患者相談事例-58 「診察で『薬を1種類減らす』と言われたのに、薬局では2種類の薬が。私の知らないところでどんな情報共有が行われているのでしょうか?」
[患者さんの相談事例] 2012/02/03[金]
現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?
診察で「薬を1種類減らす」と言われたのに、薬局では2種類の薬が。私の知らないところでどんな情報共有が行われているのでしょうか?(73歳・女性)
私は2年ほど前に甲状腺機能低下症と診断され、通院しています。最初のころは、なかなか薬が合わず苦労したのですが、半年ぐらい前から症状も安定してきました。
1週間前、ドクターから「症状も安定しているし、検査データも良くなっていますね。2種類出していた薬を1種類に減らしましょう」と言われ、とても嬉しい気分で処方せんを受け取って帰りました。
早速、いつもの調剤薬局に処方せんを持って行ったところ、薬剤師から「申し訳ありませんが、いまこの薬の在庫がないので、明日まで待っていただけますか」と言われました。まだ自宅に薬が残っていたので了承して帰宅し、翌日、調剤薬局に薬を受け取りに行きました。すると、1種類に減らされたはずの薬が2種類調剤されていたのです。私が驚いて、「なぜ2種類入っているのですか?」と聞くと、昨日とは異なる薬剤師が「いつも2種類処方されているのにおかしいと思って病院に問い合わせました。すると、やはり2種類処方するはずだったと確認できたので調剤しました」と言います。私は「診察でドクターが減らしてくれたのに、勝手に薬局が連絡をとるなんて」と腹が立って、どうしたらいいかわからず、そのまま帰宅しました。しかし、落ち着いて考えてみたら、確実にドクターは1種類に減らすと言ったのに、おかしいと思うのです。どうしたらいいのでしょうか。

調剤薬局の薬剤師には、患者に出された薬の履歴や生じた副作用など(薬歴)を管理し、処方内容に疑問が生じたり、薬の重複があったりした場合に処方医に問い合わせる“疑義照会”という義務があります。ですから、薬局がドクターに連絡を取ることは、薬剤師としてとても必要な任務と言えます。しかし、ドクターが明確に薬を減らしたのであれば、そう伝えるはず。薬剤師が直接、担当医に問い合わせたかどうか疑問です。病院、調剤薬局のどちらでも言いやすいほうでいいと思いますので、もう一度事情を伝え、処方内容を確認してもらってはどうでしょうか。

調剤薬局の薬剤師は、処方医に直接確認するはずだと思いますが、どこかで情報の食い違いがあったのでしょうか。薬局で患者さんが「なぜ2種類入っているのですか?」と尋ねたときに、なぜそう疑問に思うのかを踏み込んで聴いていれば、もう一度病院に処方内容の変更の有無について確認ができたのではないかと思います。また、疑義照会など、薬剤師の役割について正しく患者側が理解しているとは限りません。それだけに、薬剤師の果たす役割について、患者側に積極的に説明する姿勢が必要だと思います。
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NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML
理事長 山口育子
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