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[ヘルスケアニュース] 2023/02/28[火]

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武藤将胤さん「未来を明るくするために時間を使い、希少疾患の困難からイノベーションを」

 東京タワーが2月28日に緑・赤・青の3色でライトアップされることをご存じですか? このライトアップは、「世界希少・難治性疾患の日」(Rare Disease Day:RDD)に合わせて実施されるものです。

 世界希少・難治性疾患の日には、東京タワーのライトアップのほか、希少疾患の認知度向上を目指して世界各国でさまざまなイベントが開催されます。


イベントの様子(武田薬品工業/RDD Japan提供)

 この日に先立ち、製薬会社の武田薬品工業とRDD Japan事務局は2月12日、都内とオンラインのハイブリット方式でイベントを開きました。イベントでは、筋萎縮性側索硬化症(ALS)の当事者で、ALSの課題解決を起点にすべての人が自分らしく挑戦できるボーダーレスな社会の創造を目指して活動しているWITH ALSで代表を務める武藤将胤(むとうまさたね)さんが講演。「ALSによりさまざまな困難や制約はあるがテクノロジーの力を駆使して解決アイディアを形にしている。ネガティブな思考に費やす時間があるなら、未来を明るくするために時間を使い、ALSの困難からイノベーションを生みたい」と自身の取り組みへの思いを述べました。

 ALSは、筋肉に命令を送る神経である運動ニューロンが障害を受け、手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉の力がなくなっていく進行性の病気です。目の動き、体の感覚、視力や聴力、内臓機能などは一般的に保たれます。希少な疾患で、国はALSを医療費の助成を行う指定難病に定めています。


WITH ALS代表の武藤将胤さん(武田薬品工業/RDD Japan提供)

 武藤さんの取り組みの1つが、視線入力と合成音声を掛け合わせるプロジェクトです。これは、自分の声を残しておくことのできるプログラムと視線でコンピュータに文章を打ち込める装置をコラボレーションして、ALSの方が声を失ってしまった後でも視線入力によって自分の声で発話することができるというもの。武藤さんは、「ALS患者はいつか声を失ってしまうかもしれないという恐怖と闘っている」として、「誰もが自分の声で話し続けることができる未来を実現するために発案した。多くの支援をいただき、2019年にサービス化することができた」と同プロジェクトについて説明しました。

 講演ではまた、脳波を使用した研究開発に取り組んでいることを紹介しました。武藤さんは、「ALS患者は、進行して目さえも動かすことができなくなり、周囲との意思疎通が困難になる『完全閉じ込め症候群』に最も大きな恐怖を抱いている」と強調。2022年11月には、脳波で分身ロボットを操作してアパレルストアで接客を行う公開実験を成功させたとして、「どれだけALSが進んでも脳波でコミュニケーションが続けられる未来を目指して、研究を続けていく」と研究への意気込みを語りました。

 2016年に世界ではじめて視線入力でのDJパフォーマンスに成功し、DJとしても活躍している武藤さん。同日のイベントでもDJパフォーマンスを披露し、会場を盛り上げました。武藤さんは、「システムの改良を重ね、2022年には視線を使って演奏する楽器を開発した。フランスやトルコ、ハンガリーでライブパフォーマンスに挑戦した」として、世界から反響を得たことを報告しました。

 講演で武藤さんは、「デジタルテクノロジーの活用は、希少疾患の領域でこれまで不可能だと考えられていたことを可能にしていく、そしてその実現スピードを加速させていくことだ」との考えを表明しました。「できない理由を考える前に使えるテクノロジーを探すという発想で、これからもALSの課題解決に取り組んでいきたい」(武藤さん)

「AIの活用によって、より思いやりのある医療の実現へ」

 イベントでは、国立成育医療研究センター病院長の笠原群生(かさはらむれお)先生も登壇しました。


国立成育医療研究センター病院長の笠原群生先生
(武田薬品工業/RDD Japan提供)

 国立成育医療研究センターでは、病気の診断補助や医療従事者の負担軽減などにAI技術を活用しています。笠原先生は具体例として、症状や顔の写真などをAIに取り込み、病名を一定程度絞ることができる診断補助システムの開発を挙げ、「これまで診断の難しい希少疾患では、網羅的に遺伝子を調べる検査を行っているが、システムの開発により、従来よりも早く診断・治療につなげることができる」と説明しました。

 医療従事者の負担軽減としては、「電子カルテへの音声入力を実施している」と紹介。テキストをカルテに入力する作業が減ることで、「より多くの患者さんや家族に時間を使うことができる」として、「AIの活用によって、さらに安全安心、思いやりのある医療が実現できるのではないか」と期待を寄せました。

患者さん・家族向けオンラインラウンジで患者さん同士のつながりを構築

 インターネットを利用した医療関連サービスの提供を行っている企業であるエムスリーの高山哲也さんは講演で、同社が運営している医師への健康相談サービス「AskDoctors(アスクドクターズ)」で一部の希少疾患を啓発している事例を紹介。「同じ疾患の相談内容ばかり読んでいる人にその疾患の啓発記事のリンクを送り、セルフチェックツールで疾患の可能性をチェックすることができる仕組みになっている」と説明しました。セルフチェックツールで該当する項目がある場合には、チェック結果とともにAskDoctorsで相談することが可能だとして、「こうした仕組みにより医師にとって必要な情報を網羅的に伝えることができる」との認識を示しました。


エムスリーの高山哲也さん(武田薬品工業/RDD Japan提供)

 高山さんは一般の方向けの医療情報サイト「QLife(キューライフ)」による、希少疾患について相談できる病院を探すための病院検索や「遺伝性疾患プラス」をはじめとしたメディアを用いた疾患啓発の例も紹介。2021年にはQLifeがオンラインコミュニティとして、LINEアプリのオープンチャット機能を用いた希少疾患患者さん・家族向けのサービスを立ち上げていることに触れ、「患者さん同士のつながりの構築や、患者さんのQOL(生活の質)の向上に貢献できているのではないか」と話しました。

 QLifeのオンラインコミュニティでは、同じ疾患を抱える患者さん同士で病気のつらさや悩み、日々の喜び、楽しみを共有する場を提供しています。また、LINE公式アカウントによるオンラインラウンジも疾患別に設けており、日常生活のお役立ち情報や患者さん向けイベント・交流会の情報、薬・治験の最新情報などを配信しています。現在、オンラインコミュニティは2疾患、オンラインラウンジは36疾患を対象に開設しており、今後も拡大していく予定です。

 QLifeではまた、特集ページ「僕と私の難病情報」で希少疾患患者さんや専門医などの有識者のインタビュー記事をはじめとしたさまざまなコンテンツを配信しています。ご関心があれば、ぜひのぞいてみてくださいね。(QLife編集部)

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