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[ヘルスケアニュース] 2020/03/05[木]

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報道されている「積極的疫学調査」とは?

 国立感染症研究所は、北海道における新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナウイルス)に関する一部の報道において、同研究所職員の発言趣旨に関して、事実と異なる報道があったとの声明を発表しました。

 前提として、感染症が流行した際には「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」第15条に基づき、「積極的疫学調査」が実施されます。

 積極的疫学調査とは、感染症などのいろいろな病気について、発生した集団感染の全体像や病気の特徴などを調べることで、今後の感染拡大防止対策に用いることを目的として行われる調査」です(厚生労働省ホームページより)。

 積極的疫学調査は、都道府県・政令市・特別区の業務であるとともに、感染症の発生予防・まん延防止のために緊急の必要がある場合には、国が都道府県等の行う疫学調査について必要な指示を行うとともに、国自らも積極的疫学調査を行うことと定められています。また、地方公共団体等の調査体制を強化し、連携するため、都道府県等は、調査のため他の都道府県等に対して職員の派遣等の協力を求めることができることとなっています。

新型コロナウイルス対応で北海道に派遣された職員への聞き取り調査の内容を公表

 今回の新型コロナウイルスにおいても、感染の急速な拡大を防止するために、同研究所をはじめ、公的な機関の職員らが連携し、全国各地で実施しています。

 新型コロナウイルスへの対応のため、「新型コロナウイルス感染症厚生労働省対策本部クラスタ―対策班」の指示により、同研究所等の職員7名が北海道に派遣され、積極的疫学調査に従事しています。今回の積極的疫学調査では、感染の拡がりを、集団感染単位(クラスター)ごとに封じ込め、地域や国全体の感染の抑制、収束に至らせることを目的として活動しているそうです。具体的な活動については、以下の通り。

 ・PCR検査によって感染が確定した人の接触者に何らかの症状が出た場合に、PCR検査によって感染の有無を確定する

 ・感染があることが確定すれば、次の感染伝播を防ぐために、その人の接触者に対して、行動の制限を依頼する

 一部報道では、北海道に派遣された職員がPCR検査について「入院を要する肺炎患者に限定すべき」と発言し、「検査をさせないようにしている」との疑念が指摘されています。しかし、積極的疫学調査では、医療機関において感染の疑いがある患者さんへのPCR検査の実施の必要性について言及することは一切ないとしています。実際に、同研究所が職員に聞き取り調査を行ったところ、以下のような回答が得られたということです。

 ・感染者の範囲を調査により特定し、対応を行っていく積極的疫学調査のあり方についてアドバイスを行った

 ・検査に関する議論の中で、「軽症の方(あるいは無症状)を対象とした検査については、積極的疫学調査の観点からは、「PCR検査確定者の接触者であれば、軽症でも何らかの症状があれば(場合によっては無症状の方であっても)、PCR検査を行うことは必要である」と述べた

 ・「一方、接触歴が無ければ、PCR検査の優先順位は下がる」と述べた

 これらは、感染伝播の状況を把握することを目的とした、積極的疫学調査における一般的な考え方で、体調を崩して医療機関を受診する患者さんに対するPCR検査についての考え方ではないとしています。そのため、現在の政府の方針、つまり「医師が総合的に新型コロナウイルス感染症の疑いありとした患者に関しては検査が可能である」という考え方を否定する趣旨はなく、また、医療機関を受診する患者さんへのPCR検査の実施可否について、積極的疫学調査を担っている同研究所の職員には、一切権限がないそうです。

 これらのことから、同職員の発言の趣旨が誤った文脈に理解され、事実誤認が広がった可能性があるものと考えている、としています。

 最後に、国立感染症研究所は感染者や接触者が積極的疫学調査に協力的であることに感謝の意を述べました。また、報道関係者に対しては「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」とその運用、ならびに本所の役割をよく理解し、新型コロナウイルス感染症の急速な感染拡大の防止に協力して欲しいと呼び掛けました。(QLife編集部)

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