[患者さんの相談事例] 2014/07/18[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

処方薬を変える話をドクターが忘れてしまっているようなのですが。(79歳・女性)

 3年前に白内障の手術を受けた後、なぜか血圧が安定しなくなり、自宅で測定しても上(収縮期血圧)が170~180になることがありました。そこで内科クリニックを受診するようになり、薬で血圧のコントロールをしています。
 以前かかっていたクリニックでは、Aという降圧剤を出してもらっていました。私にとても合う薬で、副作用も出ることなく、血圧も安定していました。ところが、そのクリニックの院長が高齢で廃業され、仕方なく半年前から別のクリニックを探して通院しています。
 新しいクリニックの初診の日、前のクリニックの紹介状を渡し、私からも降圧剤Aを継続して使いたいとお願いしました。ところが「いまはもっといい降圧剤が出ているんですよ。まずはそちらを試してみましょう」と言われ、朝は降圧剤B、夜に降圧剤B+降圧剤Cを処方されました。ドクターの出す薬に反論するのも憚られたので、言われる通り新しい薬を服用しました。ところが、どうも私には合わなくて、眠れなくなったり、体調がすぐれなくなったりしたのです。気分的な影響があるかもしれないと思い、4~5か月様子を見てきました。しかし、やはり体調が整いません。
 そこで、勇気を出してドクターに「先生が出してくださる薬を飲んできましたが、どうも私には合わないようなのです。元の降圧剤Aを出していただけませんか」と言ってみました。すると、「あの薬は流行遅れだから、うちでは扱っていないんですよ。まぁ、そんなに言うなら、次回用意しておきましょうか」と言ってくれました。そこで、その受診のときはBとCの降圧剤で我慢して、次回を期待して受診しました。しかし、薬のことには一切触れられず、これまでと同じように降圧剤BとCが処方されたのです。「次回こそ」と思って、その後数回受診していますが、降圧剤Aに変えてもらえる気配はありません。
 重ねてお願いしてもいいものなのか、いっそのことクリニックをまた新たに探し直すか悩んでいます。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 精一杯の勇気をふるってお願いし、「次回準備しておく」と言われながら、約束を守ってもらえなかったらつらいですね。もしかしたら、ドクターはそのときの思いつきレベルで「次回用意しておきましょうか」と言って忘れてしまっているか、ほんとうはその気もないのにその場を収めるためだけに言ったという可能性もあると思います。
 そこで、もう一度だけ「以前、降圧剤Aを用意しておくと言ってくださったのですが、あれはどうなりましたか」と尋ねてみて、そのときのドクターの対応でつぎの行動を決めるというのも1つの方法だと思います。あるいは、院内処方で1人の患者さんのためだけに薬を用意できないのだとしたら、「処方せんを出していただくわけにはいきませんか」と提案してみるのも一つでしょう。やはり、患者さんによって合う薬、合わない薬はありますから、安心して薬を飲めるようにすることが大切だと思います。
より良いコミュニケーションを目指そう!医療機関さんこうしてみては・・・?
 ドクターによって薬の好みや方針はあるかもしれませんが、患者さんの思いにはもう少し丁寧に応えていただきたいものだと思います。もちろんクリニックにも事情があるでしょうから、例えば院内処方で在庫の問題があるなら、そのことを患者さんに伝え、ほかの方法を考えるなど対応はあるはずだと思います。
 その場凌ぎの提案は、守られないと患者さんとの信頼関係に影響を及ぼします。ドクターの方針を前面に出してはねつけるのではなく、丁寧に説明し、ともに考える姿勢が何よりも必要だと思います。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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