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[クリニックインタビュー] 2009/02/20[金]

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大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。

第9回
清澤眼科医院
清澤源弘院長

「すべては患者さんのために」を実践する

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 診療スペースに入ってすぐの目立つ位置に、「すべては患者さんのために」という言葉の額を掲げています。これは私の考えた言葉ではなく、総合南東北病院の渡邊一夫先生からいただいたものです。脳神経外科の病院開設者として成功している渡邊先生は、病院の玄関にこの言葉を掲げています。当院に飾ってあるのは渡邊先生直筆の色紙。開業する際、お願いして書いて頂きました。
 この言葉はもともと、18世紀末のスイスで活躍し「民衆教育の父」と呼ばれた、ペスタロッチの墓碑銘から取ったものだそうです。そこには「おのれを捨ててすべてを他の人のために為す」というペスタロッチの生き方が記されているのだそうです。

toku5_04.jpg 毎日、このフレーズを目にすることで、院内の意識を啓発していけたらいいなと思っています。日常に浸透した言葉は、仕事への取り組み姿勢にも現れます。自分の都合よりも患者さんのことを最優先することを忘れないのが、私の理想ですね。できることは労を惜しまずに、取り組む。開業医はその繰り返しだと思うんですよ。
 たとえばCT検査が必要な場合でも、数日待たねばならないことも多々あります。しかしその数日が命取りになる、急性の疾患などもありますでしょう。だから検査から結果のフィードバックまでは、最短を心がけています。
 また、大学病院での規模な手術が必要になっても、自分の患者さんにはなるべく付き添います。口は出しませんが、手術室に一緒に入ってみているんです。まあ、こちらは「できることを全部やる」だけですね。
 とにかく治療も設備も検査も、すべて充実のための努力は惜しまないことがモットーです。「できない理由」を探すようではいけません。できない理由を探さないこと、これは肝要です。

人気の眼科医ブログ

清澤眼科医院通信
『清澤眼科医院通信』は不定期・頻繁に更新。これまでの記事数も膨大な数に上る(http://blog.livedoor.jp/kiyosawaganka/)

 一種の趣味でもあるのがブログ『清澤眼科医院通信』の更新です。花の写メを送ってくださる患者さんがいまして、記事をアップするたびに季節の花を楽しんでもらえるようにしていますから、難しい内容の記事でも多少とりつき易くなっているかと思います。
 ブログ記事の内容は、眼の病気にまつわる情報が大半で、最新治療のことや高額医療のことなど、多岐にわたります。初診の方向けの問診表も掲載しているのですが、実際にブログを見て、それをプリントアウトして持ってきてくださった方にお会いした時は、感動しました。ブログを見て来院される方も少なくありませんので、もっと書いていきたいですね。
 なぜブログから来院される方が多いかといいますと、基本的にこのブログは、頻度のごくわずかな神経眼科疾患も網羅しているからなんです。
 たとえば自分の大切な人が、聞き慣れない病名を眼科で告げられたとします。ご本人は医師から説明をされているでしょうが、周りの人は心配ですよね。そういう時、ネットで検索しても論文や専門書しか見つけられなかったら、不安になります。ですからあらゆる疾患に一応の答えを用意することで、眼科の病気が必ずネットでヒットするように整えています。検索ログを見ますと、めずらしい疾患名を検索して飛んで来る方も毎日多数いらっしゃいますので、これまでに800記事を書いたことが実っているように思えます。
 最近では患者さんだけでなく、先輩医師や研修医などからも、「ブログ見ましたよ」と言って頂けることも増えています。診療の合間の更新なのでちょっと大変ですが、やっていてよかったと感じますね。
 こうした啓蒙活動というか、知識の共有はとても大事だと思っています。井上眼科病院の若倉雅登院長の造語で、「不明愁訴」というのがあるんですが、ご存知ですか?「不定愁訴」というのは一般的によく使われる語で、患者さんの訴えが次々に変わるようなケースを指します。「不明愁訴」は患者さんの訴えが正確であるにも関わらず、医師の知識不足が原因で診断がくだせない症状のこと、と若倉先生は定義しています。このテーマで、東京医療センターの山田昌和先生を加えて3人が編者になって本も作っています。
 この不明愁訴を減らしていくうえで、ブログが役に立てたら嬉しいですね。「一瞬針で刺されたような痛み」と言われても、どう解釈すべきかわからずに間違った診断を下してしまうケースもあります。そうしたケースが減ることを祈って、本来の専門である眼瞼けいれんからは多少それても、神経眼科全体のことを今後も書いていけたらと思っています。

大学病院と有機的な関係を築きたい

 「装備する機械はフルに活かせるものを選び、使う頻度の低い機械は導入しない」というのが当院のモットー。オプションの導入は最小限にしています。
 でも、若いドクターはついつい形から入りたいと考えてしまい、開院時にたくさんの機械を揃えようとする傾向にあります。いろいろあった方が、大学病院みたいで見映えがいいですからね。でも、機械に投入した資金が返って来ないことに焦って、そのうち検査の必要ない患者さんにも検査を押し付けてしまったりする。それは「患者さんのために」という考え方からは外れますよね。だから、導入するオプションは最小限。試用期間中に頻度をみて、購入は熟慮しています。あまり使うことのないものなら、大学に患者さんを紹介すればいいですから。
kiyo_room01.jpg そういう点においても言えることですが、大学から離れた開業医と大学が、もっと有機的に助け合っていく道が必要だと思っています。私の場合は毎週大学に外来日がありますので、当院の患者さんを大学病院に紹介した場合でも、その診断までなるべく立ち会って説明が食い違わぬようにしていますが、日本の現状ではいったん大学を離れた医師がそういうことはしにくいのがふつうです。大学と開業医が連携している米国の病院でのアフィリエートのような形が理想です。
 本来望ましいのは、大学病院と開業医の相互補完的な関係。できることの分担を突き詰めていけば、よりよい医療の提供につながると信じています。

通院を続けるために

kiyo_hagaki.jpg 初診で見えた患者さんには、その日のうちにカルテを見直し、ハガキを書いてお出ししています。字が汚いとか読めないとか言われてしまうこともありますけど(笑)。これには今後の治療方針や気をつけていきたいこと、励ましなどを書いて送ります。だいたい毎日15通くらいになります。これも患者さんのために取り組むことのひとつですね。
 また、当院ではすべての患者さんに、領収書に次回の予約日を書いて渡しています。予約したら必ず来なくてはいけないわけではなくて、予約日当日には「今日はあの人とあの人が来るんだな」ということで、私がカルテを確認できる機会にしています。予約日だけれども来なかった患者さんに関しては、カルテから判断し、「この人はもう治ってるから来ないんだな、OK」とか「この人はご高齢だし、経過をちゃんと見ないと危険だから声をかけよう」など、患者さんごとに対応を考え、必要な場合は早急な来院をお声かけします。
 来ない患者さんを放置して悪化させることは絶対に避けたいです。でも、個別の対応をきちんとしていけば、それはきっと避けられることですよね。

取材・文/戸谷妃湖(とたに ひこ)
広告代理店のコピーライターを経て、現在フリーライターとしてロンドン・北京・東京の三都市を基点に活動。被虐待児童におけるトラウマティック・ストレス学、および漢方による精神疾患アプローチに関する研究をライフワークにしている。

清澤眼科医院

医院ホームページ:http://www.kiyosawa.or.jp/
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「清澤眼科医院通信」は不定期・頻繁に更新。これまでの記事数も膨大な数に上る
東西線「南砂町」駅東口3番出口正面建物の2階。エレベーター完備。

診療科目

眼科・神経眼科・小児眼科・コンタクトレンズ
【検査設備:ヘススクリーン(眼球運動検査)・オートレフケラトメーター・ノンコンタクトトノメーター・省スペース視力検査装置・ハンフリー自動視野計・ゴールドマン視野計・細隙灯顕微鏡装置(スリットランプ)・デジタル眼底カメラ 他 】
※各種保険取扱医療機関

清澤源弘(もとひろ)院長略歴
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1981年 東北大学医学部卒業
1987年 東北大学研修医・北里大学病院病棟医・東北大学大学院修了・フランス原子力庁研究員・米国ペンシルバニア大学フェロー・米国ウイルス眼科病院臨床フェローを経て、東北大学講師就任
1992年 東京医科歯科大学眼科助教授就任
2006年 東京・江東区に「清澤眼科医院」開設/順天堂大学非常勤講師・東京医科歯科大学臨床教授就任/現在に至る


■資格・所属学会他
日本眼科学会眼科専門医、東京都眼科医会学術部委員、日本神経眼科学会理事、アジア神経眼科学会理事、眼瞼・顔面けいれん友の会顧問、第33回日本神経眼科学会総会会長(1995年)、第16回国際神経眼科学会副会長(2006年)、東京医科歯科大学眼科学臨床教授、順天堂大学附属江東高齢者医療センター非常勤講師



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