[患者さんの相談事例] 2016/02/19[金]

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 現代の医療現場では、自分なりの判断や意思決定が求められます。患者側にだって、治療パートナー(医療者)と上手に対話して、疑問解消・意思伝達できるコミュニケーションスキルがあった方が良いですね。
 ここで紹介する「相談事例」は、患者側視点に基づくもので、実際にはもっと他の背景があったかもしれませんが、「私ならどうするか」を考えてみませんか?

患者さんから実際にあった電話相談

長期入院中の夫の転院先が見つからず、在宅療養も難しいため困っています。(73歳・女性)

 78歳の夫は以前から慢性呼吸不全で病院にかかっていたのですが、1年前に激しい呼吸不全に見舞われ、救急車で病院に搬送されました。病院ではCO2ナルコーシスと診断され、呼吸器がつけられ、ICUに1か月入院しました。その後、一般病棟の2人部屋に移されたのですが、人工呼吸器はついたままです。
 入院から1年が経ち、最近は転院の話が出てきて、とても悩んでいます。人工呼吸器がつけられているということで、転院先の病院がなかなか見つからず、病院の地域医療連携室の医療ソーシャルワーカーからは、「在宅療養はいかがですか? 最近は人工呼吸器をつけていても、在宅で療養される方もいらっしゃいますよ」と言われました。しかし、夫と二人の年金暮らしで、私一人で夫の面倒を見る自信はありません。それに家は古いので、部屋にベッドを入れたら、それだけで床が抜けてしまうと思います。そのため、在宅療養という選択肢は私には考えられないのです。でも、医療ソーシャルワーカーは若い人で、そのような事情を伝えても理解できないでしょうし、いつも忙しそうにされているので、詳しい事情はお話ししていません。
 現在、夫は意識があって、質問に答えることはできます。そこで、担当医が「このまま人工呼吸器を装着したままでいいですか?」と聞いてくださったことがあるのですが、「わからない」という返事が返ってきました。そのため、担当医からは「ご本人の意思が明確ではないので、人工呼吸器を抜くことはできません」と言われています。いったい私はどうすればいいのでしょうか。

より良いコミュニケーションを目指そう!患者さんこうしてみては・・・?
 在宅療養はどう考えても無理な状況で、転院先も見つからないとなると、途方に暮れておられることと思います。まずは、医療ソーシャルワーカーに、なぜ在宅療養が考えられないのか、具体的なご事情をお話になったほうがいいと思います。それらをきちんと伝えたうえで、転院先探しを一緒にしてほしいと意思表示なさったほうが、医療ソーシャルワーカーの理解も得られるのではないでしょうか。
 また、転院先の候補の病院といっても、機能や費用などに違いがあることがあります。もし可能であれば選択肢になっている医療機関を直接訪ねられて、中の様子を見るとともに、気になっていることを具体的に質問されたほうがいいと思います。
より良いコミュニケーションを目指そう!医療機関さんこうしてみては・・・?
 受け入れ先の医療機関が難しいからといって、誰でも簡単に在宅へと移行できるわけではありません。まずは、もう少し詳しく家庭の事情などを確認したうえで、患者さんにとって現実的な方法を一緒に考えることが大切だと思います。
※写真はイメージです

この実例紹介とアドバイスのご提供は・・・


認定NPO法人
ささえあい医療人権センターCOML

理事長 山口育子

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