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[クリニックインタビュー] 2014/04/11[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第160回
松が丘クリニック
岡村 榮院長
~患者と寄り添い「ありがとう」という感謝を励みに~

偶然に導かれ、医学部を受験

 理系、とくに数学が得意で、将来は数学者か物理学者になることを夢見て東大理科I類を目指したのですが、たった1度受験で失敗し、春だというのに挫折感いっぱいで、憂鬱な毎日を過ごしていました。そんなある日、お茶の水の丸善書房で医療系の進学受験雑誌を目にしました。今となってははっきり思い出せないのですが、生命の尊厳をテーマにしていたかと思います。精神科医についての記事を何とはなしに読んでみたら、つらい気持ちが少し和らいだのです。「こういう道もあるのか」と一筋の光が射した気がして。そんな偶然のきっかけから医学部を目指すことにしました。
 当時、総合臨床医の育成を目指す大学は防衛医大と筑波大学の2校しか存在せず、最難関とも思われた防衛医大に挑戦し進学できました。防衛医大とのご縁は、今思えば、高校3年の時、熊谷地連の担当者から防衛大学の勧誘を受けたこともきっかけかもしれません。
 当初は精神科医や小児科、消化器内科にも興味があったのですが、ポリクリ(臨床実習)を経験して診断から治療まで守備一貫して患者さんを診られるようにと、一般外科、消化器外科医を志しました。
 卒業後は一般外科・消化器外科、乳腺外科が専門でしたが、出身校である防衛医大総合内科(現在は総合臨床部)助教授の恩師を手伝うべく、週1回非常勤講師として外来に携わることとなり、またクリニック院長としても、さまざまな病気を持つ患者さんの診療をおこなった経験から、プライマリ・ケア医として医療に携わりたいと考えるようになりました。プライマリ・ケア医とは、患者さんにとって身近な場所で、どんなことにでも相談にのり、総合的な医療を提供する医師のこと。そこで、1999年に松が丘クリニックを開設。内科・小児科・外科を中心としたプライマリ・ケアをおこなう「かかりつけ医」として、地域に密着した医療を心掛けてきました。

子どもの風邪や生活習慣病からがんの早期発見まで

 現在、クリニックを訪れる患者さんはだいたい1日40人から50人、多い時期で60人ぐらいでしょうか。お子さんからご高齢の方まで、家族ぐるみで診させていただいている方も多いですね。開業当初は、近くに小児科がなかったこともあって、子どもの熱発や風邪などが多く、小児科の患者さんが半数から7割ぐらいを占めていました。小児夜間当番医をしたり、また小児外科の経験も若干あったので、小児科の先生が、怪我などで紹介してくれたことも影響したかもしれません。今は、高齢者が多く、高血圧や高脂血症、糖尿病、肥満、痛風など、生活習慣病の治療が主となっています。
 また、消化器外科、乳腺外科の専門医として、がんの早期発見や治療も積極的におこなっていました。がんは、発見が遅れると手術ができないとか、手術しても再発してしまうケースも多いので、早期発見が何より重要。開業医なので、現在は診断が主ですが、内視鏡や超音波検査などで初期のがんを発見、診断し、精密検査や治療が必要な場合は専門病院を紹介するというゲートキーパー役は果たせていると思います。クリニックでは年間10例ほどがんが見つかり、紹介をおこなっていますが、その半数が乳がんです。紹介先として、県内、都内など多くの病院の登録医となって病診連携を確保し、患者さんに安心していただいています。

「自分の家族だったら」と考えて治療法を選択

 クリニックの基本方針は、笑顔を大切に、明るく元気で優しいクリニックを目指すということ。体の具合が悪いと、どうしても気持ちも後ろ向きになりがちなので、せめてクリニックの中だけでも、スタッフは明るく笑顔で患者さんに接するようにしています。「笑う門には福来る」という言葉がありますが、本当にその通りで、よく笑い、よく食べ、よく眠り、適度な運動をすることは免疫力を高め病気を防いでくれますし、認知症予防にもつながると考えられています。
 また、地域の家庭医として「なんでも診る」という気持ちでいます。どんな相談でもしてもらえるように、一生のおつきあいができる「かかりつけ医」を目指しています。そのためにも、患者さんとは家族と接するように向き合うことを心がけ、治療法を考えるときは、いつでも「自分の妻だったら、子どもだったら、親だったら」と考えています。それと同時に、この患者さんにとっていちばん大切なものは何か…、仕事か、家庭か、趣味か、ということも忘れないようにしています。
 開業して15年目になりますが、開業当初は赤ちゃんだった子と学校の健康診断で会ったり、学校の自由授業で「医者になりたいから先生を取材させて」とやってきたり、そういう子どもの成長を見られるのは、とても嬉しいですね。将来的には、その子たちがお父さん、お母さんになって、またその子どもたちを診ることもあるのかと思うと、今から楽しみです。
 ほかにも、書の得意な患者さんが私の好きな言葉を書にしてくださったり、地元の自然を写真に撮ってくださったり、時にはお弁当を持ってきてくださって一緒に食事をしたり。そういう患者さんとの交流が、自分にとって何よりの励みになっています。「ありがとう」という感謝の一言が、勇気100倍となり、日頃の苦労が報われる。まさに医者冥利につきる感慨無量のひと時であろうと思っています。

高齢化に伴う在宅医療が今後の課題

 プライベートでは、ゴルフやサッカーなどのスポーツが趣味です。小、中学時代は野球をしていて、高校、大学、社会人になってからはサッカーを続け、今は防衛医大サッカー部のOB会長を務めています。
 患者の健康管理はするものの、自身の健康に関しては、少し前までは何も考えていませんでした。病院の看護師さんやサッカー部の先輩たちに「太っているからやせたほうがいいよ」と言われたり、妻から「自分の健康管理もできないのに患者さんに言えないでしょう」と叱られたりしていたのですが、体重が80kgあっても走ったり、シュートしたりできていましたし、「自分は健康だ、これはお相撲さんと同じで皮下脂肪なんだ。内臓脂肪じゃない」なんて患者さんにも公言していました。
 ところが、5年前にサッカーの試合中にアキレス腱断裂という大ケガをし、その時に体重を計ったら100kg目前! これには猛省しまして、以来、妻の作る健康的な食事と「なるべく歩く」「お酒は控える」という方法でダイエットに励み、現在80㎏前半に戻りました。生涯現役を目標にしているため、あと10㎏減量が当分も目標です。「ゴルフも体重も70台」と同期には明言している次第です。
 日本全国どこでもそうですが、この地域でも高齢化がどんどん進んでいるので、将来的には在宅医療にも取り組んでいきたいと考えています。今も、ご近所の方に頼まれて、時々往診や看取りをすることもあるのですが、これからさらにニーズが高まると思います。
 ただ私ひとりですし、24時間365日対応となると、訪問看護や在宅支援所などとの連携、夜勤のためのスタッフの確保などが不可欠。まだまだ課題も多く、ハードルは高いです。でも、患者さんと一生おつきあいする地域のかかりつけ医として、避けては通れない道だと思うので、本腰を入れて考えていかなければと思っています。

取材・文/出村真理子(Demura Mariko)
フリーライター。主に医療・健康、妊娠・出産、育児・教育関連の雑誌、書籍、ウェブサイト等において取材、記事作成をおこなっている。ほかに、住宅・リフォーム、ビジネス関連の取材・執筆も。

松が丘クリニック

医院ホームページ:http://www.myclinic.ne.jp/matsucli/pc/index.html

「西武園」駅より徒歩10分。「所沢」駅西口よりバス「西武園行き」に乗車(約10分)、「松が丘中央」下車、徒歩1分。
静かな住宅街にあり、待合室や診察室にはたっぷり陽射しが降り注ぐ明るいクリニックです。
詳しくは、医院ホームページから。

診療科目

内科、外科、小児科、消化器内科、乳腺外科、皮膚科

岡村 榮(おかむら・さかえ)院長略歴
1988年 防衛医科大学卒業 同大学第一外科(現・外科学教室)入局
同付属病院、自衛隊中央病院、三宿病院研修
自衛隊札幌病院、北海道がんセンター、
防衛医科大学外科専修、陸上自衛隊相馬が原駐屯地業務隊医務室を経て、
1995年 医)FHクリニック院長、防衛医科大学非常勤講師就任
1999年 松が丘クリニック開設


■所属・資格他
日本内科学会、日本外科学会、日本プライマリ・ケア連合学会、日本消化器外科学会、日本乳癌学会、日本東洋医学会、日本医師会認定産業医、日本体育協会公認スポーツドクター、一般社団法人臨床ゲノム医療学会認証 ゲノムドクター登録認証医、所沢市医師会理事・所沢市医師会看護学校運営理事、所沢市医師会乳がん検診委員長・胃がん検診・乳幼児検診委員・学校医・産業医、埼玉県医師会代議員ほか


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