[患者さんの相談事例] 2015/02/06[金]

いいね!つぶやく はてなブックマーク

 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

初診後に判明した高額な治療費。同意書にはサイン済だけどキャンセルは可能?(73歳・母)

 半年前、母は大腸がんが見つかり、手術を受けました。少し進行していたがんだったので、術後は抗がん剤による治療を続けています。
 息子である私は進行がんと聞いて心配になり、インターネットでさまざまな情報をとことん調べました。すると、免疫療法で効果があがっている患者さんの体験談が見つかり、とても関心を持ちました。母の担当医に相談すると、「インターネットは広告の要素が強いですからね。効果があるように書いてあったとしても、科学的な根拠に基づいているとは思えないので、あまりお勧めできません」と言われました。でも、私は手術と抗がん剤だけでは心配だったので、せめて直接話だけでも聞いてみようと思い、免疫療法をおこなっているクリニックを訪ねてみました。
 実際にクリニックのドクターから免疫療法の話を聞くと、思った以上に効果があるように感じました。すっかりその気になった私は、母に相談せず免疫療法を受けることを決め、同意書にサインしました。そして後日、「先生がお勧めしないと言っているのに・・・」と渋る母を説得して、リンパ球の培養に必要な採血を受けるため母とともに免疫療法のクリニックを受診しました。
 採血のあと、「本日は初診なので、初診料と培養の費用として32万円お支払いいただきます」と言われました。私はそれを聞いて、治療費について一度も説明を受けていなかったことに思い至りました。それに、32万円という高額な請求に不安が生じ、「今後必要になる費用を含めて、総額でおいくらぐらい治療費がかかるのでしょうか」と尋ねたところ、「だいたい200万円前後です」と言われました。いろいろ調べて高いだろうと思ってはいたのですが、私の想像をはるかに超えた金額でした。しかし、すでに採血を終えたので、その場で「やめます」と言う勇気はありませんでした。ただ32万円は持ち合わせていなかったので、後日振り込むことで了承してもらえました。
 帰宅して冷静に考えると、最初に説明を聞いたときに費用の話をしてもらえなかったし、何かいいことばかりを強調した話のように思えてきました。そこで、母とも相談し、翌日キャンセルの電話を入れたのです。すると、「すでに培養作業に入っているのでキャンセルは不可能です。せっかく培養するのだから、1回だけでも治療を受けたらどうですか」と言われました。改めて同意書を読んだら、「費用は別紙参照」とあり、そのことにも同意の意思表示をしていたことがわかりました。ただ、途中でやめた場合のことについては何も書いてありませんでした。32万円は支払わないといけないのでしょうか。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 同意書にサインして、採血まで終えてしまったとしたら、「途中でやめることにしたので、費用は一切支払いません」というのはおそらく通らないのではないでしょうか。同意書には、途中で治療を中止した場合のことについては触れられていないとのことですから、培養を最終段階までおこなわないということで費用の減額が可能かどうかの交渉をするぐらいしかないと思います。
健康食品や代替医療についても、同じような相談が届くことがあります。病気というと藁にもすがりたい思いになるだけに、契約や購入にあたっての注意喚起が必要だと思っています。
より良いコミュニケーションを目指そう!医療機関さんこうしてみては・・・?
 このような保険外の自費で治療をおこなっている場合、どうしても契約や治療の中断を巡って医療費のトラブルが生じがちです。事前にきちんと費用の説明がなされ、途中で中断した場合のことについても、文書で契約を交わしておくことが不可欠だと思います。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


認定NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

この記事を読んだ人は他にこんな記事も読んでいます。
記事の見出し、記事内容、およびリンク先の記事内容は株式会社QLifeの法人としての意見・見解を示すものではありません。
掲載されている記事や写真などの無断転載を禁じます。