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[クリニックインタビュー] 2009/02/13[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第8回
井上医院
井上毅院長

志したときから、高齢社会を意識した

umegaoka_07.jpg 私が医者になった理由は至って単純で、「それ以外の選択肢がなかったから」。岐阜で開業医をしていた父親が古いタイプの人でしたので、医師以外の道に進むことが許されませんでした。それで医学部に入ったわけです。
 医学部に進んですぐに、「将来は高齢化が進んで高齢者が増加するだろう」という予測を見聞きした私は、社会のニーズに応えられるよう循環器科に進むことを決めました。動脈硬化・高脂血症・メタボリックシンドロームなど、循環器科の対象となる疾患は、基本的に高齢化に伴って発症するものばかり。高齢者と循環器科医の間には、このように密接な関係があるんです。
 大学病院で循環器科の基礎を教わると、今度は出張という名目で各所の病院に勤務することになりました。当時、地方の医師不足問題は今とさして変わらず深刻でしたから、勤務先の市立総合病院は大変な忙しさでした。民間病院の高齢者医療現場における医師不足は顕著で、台湾・中国など外国の年配医師が多数在籍し、カバーに当たっているという病院も少なくありませんでした。
 そんな過酷な状態の中、「僕は循環器しかわかりません」などとは言ってられません。子どもからお年寄りまで、それこそ風邪から原因不明の腹痛まで、初期診療としてなんでも診ました。次々に訪れる患者さんをとにかく治すため、必死でひとりひとりに向き合っていました。
 それだけに、鍛えられましたね。すさまじい忙しさの中であらゆる内科症状を診たことが自信につながり、今の基盤にもなっています。
 医局時代にはそうやって色々な病院に出張しましたが、なかでも春日部市民病院に出張した際に出会った旧院長からは、非常に多くのことを教えて頂きました。旧院長は私より30歳くらい先輩に当たる方で、お人柄のすばらしさもさることながら、診察姿勢や豊富な知識など、ほんとうに尊敬できる長所をたくさん具えた方でした。多忙を極める日々のなかで、あらゆる点で勉強させてもらったなあと思います。

常識的な医師でありたい

umegaoka_01.jpg 梅ヶ丘に開業した当時から、ここでは循環器科だけでなく小児科・消化器科・内科も標榜しています。だから私のことを循環器科医だと知っている患者さんは、そんなにいらっしゃらないかも。ただ、高齢化の進行に従って、循環器系疾患を発症して訪れる方が増えていることは確かです。
 循環器の疾患をみているとご高齢の方が多くなり、何年も診させて頂いていると、足元がおぼつかなくなり往診の依頼が出てきます。
 往診は、長く知っている患者さんのお宅を毎日数軒ずつまわっています。新しい方から依頼された場合は、半径約4km圏内の場合のみ引き受けています。遠くにお住まいの方から往診の依頼を頂くこともたまにありますが、近くのお医者さんにかかった方がなにかの時に対応できますから、そういう場合は最も近いところで往診をしているお医者さんをご紹介しています。
 往診に出るのは昼休みと、夕方の診療が済んでからおこなっています。
 病状を聞いて、悪いところがあればみつけて、治療する。日々、それの繰り返しですね。
 人は、時々刻々と老いていきます。私も10年前には軽くこなせたことが、今では負担に感じたりします。ですから今後も診察を続けるに当たっては、自然のなりゆきに従って進めていけたらいいなと思っているんです。時間が経ち、歳を取り、だんだん体の自由が利かなくなる。体力的にカバーできる範囲が徐々に狭まって行って、それに伴い患者さんも「先生もおじいさんになってきたし、今度からあっちの病院に行こう」という風に離れて減っていく。自然なことですよね。そういう時の流れのなかで、いま診ている患者さんたちと一緒に、その日その日できることに一生懸命取り組んでいけたら、なによりです。
 医療技術にも診療姿勢にも言えることですが、大切なのは「常識的な考え方」だと思っています。

おいしくて喜ばれる釣りの趣味

 釣りが唯一無二の趣味なので、たまの休みには海釣りに出かけます。竿もね、買ってきたのをそのまま使うんではなく、自分で分解して再構成したり、漆で固めなおしてカスタマイズしたりして、けっこう凝ったのをこしらえてます。
 一番よく行く先は東京湾。金沢八景や鶴見が多いかな。妻とボートで金田湾に出て、キス釣りなどをすることもありますが、たいていは一人で東京湾に行き、船に乗りますね。釣った魚を持ち帰って、家族で食べたり周りの人に配ったりするのもとても楽しみ。
 たとえばメバルなんて、お店で買うと650円くらいしますでしょう。船の代金が8500円、往復の電車賃が2000円と考えると、20匹も釣るとトントンです。お金もそんなにかからず、お魚はおいしく、しかもみんなに喜んでもらえる。それが釣りの醍醐味です。嬉しいことの多い趣味だから、釣りは大好きです。

家族への思いやりで禁煙に成功

 自分の健康維持のための努力は、取り立ててしていません。強いて言えば、毎朝家族3人でラジオ体操の第1から第3を通してやっているくらいです。運動も特にしているわけではないですから、工夫といってもほんとうにそれくらいですね。
 ただ、娘が生まれてくる時に、家族の健康を思ってタバコをきっぱりやめました。それまでは結構吸っていましたけど、一週間かけて禁煙に成功してからはまったく吸っていません。禁煙期間中はタバコを吸う夢を何度も見て、「あ! 吸っちゃった!」ってよく慌てて飛び起きてました(笑)。
 禁煙はね、最初の一週間が肝心なんです。そこさえクリアできれば、禁煙は成功したようなもの。「具合が悪くても吸っちゃう。全然やめられない」とぼやく知人などには、「具合が悪い時こそ一週間だけ我慢してみては。そこを越えたら、もう禁煙できてるから」とアドバイスしています。
 タバコはやっぱり脳がニコチン依存に陥っているからこそ欲するので、身体にいいもの・自然なものでは決してありません。よく言われることですが、依存をいかに断ち切るかが勝負ですね。
 お酒も飲みすぎは疾患に結びつくものですから、最近では飲む機会を減らしています。
 循環器の疾患は予防できるものが多いので、将来が気になる方には嗜好品を見直してみることをお勧めします。

取材・文/戸谷妃湖(とたに ひこ)
広告代理店のコピーライターを経て、現在フリーライターとしてロンドン・北京・東京の三都市を基点に活動。被虐待児童におけるトラウマティック・ストレス学、および漢方による精神疾患アプローチに関する研究をライフワークにしている。

井上医院

医院詳細ページ:http://www.qlife.jp/hospital_detail_567333_1
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小田急線「梅ヶ丘」駅北口から徒歩30秒。バスターミナルそば。駐車場あり。入り口にはスロープ完備
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広々とした待合スペースに飾られている日本画は、院長の義父による作品

診療科目

循環器科・内科・消化器科・小児科
【内科関連のすべての症状に関する診療/来院が困難な患者さんへの訪問診療】
※各種保険取扱医療機関

井上毅院長略歴
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(専門:循環器科/日本内科学会認定医)
1977年 日本大学医学部卒業/同年、日本大学医学部第2内科入局
1996年 多数の病院勤務を経て、世田谷区松原に「井上医院」開設/現在に至る


■所属学会
日本内科学会


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