専門医より推薦を受けた診療科目・診療領域

熊本大学病院は、複数の有名専門医(※)の間で「自分や家族がかかりたい」と推薦されています。
このページでは、専門医より推薦を受けた分野(科目、領域)の特色や症例数、所属している医師について取材・調査回答書より記載しています。 ※推薦、選定して頂いた有名専門医の一覧表

呼吸器外科

分野

呼吸器外科

特色

肺癌、転移性肺腫瘍、嚢胞性肺疾患、胸腺を始めとする縦隔疾患など、取り扱う疾患の種類が多岐にわたっており、モットーは、あらゆる呼吸器外科疾患に最善の方法で対応できることである。呼吸器内科、放射線科と連携しながら、術前・術後の集学的治療、心臓血管外科と連携しながら、人工心肺下の拡大手術も積極的に行うと同時に、特に力を入れているのが胸腔鏡を用いた低侵襲手術と肺温存を目指した肺区域切除の積極的実施である。ともに高度の技術を要するが、当科では対応可能である。

症例数

2008年の手術総数は213例で、肺癌114例、胸腺・縦隔疾患22例、気胸・肺嚢胞5例、転移性肺腫瘍28例の他に、手掌多汗症、胸壁腫瘍切除、膿胸手術などを行った。全手術のほぼ半数を胸腔鏡補助下に行った

★臨床病期IA期肺癌に対しては、肺機能温存を目指した肺区域切除を行う。区域切除で根治性が得られない方には、胸腔鏡補助下肺葉切除を行っている。進行がんの場合は、術前放射線化学療法の併用を行ったり、大血管の切除再建を行い、その根治性を高めている

★重症筋無力症に対する拡大胸腺摘出術は、これまでの300例以上の経験を基に、神経内科と連携して、速やかに内科治療に移行できるよう努めている。また、症例を選んで胸腔鏡下拡大胸腺摘出術を行っている

★近年、CTで発見されるようになった微小病変の診断は困難である。当科では、リピオドールマーキング法を用いて胸腔鏡下に病変を切除し、診断を得ている。病変が悪性疾患であった場合は引き続いて根治術を追加している。他にも新しい診療技術を開発し、大学病院としての役割を果たしている。

医療設備

CT(64列CT)、MRI(3T)、シンチグラフィ、SPECT、放射線治療(定位放射線治療)、DSA、内視鏡(EBUS、自家蛍光内視鏡)、CTガイド下生検(画像診断・治療科)。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

循環器内科

分野

循環器科

特色

病棟は41床でうち2床は冠動脈疾患集中治療室として運用している。当科は前任の泰江弘文教授が83年12月に初代教授として赴任され、当初は冠攣縮性狭心症の研究と臨床で世界的に有名になった。その後、心不全、急性冠症候群、不整脈と診療の領域を広げ、現在では循環器内科領域のほぼ全域で高いレベルの診療と研究を行っている。現在は小川久雄教授を中心に、日本から臨床診療エビデンスを発信するために循環器疾患における大規模臨床試験を積極的に推進しており、最近では全世界が注目する臨床エビデンスを発信できる程の急成長を遂げている。当科の特色は、豊富なマンパワーを生かし、きめ細やかな診断と治療を行うことができることと、数多くの先進的な機器を駆使した集学的な診断、治療が施行可能な点である。病院は現在、再開発計画が進められており、10年9月には東病棟が完成し、循環器内科、CCUも東病棟に移転する予定である。新中央診療棟では循環器内科専用の心臓カテーテル検査1室と兼用の血管造影室があり、心臓カテーテル検査、治療を複数の検査室で同時に施行できるようになった。日本循環器学会指定研修施設、日本内科学会指定研修施設、日本心血管インターベンション学会認定研修関連施設。

症例数

08年の心臓カテーテル検査件数は約900件、うち経皮的冠動脈インターベンション209件、高周波カテーテル・アブレーション(不整脈治療)103件と症例数もここ数年で増加している。08年4月より心血管治療先端医療寄附講座が開設され、狭心症・急性心筋梗塞、末梢動脈疾患に対するカテーテル・インターベンションを積極的に行っている。また、年間症例数が200例を越えたことにより、冠動脈ステントに加え、ロータブレータの使用も可能となった

★虚血性心疾患の治療は、根拠に基づいた治療(Evidence Based Medicine: EBM)の実行に重点を置いている。当科を中心として日本の主だった循環器専門施設に参加していただき施行したJAMIS、JBCMI、MUSASHIなどの日本における多施設無作為化大規模臨床試験に加え、最近発表された糖尿病患者におけるアスピリンの予後改善効果を検討したJPAD試験は、JAMA誌に掲載され全世界の注目を浴びた

★遺伝的素因が日本人の虚血性心疾患の発症に大きく関与していることを当科はこれまでに明らかにしてきた。これに基づき当科では、急性心筋梗塞や冠攣縮性狭心症の診断に遺伝子解析の手法を取り入れている。将来はこれらの所見から、個々の症例に最も適した薬物治療を行う試み(いわゆるテーラーメイドメディシン)を模索中である

★当科から申請している高度先進医療として、08年度よりエキシマレーザー血管形成術の臨床応用に取り組んでおり、従来の冠動脈形成術が困難な症例に対する画期的な治療法となっている

★不整脈治療の分野では、07年4月より不整脈先端医療寄附講座が開設され、日本でも数少ない、エンサイトを用いた高次心内電位マッピングシステムによるカテーテルアブレーションを施行しており、成功率は9割を超え、多くの難治性の不整脈の治療に成功している。ペースメーカーを用いた心不全治療である心臓再同期療法(cardiac resynchronization therapy: CRT)も良好な成果を得ている。また致死性頻脈性不整脈に対する植え込み型除細動器(ICD)の施設認定も受けており、植え込み症例数も増加している。

医療設備

CCU 2床(病棟内)、ICU 16床(院内)、心臓カテーテル装置2台、心臓超音波装置5台、MRI、CT、心筋シンチグラム、IABP(大動脈内バルーンパンピング装置)、PCPS(経皮的人工心肺補助装置)、トレッドミル負荷心電図、ホルター心電図、24時間連続血圧測定装置、脈波伝播速度測定装置、レーザー散乱光式血小板凝集能測定装置、全自動遺伝子解析装置、血管内視鏡、血管超音波診断装置、冠動脈血流測定装置、冠動脈圧測定装置、心筋乳酸産生測定装置、全自動凝固線溶能解析装置などを備えている。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

心臓血管外科

分野

心臓血管外科

特色

熊本県唯一の特定機能病院であり、冠動脈疾患、心臓弁膜症、大動脈疾患、先天性心疾患、末梢血管に対する外科治療を幅広く行っている。県唯一医育機関として、県内外の6カ所の心臓血管外科関連施設と連携し、心臓血管外科専門医の育成に力を注ぐとともに、先端医療(重症狭心症に対する冠血管新生療法、大動脈瘤に対するステントグラフトを用いた血管内治療)を行い、研究機関としての役割を担っている。

症例数

施設の特徴として重症例や他病院での治療困難例が多い。手術症例数は年間約150例である。最近5年間の手術死亡率は単独冠動脈バイパス手術0.6%、単独弁膜症手術0%、大動脈瘤手術1.7%と良好である。冠動脈バイパス術では、人工心肺を用いない低侵襲心拍動下冠動脈バイパス術を多く行い、体外循環による合併症を減らし良好な成績をあげている。重症狭心症に本邦で初めて血管新生因子を用いた冠血管新生療法を実施し、これまで18例に行い臨床効果が得られている。弁膜症手術では、人工弁置換術の他、僧帽弁形成術を積極的に行い、合わせて心房細動に対する不整脈手術を行っている。大動脈瘤手術では、企業ステントや独自ステントグラフトを用いた血管内治療を第一選択とし、開胸や開腹をせず、良好な成績をあげている。

医療設備

ICU、CCU、補助循環装置、術中自己血回収装置、心エコー、心臓血管造影装置、CT、MRI、心臓各医学検査。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

腎臓内科

分野

腎臓内科

特色

慢性腎臓病(CKD)を中心とし、腎炎・ネフローゼ、腎不全、透析治療など、腎疾患全般の専門総合診療を担当している。原発性腎炎に加えて、糖尿病、膠原病、肝炎を含む感染症など多くの全身性疾患に伴って出現する腎障害も多いため、腎臓だけでなく全身を診ることができるスタッフの育成に努めている。特に、高血圧は腎障害に合併し、腎臓を含む臓器障害を引き起こす重要な病態であるため、その病態の解明および臓器保護を中心とした治療を行っている。また、研究にも積極的に取り組んでおり、腎不全の新たな治療法の開発を目指している。

症例数

症例数:1カ月の外来通院患者は約350人。糖尿病、膠原病などの二次性の腎障害、腎不全症例も多く、それぞれ約1/3を占め、全体の約半分が高血圧を合併している

治療・成績=血尿・蛋白尿の症例では、詳細な病歴聴取、身体所見および検尿所見から必要な採血検査を選択し、1日蓄尿にて腎機能、尿蛋白量を評価し、腎生検の適応を厳密に決定している(尿蛋白については0.5g/日以上)。腎生検は、腹部超音波下に行っており、年間腎生検症例数は約120例。組織標本の作成、光学顕微鏡・免疫染色・電子顕微鏡診断はすべて腎臓内科で行っており、迅速な確定診断が可能である。腎生検組織の疾患活動性が強い場合、ステロイド療法を主体とする治療を行うが、感染症、糖尿病、精神症状、消化管出血、骨粗鬆症などの重篤な合併症を来す場合があるため十分なインフォームド・コンセントを行い、特に感染症の早期発見および予防に細心の注意を払っている。ステロイド療法に抵抗性の症例には、EBM(Evidence Based Medicine:根拠に基づいた医療)に沿ったエンドキサンパルス療法やシクロスポリンなどの免疫抑制剤の投与、さらに血液中の原因物質を除去する血液吸着療法や血漿交換療法を採用し、個々の症例の年齢、基礎疾患、合併症に加えて社会的背景も考慮した最良の治療選択を行っている

★腎不全の治療として、食事療法と高血圧のコントロールに特に注意している。食事療法は、高カロリー(35kcal/kg)、低蛋白(0.6g/kg)が基本であるが、まず現在の食事内容を評価した上で無理なく実践できるように段階的に行っている。具体的な献立などの説明は、医師の発行する食事箋に基づいて栄養科の栄養士が行っている。高血圧のコントロールは、まず食事の塩分制限と、肥満のある症例では腎機能の程度にあわせた適切な運動療法で生活習慣の是正を図り、薬物療法では、腎保護作用および尿蛋白減少効果が証明されているアンジオテンシン変換酵素阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬を積極的に使用している。これらの治療効果は、血液検査に加えて尿中への蛋白や塩分の排泄量を測定することで評価できるため、定期的に1日蓄尿検査を実施し、常に治療の効果の判定や追加の必要性を検討している

★透析治療は血液浄化療法部と協力した血液透析に加えて、腹膜透析を実施している。どちらの治療法にも長所、短所があるが、十分な情報を提供し話し合いながら治療方法を決定している。血液透析に必要な内シャントの造設や、腹膜透析のドレーンの挿入は、当科にて熟練した医師が行っている

独自の取り組み=透析導入を必要とする患者は現在も増えつづけており、腎機能低下を抑制する新たな治療法の開発が急務である。当科では、広く臨床で使用されているプロスタグランジン製剤の血管拡張および細胞増殖抑制作用に着目し、アンジオテンシン変換酵素阻害薬との併用により腎機能低下速度を有意に抑制できることを見出した。また、高血圧も腎臓を含む様々な臓器に障害を来す重要な疾患であるが、腎臓尿細管でのナトリウム再吸収を調節する新たな蛋白であるプロスタシンを同定し、診断および治療への応用を検討している。

医療設備

超音波診断装置(腎血流ドプラエコーを含む)、CT、MRI、血管造影検査、腎シンチグラフィ、骨シンチグラフィ、Gaシンチグラフィ、血液透析装置(血液濾過透析装置を含む)、血漿交換装置(二重濾過膜血漿交換を含む)、血液吸着療法装置。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

整形外科

分野

整形外科

特色

各分野とも基本的には診療に最大限の重点をおき、良き整形外科医療を追求することによって、研究と教育の充実が図られるものと考えている。理学療法部(リハビリテーション外来)との連携がスムーズなこともあり、肩こり、腰椎椎間板ヘルニアをはじめ、各種整形外科疾患の保存療法にも自信があるところである。各分野ごとに特殊外来を設けており、高度で専門的な医療を行っている。

症例数

外来患者数は1日平均100人、入院ベッド数は42床、手術件数は年間約550例である

肩こり外来=胸郭出口症候群・頸肩腕症候群・肩こり・ルースショルダーに対し、KSバンド(熊本大学式肩甲骨装具)による装具療法と筋力トレーニングを行い、優れた臨床成績を残している

股関節外科=末期変形性股関節症に対する人工股関節置換術を中心に手術を行い、優れた臨床成績を残している。日本人に適した国産の人工股関節の開発と臨床応用を行っているのが特徴である。最近は、人工股関節再置換例が増加している

膝関節外来= 膝・足関節疾患を対象に診療・治療を行っている。特に膝関節靱帯損傷や半月損傷などのスポーツ外傷が多く、これらに対し関節鏡視下靱帯再建術や鏡視下半月縫合術/切除術などを行い、また骨軟骨損傷に対しても関節鏡を用いた低侵襲手術を行い、良好なスポーツ復帰を獲得している。膝蓋骨亜脱臼症候群に対しては、従来の脛骨粗面内方移動術に加え、内側膝蓋大腿靱帯再建術を行い良好な膝蓋骨の安定性が得られている。また変形性膝関節症に対しては鏡視下郭清術や片側仮骨延長法を用いた脛骨骨切り術により、さらに関節リウマチなどを含め、進行した膝関節破壊に対しては人工膝関節置換術により関節機能の再建をはかり良好な長期成績を得ている。また、足関節疾患では距骨滑車骨軟骨損傷やimpingement exostosisなどに対する足関節疾患に対する関節鏡視下手術を行い、症状の改善が得られている

脊椎脊髄外科=頸椎症、椎間板ヘルニア、脊柱管狭窄症などの変性疾患や靱帯骨化症、側彎症を主とする脊柱変形の矯正、脊椎の悪性・良性腫瘍、結核性脊椎炎などの感染症、脊髄腫瘍などあらゆる脊椎脊髄疾患を対象とした手術を行っている。病院の性質上、難治性疾患や大規模の手術を要するものが主であり、年間手術件数は約160例である。脊髄およびその周辺の精密な手技が必要とされるため、ほとんど顕微鏡下のマイクロサージャリーとなる。また2009年4月からは内視鏡下手術を導入し、低侵襲手術も行っている

骨粗鬆症外来=高齢化社会を迎え、骨粗鬆症の増加と、それに起因する脊椎圧迫骨折や大腿骨頸部骨折を含めた各種骨折は大きな社会問題となっている。まず初診時に骨塩量の測定を行うとともに、X線撮影、血液検査、尿検査等各種検査を行い、骨粗鬆症が認められたら、薬物療法を中心に治療を行っている。その後も、薬物治療を行いながら、定期的に骨塩量の測定、血液検査、尿検査、X線撮影を行っている。特に、破骨細胞活性のマーカーである尿中のNTxを測定することにより、治療効果の判定を行っている

肩関節外科=肩関節疾患に対して最小侵襲の鏡視下手術を行っているのが特徴である。鏡視下腱板修復術・反復性肩関節脱臼に対する鏡視下バンカート修復術・スポーツ傷害肩の鏡視下治療・肩関節拘縮の鏡視下治療など、肩関節鏡視下手術を中心に手術を行い優れた臨床成績を残している。また、変形性肩関節症・上腕骨頭壊死・外傷後肩関節症に対する人工肩関節置換術を行っている

腫瘍外科=四肢・体幹に生じるすべての骨・軟部腫瘍を対象としている。特に、原発性悪性腫瘍(肉腫)に対しては、早急な局所・全身検索、診断確定の後、治療方針を決定し術前化学療法や手術的治療を施行し、優れた成績を得ている。また近年、侵襲の無いMRI新手法を用い(1)良・悪性腫瘍の鑑別、(2)骨肉腫やユーイング肉腫をはじめとする悪性骨腫瘍にする術前化学療法の効果判定などにおいて臨床研究を行い、実際の医療現場にも応用しつつある。患肢温存を基本とする腫瘍広範囲切除術・機能再建術においては、血行再建、神経移植、血管柄付き骨移植、筋皮弁などの手法を用い、優れた機能を獲得しており、加えて術後の機能障害を最小限に抑えるため、術前放射線療法などを組み合わせた縮小手術にも取り組んでいる。さらに、続発性腫瘍(転移性腫瘍など)に対しても、患者のQuality of Life(QOL:生活の質)を重視し、積極的に手術的治療を取り入れている。年間手術症例数は、延べ150例である

手・肘の外科=手および前腕に生じる末梢神経麻痺によって、手指の筋力低下や変形を訴える患者さんに対して、神経剥離や腱移行を行い治療している。また、手指の関節変形による日常の痛みを訴える患者さんも多く、関節形成術を行っている。骨折や、腱断裂、指のこわばりの原因となる腱鞘炎の治療も数多い。手関節における難治性偽関節に対して血管柄付き骨移植により手術を行い治療している。また、肘関節の外科では、使い過ぎや骨折後の変形によって肘の動きが制限されている患者さんに対して、肘関節鏡を用いた低侵襲手術に取り組んでいる

小児外科= 先天性内反足や股関節脱臼に対しては1次スクリーニングを行い、専門スタッフによる矯正ギプスや装具の装着、観血的治療を行っている。また、先天性骨系統疾患に伴う脚長差や病的低身長に対し、骨延長術を用いた脚長差の補正や身長の増加を図っている。さらに小児期のスポーツ障害で多くみられる肘関節や膝関節などの離断性骨軟骨炎に対しては、関節鏡視下骨穿孔術/骨接合術、関節切開下に骨移植を併用した骨接合術などを行い、良好なスポーツ復帰を得ている

リハビリテーション外来=当院にはリハビリテーション医学会認定のリハビリテーション科専門医が5人おり、うち2人がリハビリテーション部専任医として、理学療法士8人、作業療法士4人、言語聴覚士2人とともに、特定機能病院の立場から、急性期の入院患者を中心にリハビリテーションを施行している。対象疾患は骨・関節疾患をはじめ、脳血管障害、神経・筋疾患、小児疾患、呼吸・循環器疾患、熱傷など全診療科におよび、2008年の施行単位数は41,289に達する。病院の性格から、急性期、重症症例が多く、全身管理のための各種モニタリングを併用しての訓練が多く、ICU/CCUでのベッドサイドリハも積極的に行っている。当院リハの特徴として、装具治療がある。従来の装具・義足に加えて当院独自に開発した装具・装置も多く、例えば各種股関節装具(ヒッププロテクター:大腿骨顆部坐骨支持式股関節免荷装具、ヒッププロテクターII、G-アシスト、スタビラックス)、KSバンド、KU-half AFO(DA type、DDA typeなど)、自行器Kappo、体幹支持式杖、和室用車椅子「楽のり君」、上肢(肘・肩関節)用CPMがあり、臨床効果を得ている。

医療設備

MRI、CT、MDCT、PET、骨塩量測定装置(DEXA:橈骨用、全身用)、超音波検査装置(エコー)、骨シンチグラム、筋力測定装置(Cybex、KIN-COM)、レーザー治療機器、リハビリテーション施設、無菌室などを備えている。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

婦人科

分野

産婦人科

特色

乳幼児期、思春期、性成熟期、更年期、老年期と女性のすべてのライフステージにおける婦人科臓器(外陰、膣、子宮頸部、子宮体部、卵巣、卵管、腹膜、胎盤)の腫瘍性疾患、不妊・内分泌疾患、婦人科領域の感染症、更年期・老年期の加齢に伴う疾患について、全人的診療ができるように努めている。外来では、細分化された専門外来を開設し、細かな対応を行うことが可能である。また、入院診療においても、婦人科・産科の両病棟医長がそれぞれ責任者となり、各主治医が入院患者の周産期・周術期管理などに関する細やかな対応を行っている。

症例数

2008年度の産科・婦人科の両科をあわせた外来受診者総数は14,809人(初診1,192人 再診13,617人)であり、入院患者数は産科593人、婦人科1187人であった。平均在院日数は、産科11.7日(院内全診療科中第3位)、婦人科9.5日(同第1位)であった

婦人科悪性腫瘍=当科を受診する婦人科がん患者総数は増加傾向が著しく、2007年には200例の婦人科悪性腫瘍患者に対する治療を行った。婦人科悪性腫瘍に対しては、手術、化学療法、放射線療法、化学放射線併用療法、免疫療法を総合的に駆使し放射線診断・治療科、外科や病理部の協力を得て対応している。QOLを第一に考え、特に骨盤リンパの節郭後に生じる下肢のむくみ(リンパ浮腫)に対しては、リンパマッサージなどによる積極的な予防策を講じ効果を上げている。また、術後の補助化学療法では外来化学療法センターでの外来治療を積極的に取り入れている。さらに若年者においては将来の妊娠・出産が可能となるように妊孕性の温存を考慮した治療を行っており、妊娠中に判明した婦人科疾患については周産期分野のスタッフと密接に協力している。その結果、当科で加療を行った症例数に関しては、2006年の集計結果によれば、進行子宮頸癌症例数が全国256施設中第10位(九州内25施設中第1位)であった。子宮体癌は九州内25施設中第7位、卵巣癌は九州内25施設中第2位と全国屈指の症例数を有することが明らかとなった。治療成績に関しては、子宮頸癌における5年生存率は0〜Ia期が100%、Ib期が89%、II期が81%、III期が45%、IV期が23%である。子宮体癌5年生存率はIa期とIb期が100%、Ic期が84%、II期が95%、III期とIV期が64%である。卵巣癌における5年生存率はIa期とIb期は100%、Ic期は81%、II期は87%、III期は45%、IV期は41%で、特に各施設の治療成績の評価となるIII期において世界トップクラスの治療成績を収めている

腹腔鏡・子宮内膜症・子宮腺筋症=腹腔鏡下手術は不妊症の診断・治療に不可欠の技術となっているが、当科では1986年より腹腔鏡下手術を導入しており、子宮内膜症をはじめとする婦人科良性疾患や子宮外妊娠に対する外科的治療の第一選択として行っている。また、子宮内膜症に対しては、他施設での加療の後に患者団体である子宮内膜症協会から紹介され受診する例が増加している。このような症例の中でも、腸管合併切除や、尿管切除を要する例では、消化器外科や泌尿器科との連携によって病巣の完全摘出を行うことを基本としている。外科的治療の他にも、坐薬に加工した結果副作用の殆どないダナゾール局所療法を考案し良好な結果が得られており、新規治療薬の開発のため臨床試験も進行中である。子宮腺筋症に対しては積極的な手術療法の導入と術後早期からの妊孕性向上策の導入により約半数の症例が妊娠に至っている

更年期、老年期医療=ほてりやイライラといった卵巣機能低下に伴う更年期症状を有する例には、薬物療法のみならず、更年期カウンセラーの資格を持つ保健学科教員、千場直美助産師によるカウンセリングを受けることもできる(要予約)

女性医師外来・思春期外来=最近では、月経異常や月経困難症を訴え思春期女性や未婚女性が来院し、女性医師外来が対応・経過観察し、QOLの改善が得られている例が増加している

周産期=外来では超音波専門医の資格を有する医師(2人)により、経腹超音波断層法による胎児精査が行われており、胎児奇形が疑われる症例の紹介例が多い。必要な症例については羊水穿刺により胎児染色体分析が行われる。出生前診断をはじめとした方針決定にあたっては、複数の診療科に属する臨床遺伝専門医のチームによって遺伝カウンセリングが行われ、十分なインフォームドコンセントのもとに夫婦の自己決定が最大限尊重される診療を行っている。周産母子センター(産科病棟)における入院数・分娩数は増加傾向にあり、2008年の分娩数は261例で、134例の母体搬送を受け入れた。分娩数に占める早産の割合も漸増しており、2008年の出生児数は269例で、このうち低出生体重児が85例、極低出生体重児が23例であった。センター内には、6床の新生児治療室(NICU)と6床の継続治療室(GCU)を備え、より高いリスクの妊婦さんや新生児への対応を行っている。NICUでは、新生児学講座三渕浩特任教授を中心に小児科、発達小児科、小児外科などと連携して、24時間体制でハイリスク新生児の管理を行い、2008年のNICU入室児数は104例に達した。この結果、病床稼働率が100%を越え、病床は慢性的に不足する事態となったため、NICUは12床に増床され、またMFICUが6床新設される予定である。また、産婦人科、NICU、精神科を有する県下で唯一の医療機関として、精神疾患合併妊娠を積極的に取り扱っており、産後うつに関しては、当院こころの診療科北村俊則教授との密接な協力の下、早期発見に努めているほか、妊娠中からの関わりを通して発症予防に努めている

生殖医療=生殖医療(不妊症における人工授精・体外受精胚移植・顕微授精)の領域については、自然妊娠の可能性を最大限に向上させるよう系統的かつ個別化した診療を行っている。一方、生殖補助医療(ART)の領域では、1987年から体外受精胚移植(IVF-ET)、1989年から胚凍結、1994年から顕微授精(ICSI)を開始し、2002年からは睾丸からの回収精子による顕微授精(TESE-ICSI)を導入し、難治例・高年齢症例を含めて20~30%の妊娠率が得られている。また、火曜・木曜の午後には不妊分野認定看護師(本田万里子助産師)による不妊相談を無料で行っている(要予約)ほか、不妊分野認定看護師、胚培養士でチームを組んで診療にあたっており、体外受精・胚移植、顕微授精といった生殖補助技術を用いて年間100周期ほどの胚移植を行っている。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

小児外科・移植外科

分野

小児外科

特色

九州における小児外科診療の拠点の一つであるとともに、小児及び成人に対する生体肝移植実施施設として重要な地位を占めるに至っている。患者さんへ優しく、かつ先進的な医療の提供をモットーとしている。

症例数

同施設での生体肝移植の総症例数は、2009年7月までで、244例となっており、最近は年間35例前後で推移している。生体肝移植の対象疾患は、小児では胆道閉鎖症が主体であるが、代謝性疾患や劇症肝不全なども含まれる。成人では、C型B型などのウイルス性肝硬変やそれに付随する肝臓癌が多く、その他、原発性胆汁性肝硬変、劇症肝不全などがある。また、地域特性として、FAP(家族性アミロイドポリニューロパシー)の患者さんも多い。FAP患者さんの肝臓を重症末期肝疾患の患者さんに移植するいわゆるドミノ肝移植も、すでに11例実施している。劇症肝不全では、生体肝移植を緊急に施行する体制を整え、院内外の肝臓内科医との緊密な連携をとっている

★肝移植の治療成績としては、成人症例の1年生存率が85%となっている。生体肝移植のドナー術後合併症としては、死亡や後遺症例は無く、再開腹3例、胆汁漏発生率5%となっている

★小児外科の年間手術症例数は約100例で、胆道閉鎖症、胆道拡張症などの肝胆道系疾患、新生児外科疾患。そけいヘルニアなどの一般疾患などが主なものであり、また小児悪性腫瘍では、小児内科と連携して、化学療法などを含めた集学的治療を行っている。

医療設備

CT(ヘリカルCT、高分解能CT、アンギオCT)、MRI、PET、シンチグラフィ、放射線治療装置(外照射、内照射)など、新装された中央診療棟を中心に、大学病院として必要な先端的医療設備がフル稼働している。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

眼科

分野

眼科

特色

県内外の眼科医と緊密な病診連携を行い、必要な治療を迅速にかつ適切に行えるように医局をあげて取り組んでいる。また、視機能の保持、向上を目指して、新たな治療法の開発、病因の究明に積極的に取り組んでいる。

症例数

年間外来患者数約25,000人、初診患者数約2,000人、総手術件数約1,200件である。病床数は38床。病院全体で病床を流動化し、急患に対しても空床を利用することで、受け入れ体制を整えている

緑内障 = 年間約150例の緑内障手術を行っている。線維柱帯切開術と線維柱帯切除術を中心に施行しているが、原因疾患、病期、年齢などを慎重に検討の上、術式を決定している。特徴は、血管新生緑内障(22%)や、ぶどう膜炎による緑内障(15%)など難治症例が非常に多いことで、視機能を守るために、抗VEGF抗体の術前注射など、現在可能なすべての方法を駆使して積極的に治療を行っている。臨床研究では病型ごとの手術成績と予後因子の検討を行うとともに、房水組成を調べることで病態の解明を試みている。基礎研究では、発達緑内障の動物モデル、ROCK阻害剤の房水流出路に与える影響、緑内障における酸化ストレスの関与を解析し、将来の治療に結び付けるべく研究を行っている

網膜硝子体 = 年間約600件の網膜硝子体手術を手掛けている。網膜剥離、増殖性硝子体網膜症などの失明につながる網膜硝子体疾患の早期手術、早期社会復帰を目指して、常に手術に対応できる設備を整えている。さらに23ゲージシステムの適応を広げることで、より低侵襲の手術となるよう取り組んでいる。また黄斑円孔、黄斑上膜、網膜静脈閉塞症による黄斑浮腫加齢黄斑変性症などの黄斑疾患に対する手術治療だけでなく、抗VEGF抗体注射、トリアムシノロン注射、光線力学的療法など、手術以外の治療も積極的に行い、視機能の改善、温存を図っている。また糖尿病網膜症に関しては、その予防、管理、治療全般に及ぶ診療に積極的に取り組んでいる。早期の治療は血糖管理にあり、当院代謝内科と綿密な病診連携体制のもと発症進行予防に努めるとともに、新たにその予後因子について共同研究を進めている。県内外より集まる進行した難治症例に対しては、レーザー治療や硝子体手術の外科的治療に習熟した専門スタッフが診療にあたっており、最新の診療機器を駆使し、良好な治療成績を得ている。基礎研究としては、網膜の再生医療、神経保護医療、血管新生のメカニズムの基礎研究に取り組んでいる

白内障 = 年間約900件の白内障手術を行っている。インジェクターを用いた人工レンズ挿入により、小切開の白内障手術を目指している。当院には毛様小帯脆弱例や水晶体亜脱臼例など、高度な設備と技術が必要な白内障症例が県内外より集まり、その加療を行っている。また全身疾患を伴い、麻酔科医を含め他科との綿密な連携が必要な症例についても、厳重な管理のもとに手術を行える環境を整備している

神経眼科・斜視弱視 = 視能訓練士との協力体制のもと、視機能発達・向上を目指して治療にあたっている。全身疾患を伴う疾患に対しては神経内科、脳外科、内分泌内科、発達小児科などと連携して治療に取り組んでいる。またロービジョン外来も行い、残存視機能の活用にも取り組んでいる。

医療設備

色素レーザー、ヤグレーザー、OCT、HRT、UBM、各種エコー、蛍光眼底装置など、先端医療を行うのに必要な器材を揃えている。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

歯科口腔外科

分野

歯科口腔外科

特色

地域の中核病院として口腔顎顔面領域の全ての疾患の診断と治療を行っており、そのほとんどが他医院からの紹介患者で占められている。特に、口腔癌に関しては中心をなす診療科として、その治療ならびに術後の機能再建を行っている。また、顎変形症をはじめ、外傷などの各種手術ならびに粘膜疾患などについて高度先進的治療を行っている。最近、注目されてきた、口腔乾燥症(ドライマウス)に関してはドライマウス研究会の講師も努め、最新の診断、治療を行っている。

症例数

2008年度の初診患者数2,928人、中央手術室での手術件数237例、外来小手術件数1,688例

口腔悪性腫瘍=90人(同年初診)。口腔扁平上皮癌については初期のものは手術による切除術を、進行例については術前治療としてセルジンガー法による超選択的動注化学療法(当院放射線科にて実施)か放射線化学療法施行後に、腫瘍の切除術を行っている。また、術後の機能回復、QOL向上のため、遊離組織移植(前腕皮弁、腹直筋皮弁、肩甲骨皮弁等)による軟組織、硬組織の即時再建術を行っている。その他、唾液腺癌や肉腫については外科的切除を主体にして化学療法との併用治療を実施している。また、2008年より口腔癌の免疫療法も開始している。なお、悪性腫瘍の治療に際しては、全例各種画像診断ならびに免疫組織検査を行い、悪性度を判定してその治療内容を決定している。これら患者の5年累積生存率はstage I 88.9%, stageII 82.8%, stageIII64.9%, stageIV 66.2%, Total 73.9%である

口腔良性腫瘍(歯原性、非歯原性)=170例(同年初診)。治療法は外科的切除が主体であるが、エナメル上皮腫については機能温存を第一に考え開窓療法を主体に治療して良好な結果を得ている

嚢胞性疾患(歯原性、非歯原性)=158例(同年初診)。非歯原性のもの(唾液腺粘液嚢胞、類皮嚢胞、甲状舌管嚢胞など)については摘出術を、歯原性のものについては歯牙、顎骨の温存を第一に考え開窓療法を主体に治療している

顎変形症=年間約30-40症例の治療を行っている。外科的矯正手術は術中の出血が予想されるため術前に自己血貯血を行い、同種血輸血は行わないようにしている。手術は下顎矢状分割法ならびに上顎骨のLeFort Iの骨切りが主体であるが、適応症例に対しては下顎枝垂直骨切りや歯槽骨骨切りも行っている。関節頭の位置はレポジショニングプレートにて決定し、下顎骨の固定はチタン性ネジで上顎骨の固定はチタンプレートにて行っている。また、最近は仮骨延長装置による顎骨の延長術も行っている

顔面外傷(顎顔面骨骨折、歯牙破折、軟組織外傷)=58例(同年初診)。骨折の治療はミニプレートによる観血的治療を主体に行っている。歯牙破折に対しては歯牙の固定、再植を行っている

顎関節症=180例(同年初診)。顎関節診断治療プロトコールに従って系統的に検査治療を行っている。治療法としては症状にあわせて薬物療法、スプリント療法、理学療法、徒手による関節円板の整復、関節腔内洗浄などを行っている

口腔感染症=軽度症例から紹介による重症症例まで全身管理を含めて治療している。全身合併症を有する患者に対しては当院救急部と連携して治療している

口腔粘膜疾患=204例(同年初診)。前癌病変、アレルギー疾患、自己免疫疾患(シェーグレン症候群、その他)など各種の疾患に対して病理組織検査、免疫組織検査や血清検査を行い先進治療を行っている

口腔乾燥症(ドライマウス)=年間105例の口腔乾燥症の患者に対して原因診断ならびに治療を行い、さらに、口腔管理の指導を行っている。

医療設備

MRI、CT、PET、カラードプラ超音波エコー、リニアック、レーザーメス、マイクロ用顕微鏡、マイオモニター、口腔CCDカメラなど。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

代謝・内分泌内科

分野

糖尿病内分泌内科

特色

糖尿病および内分泌代謝疾患を専門的に診療している。糖尿病に関しては、診断から治療、合併症管理の専門的対応を行うとともに、特殊な症例に対しては、人工膵島を用いた検査・治療を行っている。内分泌代謝疾患に関しても、診断から治療まで、関連各科との連携も含めて専門的診療を提供している。日本糖尿病学会、日本内分泌学会認定教育施設。

症例数

外来患者数は約1,400人。糖尿病を中心とした脂質異常症・肥満症・高尿酸血症などの代謝疾患、および甲状腺疾患、副甲状腺疾患、副腎疾患などの内分泌疾患の専門診療を行っている

★糖尿病については、病型・病期に応じた適切な治療の提供を目指しており、特殊な病型については遺伝子解析も含めた診断を行っている。大学病院という特質を生かし、集学的管理を必要とする糖尿病性昏睡などの救急疾患や、インスリンの導入・治療が必要な症例、合併症が進行し一般医院では管理が困難と考えられる症例、糖尿病合併妊娠や1型糖尿病など専門的加療を要する患者を積極的に受け入れている。糖尿病の合併症については外来診療時の評価の他に、合併症評価専用の精査入院コース(3泊4日)を開設し、クリニカルパスを利用した細小血管合併症検査(神経障害検査、眼底検査、腎機能検査)、大血管症検査(心臓MDCT、頚動脈超音波検査)を実施し、総合的な評価を行っている。合併症が進行した患者については、本院の他診療科と連携し適切な治療を行う。虚血性心臓病に対しては、循環器内科において経皮的冠動脈拡張術(PTCA)やステント留置術を、糖尿病網膜症は当院眼科で光凝固術、硝子体手術を行う。糖尿病性腎症による末期腎不全に対しては、腎臓内科、血液浄化部と連携してシャント作成から透析導入まで適切な治療を提供している。血糖コントロール不良の患者については、2週間のクリニカルパスに従う教育入院により、食事・運動指導、合併症検査、治療方針の決定を行っている。また、医師、看護師、管理栄養士が分担して糖尿病教室を含む糖尿病教育を行っている。糖尿病協会熊大分会は、定例会を毎月第3水曜日午後1時30分より開催し、眼科、神経内科、腎臓内科、整形外科など関連各科の講師や管理栄養士による講義も含めた勉強会を行っている。会員数は現在80人。当院内の手術前および周術期の血糖管理も積極的に行っており、各科との共診により合併症を増悪させずに可及的速やかな血糖コントロールを行うよう努めている。また特徴的な診療として、ベッドサイド型人工膵島を利用した検査、治療があり、インスリン抵抗性の正確な評価による糖尿病の病型診断やインスリン抵抗性改善薬の適応決定といった利用の他、1型糖尿病患者におけるインスリン必要量の予測や、インスリン持続注入療法を行う患者のインスリン注入率の設定などに応用し、より質の高い医療の提供を心がけている

内分泌疾患=下垂体、甲状腺、副甲状腺、副腎などの疾患に対し専門診療を行っている。甲状腺疾患については外来診療を原則とし、甲状腺クリーゼなどの重症例は専門的な入院加療を行う。バセドウ病眼症については、眼症クリニカルパスを用いてステロイドパルス療法と球後照射を組み合わせた加療を行う。甲状腺腫瘍診断のための穿刺吸引針生検を外来で実施しており、外科治療適応症例については当院乳腺・内分泌外科、頭頸部外科と連携して対応している。下垂体腫瘍・副腎腫瘍、膵内分泌腫瘍においては、選択的静脈サンプリング゛を脳神経外科・放射線科と連携して施行し、局在診断を行っている。近年増加してきた副腎偶発腫に対しては、外来検査・入院検査を組み合わせた偶発腫クリニカルパスを用いて機能診断と治療方針決定を行い、機能性腫瘤に対しては、当院泌尿器科と連携して腹腔鏡手術を含む治療を提供している。機能性副腎腫瘍や膵腫瘍(インスリノーマ)は外科治療が原則であるが、手術不能例においては内服薬や注射薬による保存的ホルモン抑制療法を行っている。また多発性内分泌腺腫症を代表とする家族性内分泌疾患については、遺伝子解析による診断も行っている。

医療設備

ベッドサイド型および携帯型人工膵島、超音波検査、眼底検査、血圧脈波診断装置(ABIおよびPWV検査)。その他に当院は特定機能病院としての多くの設備(MRI、CT、PET-CT、シンチグラフィ、X線骨量測定装置、神経伝導速度測定器、その他)を有する。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

神経内科

分野

神経内科

特色

正確な診断に基づき、現在国内外で行いうるベストの治療法を選択し、治療成績の向上を図る。また筋ジストロフィーや運動ニューロン疾患など、今日根治療法がない難治性神経疾患については、原因究明の基礎的研究(モデル動物の作成、遺伝子導入など)を行いながら、患者のQOLを考えた最善の医療を目指して努力している。日本神経学会教育施設。

症例数

当科の年間外来患者数は約12,000人、入院ベッド数は26床で、年間の入院患者数は約400人。平均在院日数は26日。主な疾患の内訳は、脳血管障害・運動ニューロン疾患・パーキンソン病・脊髄小脳変性症(SCD)などの変性疾患が最も多く、ついで重症筋無力症(MG)・多発性筋炎(PM)・皮膚筋炎(DM)などの筋疾患、ギラン・バレー症候群(GBS)・慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)・家族性アミロイドーシス(FAP)などの末梢神経障害、脱髄疾患、髄膜炎、脳炎、てんかん、などが上位を占めている

変性疾患=ALSについては詳細な電気生理学的検討の後、患者・家族へ段階的インフォームド・コンセント(staged informed consent)を行い、病状に応じた治療法(呼吸不全に対するBiPAP、気管切開、在宅人工呼吸管理、胃瘻造設など)を選択している。パーキンソン病には数多くの治療薬が選択可能であり、年齢、罹病期間、症候の程度や内容、副作用に応じて使い分けをしている。また脳神経外科との協力により脳深部刺激による治療も試みている。SCDでは遺伝子異常に基づく診断が必要になる場合もあるため十分な説明の上で検査を行い、タンドスピロンやTRH誘導体による治療を試みている。これらの神経難病に対しては、県内の病院ネットワークの基幹病院として長期療養や在宅ケアのアレンジを行っている

筋疾患=MGについては原則として拡大胸腺摘出術とステロイド剤の隔日投与、効果不十分な場合には免疫抑制剤の併用、PM・DMについては病型に応じてステロイド剤のパルス療法連日経口投与を実施したり、隔日大量療法を選択するなど最大限の効果発現と副作用防止を主眼とする治療を行っている

末梢神経障害=GBSに対しては重症例では免疫吸着や二重膜濾過などの血液浄化法あるいは免疫グロブリン大量静注法などを実施。CIDPでは免疫グロブリン大量静注法とステロイド療法を主体とし、病型に応じた治療を行っている。FAPに対して自律神経機能検査を含めた系統的な評価を行った上で、小児外科と連携して肝移植を施行している

脳血管障害=虚血性脳血管障害を対象として救急部、脳外科、放射線科との連携により、迅速かつ的確な臨床病型診断に基づいた積極的な治療(血栓溶解療法など)を行っている。血管内治療専門医による血管内治療、クリニカルパスに則った系統的治療と急性期リハビリテーションを施行。病型診断にはCT、MRI、脳血管造影、脳血流SPECTに加え、神経超音波検査(頸部血管超音波検査、経頭蓋超音波検査、経食道心エコー検査など)を積極的に行い、確実な二次予防方針を決定し、病状が安定した時点で専門病院へ転院し、回復期リハビリテーションを行う地域完結型診療態勢を構築している。近年、増加している頸動脈病変に対しては頸動脈超音波検査でのスクリーニングを行い、詳細な脳循環動態評価の後、頸動脈ステント、頸動脈血栓内膜剥離術の適応を決定している

髄膜炎・脳炎=MRI、脳血流SPECTでの病巣評価の後、中央検査部と協力し、ヘルペスウイルスDNAをはじめとする迅速な病原同定の上で治療を行っている

脱髄疾患=多発性硬化症の急性増悪時にステロイドパルス療法を行い、再発寛解を繰り返す症例には積極的にインターフェロンの導入を行っている

★片側顔面けいれん、Meige症候群、痙性斜頸に対してはボツリヌス毒素(Botox)による神経ブロック治療を行っている。痙性斜頸に対しては、神経超音波検査を用いた目的筋の確認の上で治療を行っている

★受診に際しては、初診時には原則として紹介状が必要。初診・再診とも予約が望ましい(内科外来受付:☎096-373-5540、外来予約センター:☎096-373-5973)。

医療設備

CT 3台(multidetector CT、herical scan、3D-CTA)、MRI 4台(diffusion、perfusion、MRA、MRS、functional MRI)、SPECT 2台(CT fusion)、脳血管造影2台(DSA、3D)、神経超音波2台(carotid duplex、TC-CFI)、筋電図(NC study、針筋電図、SEP、MEP)、脳波、重心動揺計、瞳孔解析装置、遺伝子分析装置。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

脳神経外科

分野

脳神経外科

特色

脳腫瘍、脳血管障害、頭部外傷、先天性疾患(奇形など)、顔面痙攣、三叉神経痛、脊椎・脊髄疾患、てんかん、感染症、パーキンソン病や不随意運動などを治療している。臨床の分野では、脳血管内手術、術中ナビゲーションシステム、神経内視鏡、電気生理学的モニタリング、定位脳手術機器、PET(陽電子放射断層撮影)、術中蛍光診断法などの最新の機器と治療法を導入し、各症例に応じた最良の治療法を選択できる体制になっている。特に神経膠腫、脳下垂体腫瘍に関しては国内有数の症例を治療しており、教育関連病院との密接な連携により、横断的な治療が可能となっている。基礎研究分野では、脳腫瘍、脳血管障害、小児脳神経外科、機能的脳神経外科、脳血管内治療の5つのグループに分かれて研究を行っている。臨床現場で生じた疑問点を基礎研究で解明し、研究結果を臨床に応用するトランスレーショナルリサーチを目指している。我々のモットーは「今日の患者に最善をつくし、明日の患者さんのための研究を怠らない」ということであり、安全かつ、安心な治療法を提供できるよう日々研鑽を積んでいる。

症例数

年間の外来初診患者数は約720人で、入院患者は新患380人ほどである。病棟には常時30人前後が入院しており、病床稼働率は90%前後を維持している。年間の手術件数は約350例で、うち約190例が脳腫瘍、100例が脳血管障害である。不随運動・パーキンソン病の手術は年間20人前後、内視鏡下下垂体手術は30-40人に手術を行っている

脳腫瘍治療=「術中ナビゲーション装置」、「術中脳腫瘍蛍光診断法」、意識を残したまま脳腫瘍を取り除く「覚醒下開頭術」を導入することで、言語障害や半身不随などといった後遺症を出さずに、確実に腫瘍を取り除くことが可能となった。術後の放射線療法、化学療法を組み合わせた集学的治療を行うことで、脳腫瘍の治療成績が向上している

下垂体腺腫=「神経内視鏡」を用いた内視鏡単独経蝶形骨洞的腫瘍摘出を導入し、摘出率の向上と、術後の痛みの軽減が得られている

脳血管障害治療=脳血管のバイパス術を組み合わせた脳動脈瘤の手術や、「脳血管内治療」による動脈瘤塞栓術の導入とウロキナーゼの髄腔内投与により脳血管攣縮を予防することで良好な成績をあげている。2005年10月より「t-PA」を用いた発症3時間以内の超急性期脳梗塞の治療も24時間対応可能な体制を取っている

パーキンソン病=脳深部刺激術を導入し、薬剤のみでは効果が不充分なパーキンソン病患者さんへの朗報となっている。この方法は、ジストニア、振戦、脳出血後の視床痛、不随意運動などにも適応がある

小児の水頭症=「神経内視鏡」を導入し、低侵襲手術が行えるようになり、中枢神経系の発育、発達を手助けすることができるようになってきている。

医療設備

CT、3D-CT、MRI、脳血管撮影装置、術中脳血管撮影装置、脳血流測定装置、誘発電位、超音波診断装置、定位脳手術装置、術中ナビゲーション装置、神経内視鏡、手術用超音波吸引装置、PET。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

画像診断・治療科

分野

放射線科

特色

画像診断ならびにインターベンショナル・ラジオロジー(IVR、画像誘導下低侵襲治療)のすべての領域で国内外で最高の診療を行っていることを自負している。スタッフは全員が日本医学放射線学会の専門医で、他関連学会の指導医や認定医の資格も持っている。放射線診断はほとんどの検査を放射線科が担当し、他科とも定期的にカンファレンスを行っている。入院病棟があり、通院以外に特殊検査やIVRにおける入院治療も可能である。

症例数

画像診断部=08年度の検査件数はCT:18,500件、MRI:10,800件、超音波6,000件、その他多数の単純X線検査、造影検査、血管造影検査、核医学検査を行っている。特にCTはマルチスライスCTを4台有し、高度の三次元画像診断を行っている。またMRIでは3テスラのMRIを3台、1.5テスラのMRIを1台有している。消化管検査では透視、注腸、内視鏡および三次元CTによる仮想内視鏡を行っている。また粘膜下切除術などによる早期胃癌、食道癌の治療も行っている。画像の情報化も進めており、画像データはすべて電子データで保管されている

RI診療部=RI診療施設では、PET-CTを初め、ガンマカメラを用いた通常の核医学検査、甲状腺疾患の治療およびin vitro検査を行っている。核医学検査では、先駆的にCTと核医学が融合したシステムが導入されている。核医学検査、全体の検査数はPET-CTが1,200件以上、SPECTが年間2,500件以上で、、骨、ガリウム、心筋、脳血流の検査を行っている。治療用ベッドは熊本県下で唯一2床用意しており、臨床に導入される新しい治療用核種による診療にも十分対応可能である

画像誘導下低侵襲治療(IVR)部=08年度の心臓を除いたIVRおよび低侵襲治療は405件、また、血管造影検査およびイメージガイド下生検は517件であり、08年度は総数922件を画像誘導下低侵襲治療(IVR)部で行っている。同部門には日本IVR学会専門医が3名在籍しており、高度な治療に取り組んでいる。その主な件数は悪性腫瘍(肝癌・頭頸部癌など)に対する動脈化学塞栓術および動注療法が247件で、日本癌治療認定機構教育医の下、的確な治療を行っている。肝癌・腎癌に対するラジオ波焼灼術は塞栓術を組み合わせ局所制御95%以上であり、本邦でも最高レベルにある。肺癌・転移性肺癌に対するラジオ波焼灼術も高い局所制御を残している。また、CTガイド下生検は366件、その技術を応用したドレナージなどの治療も数多く、日本でも有数の件数を行っている。また、大動脈ステントグラフト挿入、腎動脈や鎖骨下動脈を含めた血管形成術は59件で、ステントグラフト指導医も在籍している。特に最近症例が増加しているのはIVRである。ステント・グラフトを用いた大動脈瘤の治療、動静脈奇形の塞栓術、ステントを用いた血管形成術などで、低侵襲治療では肝癌・腎癌・肺癌などラジオ波焼灼術が増加している。http://www.kumadai-radiology.com/

医療設備

MRI 4台、CT 4台、IVR-CT 2台等。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

放射線治療科

分野

放射線科

特色

2009年8月現在、2台の高エネルギーX線照射装置(リニアック)が稼働しており、多様な悪性腫瘍(癌)に対する放射線治療を総合的に行っている。治療計画専用CTと、3種類5台の治療計画装置により、高精度の放射線治療計画を行っている。最新の診断画像と放射線照射技術を駆使して、放射線を病巣に高度に集中させ、可能な限り正常組織を守る高精度放射線治療を実践している。強度変調放射線治療 (IMRT)、体幹部定位放射線治療 (SRT)、呼吸同期照射 (4DRT)、画像誘導放射線治療 (IGRT)などの新規治療技術をいち早く臨床応用し、日常的な治療に導入している。また、高線量率小線源治療システム(RALS)を備えており、子宮頸癌や胆管癌に対する腔内照射を積極的に行っている。

症例数

2008年度の新規放射線治療患者数は587 例であり、2004年度(416 例)以降、年間10% の割合で増加している。幅広い領域の悪性腫瘍を対象としており、2008年度は、脳腫瘍52例、頭頸部腫瘍145例、食道癌36例、肺癌79例、乳癌86例、肝胆膵腫瘍64例、子宮癌45例、前立腺癌21例の治療実績がある。頭頸部腫瘍、肺癌、食道癌、子宮頚癌などでは、術前照射、根治的照射のいずれにおいても、化学療法の同時併用にて、良好な成績をあげている。また、呼吸同期照射を併用した肺腫瘍に対する定位放射線治療、上咽頭癌、前立腺癌を対象とした強度変調放射線治療は、現在症例が急増しており、良好な効果が認められている。肝臓癌、食道癌などにおいては、癌の機能画像であるFDG-PETを治療計画CT画像に融合することで、精巧な治療計画を実現し、良好な成績をあげている。

医療設備

リニアック2台[うち1台は強度変調放射線治療(IMRT)、体幹部定位放射線治療(SRT)、呼吸同期照射(4DRT)、画像誘導放射線治療(IGRT)対応システム搭載]、治療計画専用CT 1台、治療計画装置5台、高線量率192-Ir(イリジウム)RALS装置1台。

「医者がすすめる専門病院 熊本・鹿児島」(ライフ企画 2009年10月)

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