第103回 地域医療の質を上げる、その思いを貫きたい
[クリニックインタビュー] 2011/02/18[金]
大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。
第103回
沼津大山クリニック
大山一孝先生
物心つく前から医師が夢だった
どうも、4-5歳の頃には医者になりたいと周囲には言っていたらしいです。家系に医師がいたわけではないんですけどね、親族に薬剤師がいたくらいのもので。ただ、近所の少し大きな病院の、外科の先生に何回かお世話になっていて、その先生に憧れを感じていたのでしょうか。手術して病気を治して、カッコイイなという程度のものだったのでしょう。
それとは別に、小学校の頃はブラックジャックとかドラえもんとかを読んでいて、漫画家になろうと思っていました。藤子不二雄さんのようにコンビでやろうと思って友達を誘ったり、手塚治虫さんに手紙を送ったこともあります。そうしたら手紙の返事が来てびっくりしました。しかしそこには「漫画家になりたいのだったら、とにかく勉強しなさい」と書いてあったんです。勉強して世の中のことを知ってその上で…という趣旨だったと思うのですが、その時は「ああ、勉強しなきゃいけないんだ」と素直に思って。そのあと、漫画家の夢は自分でセンスがないなと分かって断念しまして(笑)、中学の頃からは「医学部に入る」と目標をしっかり定めました。医師になるには、日本では必ず医学部に入らないといけませんから。特に、外科医になりたかった。手術で病気をしっかりと治す、結果がしっかり現れるというのに魅力を感じていたんですね。
医学部に入り学んでいるとき、手術という意味で当初は心臓外科を考えていたのですが、次第に脳神経というものに魅力を感じ始めました。どの神経が体のどこを司っているのか、というのを知るのはものすごく奥が深く、魅力的に感じたのです。手術をしたい、という希望も考え合わせて脳神経外科に専門を決め、大学を出てから15年間医局の各病院で経験を積んでいきました。
患者さんの感覚を大事にする、という考え

CT室:患者さんの利便性を考え、大病院に行く煩わしさを軽減しようと導入したそう。
当院は内科一般の治療や検査も行っていますが、主としては「頭痛外来」を標榜して診療しています。医局に入ったころ、当初は、自分の希望だった脳腫瘍や脳卒中、脳出血といった、手術を必要とする症例をしっかりやりたいと思っていました。ですが臨床ではもちろん他の病気の対応もするわけです。その中で現実的な数として、頭痛を訴えて外来に来られる患者さんが圧倒的に多かった。もちろんその中で重篤な、命に関わる症例の方もいらっしゃるのですが、ほとんどは、脳外科の観点から言えば診断がつきにくい方ばかりでした。でも患者さんが来院され苦しみを訴えられているのに、「何でもないです」と帰すのは忍びない。その数を目の当たりにして、この患者さんたちを何とかして差し上げなければと思って自分で勉強していったのが、頭痛治療に重きを置き始めた最初のきっかけです。また、この地域ではまだまだ私たち医師も含め、頭痛をしっかりと診療するための、正しい知識を周知する必要があるなと感じていたこともあります。
もうひとつ、当院では「もの忘れ外来」も標榜しています。認知症外来と標榜している医院もありますが、こういう表現にしています。何故かというと、認知症外来とするとすでに認知症になっておられる、判別しやすい症状の方以外の方がお越しになれないと思ったんですね。「最近もの忘れがひどい」といった、患者さん自身や周囲の方が感じている感覚が通じるようにしてみたんです。そういった一見軽いように見える兆候でも、調べれば手術が必要な重篤なケースだってあり得ますし、むしろそういう患者さんをしっかり診ていきたいなと思ったんです。頭痛外来についてもそうですが、患者さんの感じている症状や感覚を大事にして、そこから導き出していくことが大事だと思っています。
あくまでも、ひとりで患者さんとしっかり向き合いたい
趣味というか、昔からやっているわけではないのですが、誘ってくれる友人がいてくれたので、休日には仲間とフットサルを楽しんでいます。いい気分転換になっています。あとこれもちょっとしたものですが、救急車限定でミニカーを集めたりもしています。診察室に置いていますが、子供たちが喜んでくれたりしますよ。
開業して1年強経ちますが、将来クリニックを大きくしたり、同僚医師を増やそうとは思っていません。自分ひとりで責任をもって、最初から最後までトータルで診たいと思っています。あくまでもひとりで患者さんとしっかり向き合って、これからも診療していきたいです。来院していただいた患者さんには、もっともっと、「治りました」とか、「ありがとうございます」と、笑顔で言ってもらえるようにしたいですね。
沼津大山クリニック
医院ホームページ:http://www.zutu-clinic.com/

写真左:沼津駅南口すぐという、アクセスのよい立地。
写真中央:落ち着いた色調の、クリニックらしくないデザイン待合室。
写真右:診察室の書棚に並べられているミニカーは、一風変わった「世界救急車セレクション」
JR東海道本線・沼津駅南口すぐ。駅前ビル“イーラde ビル”の2F(南側の商店街側にある専用エレベータからお越しください)。
詳しくは、医院ホームページから。
診療科目
内科・外科・脳神経外科
大山一孝(おおやま・かずたか)院長略歴

同年 順天堂大学病院研修医
1996年 順天堂大学脳神経外科助手
2005年 順天堂大学静岡病院脳神経外科助教授
2009年 沼津大山クリニック開業
同年 順天堂大学脳神経外科非常勤助教授 兼務
■所属学会
日本脳神経外科学会、日本頭痛学会認定、日本抗加齢学会
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