網膜色素変性症を抱えながら高付加価値トマト“プチぷよ”を生産する宮下さんの一日に密着
[僕と私の難病情報] 2023/05/11[木]
「仕事で車の運転をしているとき、見ているつもりなのにこすっちゃうことが増えた。今思えば、そのときすでに病気が進んでいたんですね」
そう語るのは、ミニトマト「プチぷよ」のハウス栽培を行う宮下豊彦さん。30代半ばで網膜色素変性症と診断されました。この病気は徐々に視野が狭まっていき、最終的に失明する人もいます。難病に指定されており、確立された治療法はありません。
病気を抱えながらできる仕事はないか?と悩む宮下さんが出会ったのが、ハウスでのトマト栽培でした。
難病を抱えながら、子供からご高齢の方まで多くの人に愛される「プチぷよ」の栽培・生産を行う宮下さんの一日に密着しました。
インタビュー
― 網膜色素変性症と診断されたときのことを教えてください
健康診断で判明しました。詳細な視野の検査をしたところ、網膜色素変性症と言われました。
病名を全く知らなかったので調べてみたら、難病で治療法がないことや、徐々に視野が狭くなり失明する方もいることがわかり、すごくショックを受けました。言葉ではうまく言えないくらい暗たんとした気分になりましたね。
― 今の仕事を選んだきっかけを教えてください
限られた空間でかん水システムを備えたハウス栽培ならば自分にもできると思ったからです。
病気が徐々に進行して車の運転ができなくなり、少しでも暗くなると歩くのが困難になり、更には人混みでぶつかる事が増え、今までの仕事は続けられそうにないそれなら自分はどんな仕事ができるんだろう、と考えはじめました。
そんな中、「プチぷよ」を栽培している農園をたまたま見学させてもらったのが、今の仕事を始めたきっかけです。ビニールハウスという限られた空間で、かん水システムを利用した栽培方法であれば、病気を抱えた自分ひとりでもできるのではないか、と思えたのです。決定打は試食させてもらったプチぷよが、皮が柔らかく非常に食べやすい事に衝撃を受けたからです。「プチぷよ」は付加価値が高く、トマトの苦手な方や高齢の方でも美味しく食べてもらえるのではと考え、施設の中での仕事ならとできると思い、挑戦を決意しました。
― 病気を抱えながらの仕事、大変なことはありますか?
車の運転ができないこと、暗くなる前に帰宅しなければ危ないこと、あまり混雑した時間に通勤できないこと、休みをとれないことです。
困っているのは、できることとできないことがはっきり分かれてしまい、できないことはどなたかにどうしても頼まなくてはいけないので人件費がかさむことです。また、栽培については自分にしかできない仕事が多く、ほとんど休みをとれない状態も改善したいです。
障がい者を雇用する企業には支援があるんですが、障がい者が経営している企業にはほとんど支援がないことを、疑問に思っています。国や行政がこの点で何かしら支援してくれたら、社員を雇って車の運転を依頼したり、僕も週に1日くらい休みをとれるかなと考えます。
― 現在の課題や今後の展望を教えてください
多くの人にプチぷよを食べてもらい、その食べやすさを知っていただきたいです。そして知ってもらったうえで、後継者や支援者に出会いたいです。
進行性の病気である以上、いつかはできなくなると考えているので、栽培を続けるための支援者や後継者探しが課題です。
真剣にこの仕事をやってみたい人に出会い、農業に参入したい方や、あるいは企業と一緒にトマト栽培を続けていけるようになれればと思います。いつでも見学を受付ていますので、少しでも興味を持たれたら、是非お気軽にハウスにお越し下さい。そして是非試食をしてプチぷよ知ってもらい、障がいがあるなしにかかわらず、みんなで楽しく切磋琢磨していける、そんなトマト栽培をしていければと考えています。
”障がいの有無に関わらず、皆で育てるトマト”
宮下さんは最後に、「同じ病気の人に“自分にもできる”と思ってもらいたいから、僕は失敗できないと思ってやっています」とファーム経営への強い意気込みを語ってくださいました。
「プチぷよを購入したい」「ハウスの見学をしたい」「寄付等の支援をしたい」という方は、下記関連リンクからお気軽にお問い合わせください。
https://www.m-farm.co.jp/
関連リンク
・遺伝性疾患プラス 網膜色素変性症
掲載されている記事や写真などの無断転載を禁じます。