結核性髄膜炎
けっかくせいずいまくえん
結核性髄膜炎とは?
どんな病気か
亜急性に発症することが特徴で、病理所見では、髄膜の混濁、肥厚がみられ、その変化は脳底部で強く、脳底髄膜炎とも呼ばれます。
症状の現れ方
発病は比較的緩やかで、頭痛、嘔吐、発熱などが現れます。項部(うなじ)硬直が認められ、脳底髄膜炎の進行とともに、水頭症による脳圧亢進、意識障害や動眼神経、外転神経麻痺などの脳神経麻痺がみられます。
検査と診断
ツベルクリン反応が陽性で、一部は陰性化します。クオンティフェロンも結核感染の有力な指標となります。胸部X線所見の異常は約半数で認められます。髄液圧は上昇、リンパ球、単球細胞増加、蛋白増加、アデノシンデアミナーゼ活性上昇などの所見がみられます。PCR法による結核菌ゲノム(遺伝子)の検出が迅速診断として有用です。頭部CT、MRI所見は脳底槽の異常所見、血管炎・水頭症の存在などが特徴的とされます。
結核の既往歴の有無、胸部X線所見、頭部CT・MRI所見を参考にし、髄液からPCR法による結核菌ゲノム陽性、あるいは塗抹か培養検査で結核菌の存在を証明し、診断を確定します。
治療の方法
結核性髄膜炎が疑われた時点から、イソニアジド0・4g/日(経口)、リファンピシン0・45g/日(経口)、ピラジナミド1・5g/日(経口)、ストレプトマイシン1g(筋注)の4剤を使います。重症例には副腎皮質ステロイド薬を投与することがあります。約30%の死亡率とされ、生存例の30%に後遺症がみられます。早期治療が重要です。
長期間の治療になることが多く、抗結核薬の副作用(たとえば、ストレプトマイシンでは聴力障害)にも注意を払う必要があります。
病気に気づいたらどうする
比較的緩やかな発症で、頭痛、嘔吐、発熱などがみられた場合は、神経内科、内科、小児科の医師に相談してください。
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髄膜炎に関連する可能性がある薬
医療用医薬品の添付文書の記載をもとに、髄膜炎に関連する可能性がある薬を紹介しています。
処方は医師によって決定されます。服薬は決して自己判断では行わず、必ず、医師、薬剤師に相談してください。
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メロペネム点滴静注用バッグ0.5g「日医工」 ジェネリック
主としてグラム陽性・陰性菌に作用するもの
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フルコナゾール静注液100mg「日医工」 ジェネリック
その他の化学療法剤
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アシクロビル点滴静注液250mgバッグ100mL「アイロム」 ジェネリック
抗ウイルス剤
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イトリゾール内用液1%
その他の化学療法剤
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メドロール錠2mg
副腎ホルモン剤
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アンコチル錠500mg
その他の化学療法剤
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エリスロマイシン錠200mg「サワイ」 ジェネリック
主としてグラム陽性菌,マイコプラズマに作用するもの
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水溶性プレドニン10mg
副腎ホルモン剤
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プレドニゾロン錠1mg(旭化成)
副腎ホルモン剤
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エリスロシン錠100mg
主としてグラム陽性菌,マイコプラズマに作用するもの
・掲載している情報は薬剤師が監修して作成したものですが、内容を完全に保証するものではありません。
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コラム用語の解説
髄膜とは
硬膜、くも膜、軟膜からなっています。硬膜は頭蓋骨の内面に密着していますが、軟膜は脳溝に沿って深く入り込んでいます。くも膜と軟膜の間に髄液が満たされています。ヒトの脳脊髄液の総量は120~140mlですが、産生される脳脊髄液の量は1分間に0・35mlで、1日では約500mlとなり、1日3~4回入れ替わっていることになります。
髄膜刺激症状とは
髄膜の炎症、くも膜下出血などによる髄膜に対する刺激の結果としてみられる症状で、自覚症状としては頭痛があり、他覚的には項部(うなじ)硬直、ケルニッヒ徴候などがみられます。
血液脳関門とは
髄膜および脈絡叢(脳室に位置し、血管に富む部分)は血液中の物質を選択的に通過させる性質があり、正常の時には血液中の細菌、化学物質、抗原、抗体などは髄液中に移行しません。しかし、病的状態になるとこの関門の透過性が亢進し、移行します。
脳炎・脳症
脳炎は脳内でのウイルスの直接増殖がみられ、脳症では脳内でのウイルス増殖を欠き、通常髄液での細胞増加はみられません。脳症では、高サイトカイン血症などの免疫反応が重要な役割を演じていると考えられています。
PCR法とは
PCR(polymerase chain reaction、ポリメラーゼ連鎖反応)とは、DNAあるいはRNAの断片を大量に増幅する酵素学的化学反応で、感度がよく、各種ウイルス、細菌の検出にも使用されています。
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