[患者さんの相談事例] 2014/10/10[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

大腸検査で大腸に穴が開いたのに、院長は何の処置もしてくれませんでした。(40歳・男性)

 母(68歳)が市の補助で実施されている健診を受けたところ、便に血が混じっていると指摘されました。近くに消化器専門のクリニックがあると聞き、そこで大腸ファイバー検査を受けることにしました。
 検査の前、クリニックの院長から「ポリープができている可能性があるので、大腸ファイバー中にポリープが見つかれば、そのまま切除するかもしれません」と言われ、同意書にサインを求められました。そして1週間前、母は大腸ファイバー検査を受けたのです。
 検査では、ポリープが3つ見つかったらしく、「すべてきれいに切除できました。見たところ悪いものではないと思いますが、病理検査をしてきちんと判断します」と言われました。ところが、検査が終わって帰宅し、しばらく経つと、母が腹痛を訴え始めたのです。慌ててクリニックに連れていき、症状を伝えたところ、腹部のX線撮影がおこなわれました。診察室で電子カルテに映し出された腹部X線の画像を見ながら、院長は軽い調子で「大腸にちょっと穴が開いているようですね」と言うのです。しかし、慌てる様子もなく、何の対応もしようとしないので、私は「ちょっと開いた穴」を大したことがないと受け止めていいのかわからず戸惑いました。仕方なく、そのまま診察室を出たのですが、母は痛みがますます激しくなってきたと訴えます。そこで私は「このクリニックでは信頼して任せられない」と判断し、すぐに総合病院に車で連れていきました。
 総合病院で改めて検査がおこなわれたのですが、やはり大腸に穴が開いていると言われました。そして、緊急手術になったのです。手術後の説明で、ドクターからは「肛門の少し上の大腸に穴が開いていたので、開腹して閉じる処置をしました。しかし、今後の経過次第では人工肛門をつける必要性が出てくるかもしれません。また、入院も2~3か月に及ぶ可能性があります」と言われました。
 そんな大変な状態だったのに、クリニックの院長が何の対応もしなかったことに憤りを感じ、術後の説明のあと、すぐにクリニックに電話をして状況を伝えました。すると、すぐに院長と事務長が病院に駆けつけてきたのですが、私の顔を見るなり「大腸に穴が開いたのは医療ミスではありません。お母さんの大腸が弱かったからです」と言うのです。そして、「今後のことは代理人である弁護士に任せることにしたので、これからは弁護士とやりとりしてください」と言うなり、逃げるように帰ってしまいました。私はその態度に呆れてしまい、怒りすら湧いてきませんでした。
 手術から約1週間経ち、いまのところ母の状態は落ち着いています。しかし、ドクターからは「まだ予断を許さない状況」と言われています。今後、どのようにしたらいいのでしょうか。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 大腸ファイバー検査を受けると、必ずと言っていいほど事前に「検査後に腹痛が起きたら、すぐに医療機関に連絡してください」という注意があります。これは大腸ファイバーの合併症やリスクとして、大腸に穴が開く(穿孔)可能性があるからです。その症状を訴えてきている患者さんに対して、検査で穴が開いていると判明しながら何もしないというのは、確かに無責任な態度だと思います。
 今後、クリニックの弁護士から連絡があるということですが、まだ予断を許さない状況であれば、今後の交渉も方向性が定まらないと思います。お母さんの状態が落ち着くのを待って、治療にどれぐらい日数や費用を要したのか、日常生活への影響が生じているのかどうかなどを踏まえて交渉してはどうでしょうか。
より良いコミュニケーションを目指そう!医療機関さんこうしてみては・・・?
 確かに、「大腸に穴が開いたこと」=「医療ミス」と言えないかもしれません。しかし、消化器の専門医として大腸ファイバー検査をおこなっているなら、大腸の穿孔を見つければ何らかの対応を急いでするはず。それなのに、何の対応もしようとしなかったことは、あまりにも無責任だと感じます。少なくとも、開口一番保身の説明をしたり、代理人に押し付けて姿をくらませたりせず、きちんと患者さんと向き合うべきではないでしょうか。このような医療機関はほとんどないと思いますが、1件でもあってはならない相談内容ではないかと思いました。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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