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[クリニックインタビュー] 2010/04/23[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第64回
ふどうまえ眼科クリニック
栗原泉院長先生

医学者にあこがれた少年時代

fudoumae_clinic01.jpg 小学校の卒業アルバムに僕は「医学者になりたい」と書いていました。医者(臨床医)ではなく医学者です。両親が医者でしたから、子供の頃から自分も医者になるものだと思っていたのです。インプリンティングですね。父親に「お前は手先が器用だ」と、これも刷り込まれていたので、当初は外科医を希望していました。
 眼科に進むことを選んだのは顕微鏡手術がやりたいと思ったからです。進路を決めることになる大学5年生の頃、ちょうど日本ではいろいろな科で顕微鏡が手術に使われるようになっていました。当時、僕がいた岩手医大には日本で何番目かの形成外科学教室ができたばかりでした。そこで直径1mmのネラトンカテーテル――ゴムのチューブですね――これを手術用顕微鏡で縫い合わせるという実習があり、やはり「器用だ」と誉められたんです。入局を誘われましたが、形成外科ではそれほど顕微鏡手術が必要な症例は多くなかったのです。それで、顕微鏡手術の機会が多い眼科に進みたいと考えるようになりました。
 大学卒業後は実家のある東京に戻り、恩師の先生方の推薦もあり東京女子医大眼科に入局させていただきました。入局3年目には東京大学の医科学研究所病理学研究部でウイルス実験病理学の研究を始めさせていただき、博士号を取得することができました。その後は臨床医として東京女子医大眼科、国立横浜病院(現・国立病院機構横浜医療センター )眼科医長を経て、埼玉県草加市立病院眼科医長を約18年間務めました。この間、内田幸男教授、小暮美津子教授、堀貞夫教授と歴代の主任教授にはご高配をいただきました。

患者さんのために必要なものが揃うクリニックを


ライカ手術用顕微鏡

生物顕微鏡・実体顕微鏡システム。眼脂(目やに)を採取し外注培養検査にまわす以外に院内で染色検鏡。「システムに記録保存して早期治療にも役立てています。また検査に出した病理標本を見て勉強しています」とのこと。
fudoumae_clinic02.jpg
「NAVIS」という最新の画像ファイルングシステム。治療の経過を確認することもできる。

 クリニックを開設したのは平成18年です。それまでいた総合病院では、新病院建設で眼科診察室、手術室の設計や設備選定などにも携わりました。眼科の設備は大学病院並みに充実させましたが、眼科の十分な診療をするには医師だけでは無理なのです。スタッフを増やすには人件費の問題や教育の問題があり、長年勤務し実績を残してもなかなか思うようにはならなかったのです。
 都会での開業にあたり、今の自分に何ができ、何が患者さんに一番喜んでもらえるかということを考えました。クリニックの基本理念は、待合室にも掲げているように「当地域の患者様の 需要に応え得る、良質な眼科医療(時間的、診療レベル)を提供することを目的とする」というものです。患者さんがどんな症状でも最適な診療を受けられるよう、設備や人材を備え、必要があれば以前から交流のある大学病院、総合病院の一流の先生方に速やかに紹介しています。この密な連携が当クリニックの強みで、患者さんに対し、大学病院、総合病院をも含めた診療機能の提供を可能にしています。サッカーでも野球でも、一生現役でいられるわけじゃないですからね。これからは監督のような立場で、自分の経験を患者さんに還元するのが最良だと考えたわけです。
 診察するときに心がけているのは、患者さんの話をよく聞くことです。パッと見てもらってパッと薬を出してほしいというせっかちな患者さんには、うちはあまり向いていないかもしれませんね。患者さんを診察し、何が原因でどのような解決方法があるのかを説明し、納得してもらうことを大事にしています。そのために使用しているのは「画像ファイリングシステム」です。患者さん全員に(実はこれが大変)検査をしながら眼球の状態を撮影して、パソコンのデータベースに取り込みます。これを患者さんと一緒に見ながら説明しています。同じように眼球の状態を動画で見ながら診察することもできます。「飛蚊症」という目の前にちらちらと浮遊物が見える症状なども、動いている繊維物がモニターで大きく見えるので、とても分かりやすいと患者さんに好評です。

パイロットと眼科医の共通点

 こちらには手術用の顕微鏡も置いています。ここまで設備を揃えるのは大変なことなんですが、それ以上に大変なのが人材の確保ですね。性格が温厚で、明るくて、患者さんのことを考えて、なおかつうちのクリニックのコンセプトを理解してくれる人でなければいけません。現在は視能訓練士を含めて5人のスタッフが、シフト制で勤務しています。一番長い人は開院したときから働いてくれています。
 机の前に飾ってあるのは航空機専門のイラストレーターの作品です。僕は飛行機というコンセプトが好きです。これらの飛行機を一機安全に飛ばすにはパイロット以外に数百人が必要です。飛行機は交通機関のなかでも最も安全で事故率も低いのですが、そのかわり墜ちると大惨事になる。パイロット以下、優秀な機体と有能なスタッフのチームワークが不可欠なんです。そういうところが顕微鏡手術ととても似ています。顕微鏡手術はとても安全なのですが、その許容範囲、安全限界は狭い。1/10mmでもずれると失敗ですね。それを成功させるには医師だけでなく、サポートするスタッフの能力、設備の充実が必要です。
 そういったことを長年の顕微鏡手術から学び、現在はクリニックでの診療活動に活かしています。

人を喜ばせること、人の役に立つこと

 趣味は写真です。父親もカメラが好きだったので、高校の入学祝いに一眼レフを買ってくれて、それ以来ずっと撮っていますね。持っているのはライカ、コンタックス、ニコン、キヤノン、トプコン、ペンタックス、オリンパス、ミノルタ、ゼンザブロニカ、マミヤ、ヤシカ、リコー…。ボディは40ほど、レンズは50本くらい持っていますね。「撮影ではなく、カメラを集めるのが趣味じゃないの?」なんて妻には言われます(笑)。ずっと鳥や風景などを撮っていたのですが、最近はシャンソンを歌っている先輩に頼まれまして、舞台撮影もするようになりました。鳥や風景を撮っているときにくらべて、被写体の個性、その人の人間性を写すことを意識するようになりました。撮った写真をお送りすると、とても喜んでいただけてこちらも嬉しくなります。医者も同じなんですよ。自分の手腕を高めたいという気持ちもあるけれど、最終的には患者さんに喜んでもらえたら一番ありがたいのです。
 現在、主任教授のご高配で東京女子医大非常勤講師や昭和大学医学部客員教授を拝命し、大学で講義をしたり、クリニックを教育機関として医学生の地域医療研修をしたり、大学の休日救急診療を担当したりして若い後輩とも接し勉強させていただいています。これまで諸大学の先生方や医局の諸先輩方から多くのことを学ばせていただきました。今後も少しでも患者さんと後輩の役に立てたら良いなと思っています。

取材・文/松本春子(まつもと はるこ)
編集者として10年間出版社に勤務した後、独立。フリーライター・フォトグラファーとして、心身の健康をテーマに活動中。理想的なライフスタイルの追究をテーマに執筆を手がけている。

ふどうまえ眼科クリニック

医院ホームページ:http://www.k5.dion.ne.jp/~fm-ganka/
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検査の多い眼科では待ち時間が長くなりがち。少しでも居心地が良いようにと、ソファ吟味。
東急目黒線・不動前駅から徒歩1分。詳しい道案内は医院ホームページから。

診療科目

眼科

栗原泉(くりはら・いずみ)院長略歴
栗原泉院長
昭和54年 3月 岩手医大医学部卒業
昭和54年 5月 東京女子医大眼科研修医
昭和56年 5月 東京女子医大眼科助手
昭和60年 11月 東京女子医大眼科医局長
昭和61年 12月 国立横浜病院(現・国立病院機構横浜医療センター )眼科医長(厚生技官)
東京女子医大関連病院派遣講師
昭和62年 7月 埼玉県草加市立病院眼科医長
平成02年 7月 東京女子医大講師(非常勤)
平成15年 1月 草加市より勤務成績優秀にて表彰さる
平成18年 3月 草加市立病院退職
平成18年 8月 ふどうまえ眼科クリニック開設
平成20年 4月 昭和大学医学部兼任講師
平成21年 4月 昭和大学医学部客員教授


■資格
眼科専門医 医学博士、東京女子医大講師(非常勤)、昭和大学医学部客員教授、身体障害者福祉法指定医

■所属学会
日本眼科学会、日本眼科手術学会、日本眼内レンズ屈折手術学会、日本糖尿病眼学会、日本眼科医会、日本医師会



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