[がん治療で注目の栄養療法とは] 2014/04/18[金]

 がん治療において、治療を円滑にすすめるために、医療者の多くが診る患者さんの状態の1つに栄養状態があります。栄養不良からなる体重減少は、患者さん自身の体力を低下させるだけでなく、がん治療の効果を失いかねない非常に気を付けるべき事象です。食べられるものだけを無理せずに少しずつ摂れば本当に良いのでしょうか?体重減少を防ぐ手段として、全国の医療機関で導入が進んでいるのが、栄養補助飲料などと組み合わせた食事を提供する栄養療法です。入院中のがん患者さんの栄養状態を支える管理栄養士の利光久美子先生、川口美喜子先生に、がん治療における栄養療法の意義、そして、栄養療法における栄養補助飲料のメリットについてお話をうかがいました。

栄養補助飲料を組みあわせた食事で患者さんの治療に対する意識も向上

愛媛大学医学部附属病院栄養部部長 利光久美子先生
愛媛大学医学部附属病院栄養部部長
利光久美子先生

 「がん患者さんに限らず、味の好みや摂取量など私たちの食生活は、それまでの生活背景や生活習慣と密接につながっています。がんの治療中であっても、いきなり“非日常”の病院食になるのではなく、“日常”にプラスアルファする形で、元の生活を過ごせるようなお手伝いを栄養の観点から進めていく。それが私たち栄養士の務めだと考えています」と語るのは、愛媛大学医学部附属病院栄養部部長の利光久美子先生。同病院には10名の管理栄養士が在籍。栄養管理を行うNSTなどのチーム医療はもちろん、化学療法時の相談や、個人栄養相談・指導、退院時支援などのほか、ビュッフェスタイルの食事や積極的に病棟でがん患者さんから相談を受けるなど「顔が見え、相談できる栄養士」として積極的に活動しています。


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提供:利光先生

愛媛大学医学部附属病院がアンケート調査から導入している治療食とは?

 「がん治療を円滑に行うためには、エネルギーやタンパク質、脂質など、多様なそして適切な量の栄養素の摂取を行い、体重減少を防ぐことが重要です。しかし食事だけでは、これらを確実に摂取することは難しく、多くの品目をバランス良く摂る事が必要になりますが、患者さんの多くは抗がん剤の副作用による吐気などで、食事に悩まれています。さらに、病院では通常、食事の提供時間が決まっているので、食事の時間と吐気が重なると、何も食べられなくなってしまいます」(利光先生)。そこで、同病院では食事と組み合わせるかたちで、栄養補助飲料(プロシュア)を導入しました。「がん治療に必要な必須栄養素を摂取できることはもちろん、ドリンクタイプなので、食事の時間に左右されることなく、いつどんな時にでも摂取することができます」(利光先生)。
 こうした同病院の一連の取り組みは患者さんの体重減少、体力低下を防ぐだけでなく、治療意欲向上にも役立っており、化学療法施行患者100名に病院の食事に望むものを聞いたアンケートでは、「栄養が取れるもの」との回答が最も多く、次いで「(がん)治療食」という結果となりました。「患者さんの栄養療法に対する意識、期待度が高く、管理栄養士として責務を感じ、身の引き締まる思いですね」(利光先生)。

お魚(EPA)がもたらす炎症抑制効果が、がん患者さんに、そして周囲の方に「笑顔」を~食欲低下、食べられない、体重減少、体力低下の悪循環の原因:“炎症”を抑えよう

1日に必要なEPAは1500~2000mg。マグロの刺身ならなんと10~15人前も


大妻女子大学家政学部食物学科
教授 川口美喜子先生

 がん治療を円滑に進めるための必須栄養素の1つにEPAがあります。「EPAは炎症を抑制する効果が報告されており、がん治療中の患者さんは1日あたり1500~2000mg摂取することが望ましいですが、これを食事で摂取しようとするとマグロの刺身ならなんと10~15人前も必要になってしまうんです。」と語るのは、大妻女子大学家政学部食物学科教授 川口美喜子先生。以前に在籍した島根大学医学部附属病院臨床栄養部では、栄養サポートチームの構築と稼働に携わったほか、『がん専任栄養士が患者さんの声を聞いてつくった73の食事レシピ』(医学書院)の著作もあります。
 「風邪を引いたとき、食欲のある方は少ないと思います。風邪の症状は、のどの痛み、発熱等炎症が生じている状態ともいえます。がん患者さんの体重減少も炎症が原因と言われます。炎症を抑えるために食材を探しました」(川口先生)。先生はさらに、炎症の抑制後の効果として「笑顔になること」を挙げました。「がん治療の副作用に、口内炎や嚥下時の炎症痛などがあり、食べ物を口に入れたり飲み込んだりする際に痛みが生じます。この痛みは食事時間以外も襲ってくるので、多くの患者さんが非常に辛そうな表情で1日を過ごしていました。そこで、食事に鮭のハラスを用いたり、食事とは別に、EPAを含有している栄養補助飲料を飲んでいただいたのですが、炎症が抑制され、口の中や喉の痛みが引いたことで患者さんに笑顔が戻ったのが非常に印象的でしたね」(川口先生)。加えて、患者さんが笑顔を取り戻すことで、家族をはじめ周囲の方にも笑顔の回数が増えた、と川口先生。「在宅での治療になると、患者さんの食事の悩みがそのままご家族の悩みになってしまいます。単なる栄養摂取だけでなく、患者さんや周囲の方のQOLを上げる効果があるといっても過言ではないのかもしれません」(川口先生)。
 「栄養素の足りない部分を補うサプリや栄養ドリンクとは異なり、栄養補助飲料は治療を円滑に進める土台作りの役割を果たします。家づくりで例えるなら、サプリメントはちょっとした補修で、栄養補助飲料はメインの柱をさらに太く強くする補強、といったところでしょうか」(川口先生)。

 お二人とも「まだまだ栄養補助飲料に関する誤解が多いのが残念」と語っていた今回のインタビュー。私たちが健康に過ごすために必要な食生活。今回、お話をうかがったお二人以外にも、多くの管理栄養士さんが、一人一人の患者さんの病歴や症状に目を向け、“栄養療法の視点”からがん患者さんに笑顔をもたらしています。人生において大切な“食”はがん治療中も同じです。病院で食事、栄養の専門家である栄養士の方々がそろって薦める栄養補助食品について、一度ご相談してみてはいかがでしょうか?

利光久美子先生 愛媛大学医学部附属病院栄養部 部長

愛媛大学大学院連合農学研究科博士課程卒。
2000年から同院勤務。
2011年6月から現職。
著作に「ホテルシェフと大学病院の管理栄養士が考えた おいしくやせる480kcal のレシピ」「ホテルシェフと大学病院の管理栄養士が考えた おししい!塩分ひかえめ「マイしおレシピ」(PHP研究所)。

川口美喜子先生 大妻女子大学家政学部食物学科 教授

1981年大妻女子大家政学部卒。
1993年島根医大研究生(第一内科)修了、医学博士号取得。
1996年同大第一内科文部教官を経て、2004年より島根大病院栄養管理室室長。
2013年より現職。
著作に『がん専任栄養士が患者さんの声を聞いてつくった73の食事レシピ』(医学書院)。

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