関係が崩れ、その後の治療がうまくいかなることもあります。
家族が心配していること、病気を早く見つけて治すためには受診が欠かせないことを伝え、本人を納得させたうえで病院へ連れて行くようにしましょう。その際には、本人の自尊心を傷つけないように十分配慮することが必要です。例えば「最近あなたの行動はおかしいから、病院へ行かなきゃ」と言うよりも、「健康維持のために一緒に検診に行ってみましょうか」と勧めたほうが、本人も抵抗なく受診することができます。気心の知れたかかりつけ医から、専門医を受診するよう話してもらうのもいいでしょう。
どうしても本人が病院に行きたがらない場合は、まず各自治体の保健所などで行われている認知症の相談会に参加する方法もあります。
認知症の診察、検査はどんなものですか?
認知症は本人や家族への問診、知能テスト、画像診断、血液検査などの結果を総合的に判断し、診断がなされます。問診では、まず患者の状態を身近で見ている家族から情報を得た上で、その結果をもとに本人に話を聞くのが一般的です。家族はいつごろからどのような症状が出始めたかなどを、整理しておくといいでしょう。本人の診察の時には、簡単な知能テストをします。知能テストにはさまざまな方法がありますが、最も多用されているのは「改訂長谷川式簡易知能評価スケール」です。複数の知能テストをして総合的に評価する場合もあります。
問診や知能テストの結果から認知症が疑われる場合、SPECT(脳血流シンチグラフィ)やCT(コンピュータ断層装置)、MRI(核磁気共鳴コンピュータ断層装置)、PET(ポジトロン断層撮影)などの画像検査で脳の状態を調べます。画像で脳の萎縮の有無や血流の異常を確認できるため、アルツハイマー病なのか、あるいは脳血管性障害による認知症なのか、またどの程度病状が進行しているのかなどを、より確実に把握できます。
認知症にはどんな治療法がありますか?
認知症を完全に治す方法はありませんが、治療やケアを行うことによって進行を遅くしたり、症状を軽くしたりすることは可能です。失禁や徘徊などの症状をある程度抑えることができれば、本人が穏やかに生活できるばかりでなく、介護者の負担も軽くなります。
治療は薬物療法とリハビリテーションが主体です。薬物療法では認知症の進行を遅らせ、脳の機能低下を抑える薬を使用します。また、徘徊などが激しいときには、抗精神病薬などを利用して、症状を改善することもあります。
なおリハビリテーションには、脳の各部の機能低下を抑えるための書き取りや計算、音読のほか、残された脳の機能に刺激を与えて活性化させる「回想法」や「音楽療法」、「芸術療法」など、さまざまな方法があります。症状に合わせて適切なリハビリテーションを選択することになります。
また治療と同じくらい重要な役割を果たしているのが、ふだんの生活における家族の対応です。認知症特有の行動に対して、つい本人を叱りつけてしまいがちですが、本人が不安になるばかりでなく、症状も悪化します。認知症という病気を十分に理解したうえで、適切な声かけや接し方をするようにしましょう。
認知症を本人に告知すべきですか?
認知症であることを告知をするかどうかは、患者や家族にとって非常に難しい問題です。告知することのメリットとしては、本人がこれからの生き方について考える機会になる、本人の協力が得られ希望に沿った治療やケアを行うことができる、などが挙げられます。
しかし確実な治療法がない現状では、告知による本人のショックが周囲の想像よりも大きく、不安が増大したり、将来を悲観したりする危険もあります。特に若年性認知症の場合には、仕事や家族などさまざまな問題を抱えることになるので、より慎重に判断しなければなりません。
人それぞれ告知の受け止め方も異なるため、本人の性格、年齢などを考慮しながら、告知するかどうかを決めましょう。告知は家族との信頼関係が築かれていることが前提ですが、担当医とも密接に連携をとり、カウンセリングを取り入れるなど、告知した後のケアも重要です。
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