[3人に1人は何らかの異常の可能性!急増する肝障害] 2012/09/21[金]

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3人に1人は肝機能検査に何らかの異常がある可能性! 急増する「肝障害」

 昔から「肝臓の病気=大酒飲みの病気」というイメージがありますが、今やお酒を飲まない人も安心してはいられません。“デスクワーク中心で運動不足”“外食が多い不規則な食生活”といった現代人ならではのライフスタイルのせいで、脂肪肝から肝炎などにかかる人が増加しているのです。
 人間ドック受診者の結果から、日本では3人に1人が肝機能検査に何らかの異常が見られていると言われています。これは、高血圧や耐糖能異常(糖尿病の前段階)よりも高い頻度です(図1)。ところが、そのうちの多くの患者さんは、病院を受診して治療を受けていません。これは看過できない状況です。なぜなら“沈黙の臓器”と呼ばれる肝臓は、ダメージを受けても症状が出にくいのが特徴。倦怠感や黄疸など何らかの症状が出て病院に行ったときには、すでに重症化して「肝硬変」や「肝細胞がん」になっていることも少なくないのです。
 まずは「脂肪肝チェック表」で、自分のライフスタイルを振り返ってみましょう。1コ以上当てはまるようなら要注意。すでに肝臓に余分な脂肪がたまり、働きが悪くなっているかもしれません。

ほうっておくと、文字通り「肝を冷やす」ことになる可能性も……

 長年にわたり過度の飲酒を続けていると、脂肪肝が炎症を起こして脂肪性肝炎となり、そのまま肝硬変へと進行するケースは珍しくありません。さらに、「そんなに酒を飲まないから肝臓に関しては心配しなくても大丈夫」なんて思っている方も要注意。運動不足や不規則な食生活など、ライフスタイルの乱れにより、非アルコール性脂肪肝炎(NASH:ナッシュ)を発症する可能性もあります。さらに、このNASHは約半数が進行性で、そのまま肝硬変や肝細胞がんになる危険性があるのです。
 文字通り「肝を冷やす」のは健康面だけではありません。例えば、生体肝移植をするためにかかる総診療費は約1000~1500万円とも言われています。高額療養費制度などの助成があるものの、それでも支払いは数十万~数百万円レベルです。さらに、そこまで重症化しない場合でも、肝臓の病気は「一度悪くなると、良い状態に戻しづらい」ものが多く、生活の質(QOL)の低下だけでなく、その金銭的負担も大きなものになります。
 このように、多くの現代人がその可能性をはらんでいる肝機能検査異常。手遅れにならないためにも、「病気のサインをいかに早く発見するか」が、何よりも重要といえるでしょう。

肝障害のキーワードは「ALT 30」

肝臓の病気のサインを知る方法は、決して難しくありません。実は、毎年行っている健康診断での血液検査結果に、ちゃんと表れているのです。要チェックポイントは、肝機能検査に関する数値のひとつである「ALT:エーエルティー(以前の呼び名:GPT)」。ぜひ健診結果を確認してみて下さい。国(厚生労働省)では、特定健診においてALT値が30を超えた状態が「異常値」であると定めています(図2)。
 そもそもALTとは、体内でアミノ酸の代謝などで重要な働きをする酵素のことで、主に肝細胞に存在しています。ところが、何らかの異常で肝細胞が破壊されると、肝細胞内のALTが血液中に漏れ出してしまう。つまり、コレステロールや血圧のように将来の病気(脳卒中、心筋梗塞)を予測する生活習慣病の検査値と違って、ALT値が高いということは、今現在、それだけ肝臓が障害を受けているということを意味しますので、もっと重要視すべきです。

ALT異常が持続すると肝細胞がんの発生リスクも上昇

 もし、ALT異常が持続するとどうなるのでしょうか。ALTが漏れ出している=肝細胞の破壊が持続しているということなので、肝臓は肝細胞の再生を図ります。破壊と再生が繰り返されると、肝臓が線維化し、最終的には組織が硬くなって本来の機能を十分に果たせなくなる「肝硬変」へと進行する危険性があります。また、肝細胞の破壊が長期間繰り返されると、遺伝子異常を引き起こす可能性があり、「肝細胞がん」の発生リスクも上昇します。
 厚生労働省の研究によると、肝炎ウイルス感染者だけでなく、肝炎ウイルス非感染者においても、ALT値が30以上の人は肝がん(肝細胞がん)発生の危険性が高く、29以下の人と比べると30~69で6.5倍、70以上ではなんと60.5倍にも危険度が膨れ上がるといいます(図3)。
 自分の身を守るため、「ALT 30」というキーワードを必ず頭に入れておきましょう。

肝障害かな?と思ったらまずは専門医に相談を

 肝障害の治療には、まず「ライフスタイルの見直し」が必要です。肝臓に負担をかけないよう、低カロリーで栄養バランスのよい食事を心がけ、適度な運動を行います。そしてもうひとつが、「薬物療法」。医師の指導のもと、病状に合わせ薬を服用します。
 先にも述べましたが、肝臓は“沈黙の臓器”。健診結果だけで医療機関を受診するのは面倒だと思うかもしれませんが、自覚症状が出てからでは手遅れになるかもしれないのです。早期治療で肝硬変を予防すること、初期のうちに線維化を食い止めることが、身体的、金銭的な面で非常に重要なのです。また、専門医でしか処方できない薬もあるので、「もしかして」と思ったらまずは専門医を受診しましょう。
 繰り返しますが、「ALT 30」を超えたら注意信号。「ただの脂肪肝だろうから大丈夫」などとタカをくくらず、早めに専門医に相談してみてください。

監修:帝京大学医学部内科 主任教授 滝川 一 先生

滝川一 先生

昭和52年3月 東京大学医学部医学科卒業
昭和59年8月 米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校客員研究員
平成10年4月 帝京大学医学部内科教授
平成22年4月 帝京大学医学部附属病院副院長(併任)
平成23年4月 帝京大学医学部内科主任教授
~現在に至る

学会

日本消化器病学会 理事、日本肝臓学会 理事、日本胆道学会 理事、
日本消化器関連学会機構 理事、日本成人病(生活習慣病)学会 理事

参考サイト

当サービスで検索対象となる医療機関は、社団法人日本肝臓学会の公開情報を基に掲載しています。各医療機関の「住所・電話番号・診療科目」は、株式会社ウェルネスが独自に収集したものです。正確な情報に努めておりますが、内容を完全に保証するものではありません。実際に検索された医療機関で受診を希望される場合は、医療機関に確認していただくことをお勧めします。掲載情報に関してのお問い合わせはこちらまでご連絡ください。

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