[患者さんの相談事例] 2012/02/17[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

通院するクリニックの先生が気難しい上に、直接話しかけづらい雰囲気です。治療については信頼を置いているのですが……(73歳・女性)

 私は5年前に両足の膝に人工膝関節を入れる手術を受けました。ところが、1年前から右膝の状態が悪く、右膝をかばうので左膝に負担がかかったのか、両膝とも傷めてしまいました。そのため、室内は何とか杖を頼りに歩いていますが、外出するときは車椅子のお世話になっています。ただ、一人暮らしで、車椅子で外出するにはヘルパーを頼まないといけないためお金もかかるので、外出はできるだけ避けています。
 そのうえ血圧も高くて、10年来薬を飲んでいます。2年前に近くにできたクリニックの先生が、「いつもで往診してあげるよ」と言ってくれ、その先生の出す薬がとても合うので、膝が悪くなってからそのクリニックにかかっています。いまは月に一度、先生に訪問して診てもらっています。
 ところが先日、37度8分の熱が出て、感染症が心配だったので電話をかけ、「熱があるので往診をお願いできますか? 血液検査もしていただきたいのです」とお願いしました。すると電話を取り次いだ看護師が、「それなら来院してくださいと先生が言っています」と言います。そのクリニックは玄関までに数段の階段があって、私が自力で行けないことをわかっているのに、なぜそう言われたのだろうと不審に思いました。
 以前にも、「胃が痛むので、胃酸が出過ぎているのではないかと思います。胃酸を抑える薬を出していただけますか?」と頼むと、いきなり先生から「薬なんて、言われるままに出せない!」と怒鳴られたことがあります。そのときも、なぜそんなに強く言われるのか、理解に苦しみました。
 それに、月1回の訪問の際、先生は必ず看護師と一緒に来てくださるのですが、直接先生と話すことができません。私が何か言うといつも看護師が仲介して先生に伝えるので、直接話しかけてはいけない雰囲気があるのです。ですから、今回来院するようにと言われた真意もわかりません。治療については信頼を置いているので、できればそのクリニックにかかり続けたいのですが、どうすればうまく関係性を築けるのでしょうか。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 いつも訪問診療をしてくれているのに突然クリニックに来るように言われたり、いきなり怒鳴られたりして、さぞかし戸惑われたことと思います。また、理由の説明がなければ、なぜなのか理解できず、ドクターの真意を計りかねるのも当然でしょう。
 ただ、お話を伺っていると、患者さんの側から血液検査が必要と判断したり、胃痛の原因を胃酸過多と決めたり、本来ドクターのおこなう領域に立ち入って要求しているように感じます。そうすると、ドクターのなかに「患者がなぜそこまで判断するのか」「私は御用聞きではない」といった感情が無意識に芽生え、気分を害してしまいがちです。患者が伝えるべき内容は、症状や経過、どのようなときに支障があるかなどです。たとえば「熱が37度5分あります。最近、感染症が流行っていると聞いて心配なんです」「空腹になると……(のように、どのようなときかを添えて)胃が痛むのです。原因を調べて、症状が治まる薬をいただきたいのですが」といった言い方で伝えるようにしてみてはいかがでしょうか。
より良いコミュニケーションを目指そう!医療機関さんこうしてみては・・・?
 チーム医療として、スタッフ間の役割分担は必要ですが、ナースを介さないとドクターとの会話ができないというのは行き過ぎではないかと思います。それに、仮に患者の言い方が気に食わないときなどでも、いきなり怒鳴りつけるのは大人げない対応だと思います。
 また、患者からの問い合わせにナースや事務スタッフが電話を取り次ぐことは多いと思いますが、結論だけではなく“理由”や“根拠”もきちんと伝えていただくことが大切です。医療側にとって当たり前のことも、患者にとっては“非日常”で理解できないことが多々あります。「なぜなのか」を丁寧に伝える努力をしていただきたいと思います。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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