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新規会員登録(無料) ログイン第128回 医療者も患者も、同じ目線で言い合うことができれば
[クリニックインタビュー] 2011/12/16[金]
大学病院が医療の最先端とは限りません。患者のこと、地域のことを第一に考えながら、独自の工夫で医療の最前線に取り組んでいる開業医もたくさんいます。そんなお医者さん達の、診療現場、開業秘話、人生観、休日の過ごし方、夢などを、教えてもらいました。
第128回
中野整形北クリニック
中野薫先生
半世紀前に単身渡米、日本の医療技術に貢献した父

僕は虚弱体質児でした。赤ちゃんのときに1度心臓が止まったこともあるそうで、医師がいなければもう死んでいる人間だったんです。だから医療に助けられたという思いとともに、父親が整形外科医だったので身近に感じていたこともあり、医師を目指しました。
自分で言うのも何ですけれど、親父は名医だったんですよ。海外渡航が非常に珍しい時代に単身アメリカに飛び込んで研修医から始め、その後も日米を往復し後年はルイヴィル大学の客員教授も務めました。帰国後は、道内各地から来る患者さんたちに日本の大学ではできない手術をバンバンやって助けていた。東大をはじめ、国内外の多くの先生も手術の見学に来ていました。僕にとっては偉大な、尊敬する父です。
しかし「金儲けよりも患者さん」というところがあったので、経営感覚は今ひとつでしたね。また、子どものために時間を取ってくれるけれど、堅苦しい大人向けの料理店に連れていったり、僕が落ち込んで独りになりたいのにかえってあれこれ話しかけてきたりする。相手の気持ちを察するよりも自分が良かれと思うことを通してしまうので、父親としてはちょっとなぁ、というところがありました。
深夜近くに最初のご飯を食べる体育会系の日々

子供のころから医師を目指していましたが、力及ばず浪人しています。親父は子どもの将来について何も口を挟んでこなかったけれど、そのときは「無理をしてまで、医師になることはないんじゃないか」と言いました。でも、自分は医師になることしか考えていなかった。幸い、国立の旭川医科大学に合格しました。
夏休みに札幌へ帰郷したときなどは「暇なときはおれが教えてやるから」と、無理やり親父の医院(中野整形外科医院)に呼び出されては手伝わされていました。若かったし友達とも飲みに行けなくて正直イヤだなあと思いましたよ(笑)。
それでも北海道大学の整形外科に入局するころには、やはり医師としてプロになろう、プライドを持った仕事のできる人間になろうと思いました。自信があると言えるほどの技術を持つためには、イヤな思いや苦しい思いもいっぱいしなければいけない。でも、やはりそれは必要だと思うんですよ。それに、自分がプライドを持ってしっかりと手術ができるようにならなければ、患者さんに失礼じゃないですか。
整形外科って、体育系なんですよね。なんといっても身体の“大工さん”ですから。道具もノミやハンマー、ネジなど基本的に同じです。研修中は「何やってるんだよ!」なんて怒鳴られることもしょっちゅう。朝7時に大学へ行き、10時間の手術にずっと付き添って、その後はディスカッションと明日の準備。その日最初に食べるご飯が夜の10時なんてことも多々ありました。もう、体力勝負ですよね。
麻酔もかけられる整形外科医を目指して学び直す

医院外観:地下鉄24条駅から徒歩6分、北大通りに面しており北区役所や札幌サンプラザからも近い。ビルの裏側に駐車場がある
その後は、親父の医院で兄と僕との3人体制で勤めていましたが、夜に行っていた手術を日中の診療時間にもできるようにしようと、僕が北大の麻酔科に入り直すことになりました。麻酔科の先生を常勤で雇う財力もなかったものですから……。教えてくれる先生は僕よりも後輩で敬語を使われたりもしましたが、教授に「新米扱いしてくれ」と自分から頼みに行きました。そうしないと、技術がちゃんと身につかないでしょう?それからは、けっこう厳しく指導していただきましたね。
その後は、親父の医院に勤めながら週2回北大の麻酔科で勤務をしていましたが、医院を建て替えることになり、その間にルイヴィル大学へ留学をしました。ところが、帰国後は制度の変更によって保険点数が減り、医師3人体制では厳しくなってきたのです。また、僕も少し外の風に吹かれたいということもあって、市内の病院にも勤務しました。
そんなとき、親父が病気で倒れ入院したんです。彼はやはりカリスマ医師だったので患者さんの減少も避けられない。そこで、中野整形外科医院の分院として2005年に中野整形北クリニックをオープンしました。
手術するかしないかは患者さんの意向を尊重

初診では特にしっかりと納得がいくまで説明をする。また基本的に治療の選択肢は患者にあると中野院長は話す
僕は、基本的には患者さんに対して友達のように接しています。患者さんだって、怖い先生だと文句も言えないじゃないですか。例えば手術を受けて結果が悪くても、患者さんは執刀医の先生になかなか伝えられないものなんですよね。
初診のときにはかなりの時間をかけて、患者さんにしっかりと説明をしています。その後には、必ず分からないことがあるかどうかを聞きます。うちの医院は混んでいて、時には2時間ほど待たせてしまう場合もあります。でも、初診で患者さんが十分に納得していれば、2回目以降の診察ではあまり時間もかからないんですよ。
手術にしても、するかしないかについては基本的に患者さんの意向を尊重しています。僕は手術が得意だし自信はあるけれども、例えば腰であれば、おしっこが出にくくなるとか下肢の筋力がどんどん低下するなど神経に回復不能なダメージが生じる徴候がなければ、嫌がる患者に無理に手術をすすめることはしません。膝もレントゲンではひどく傷んでいても、患者が望まないなら人工関節はせず、注射で様子を見ます。
レントゲンやMRIの画像を見ただけで手術を勧めるところもあるようですが、きちんと患者さんの状態を診察した上で総合的に判断することが僕は必要と考えています。その結果、必要と判断した手術は積極的にしています。この前の手術で、歩けるようになった女性からは「ずっと安静と言われて寝たきりのまま不安だったけれど、早く歩けてうれしい」と感謝をされました。
風通しの良いフランクな雰囲気づくり

待合室はシンプルだがスペースが広くとられている。受付わきのパソコンからは心地よいBGMが流れる
僕は、開院当初からのポリシーで「院長には友達のように何を言ってもいいからね」とうちのスタッフに話しています。例えば診察が混んでいるとき、僕がトイレに行きたくても看護師の許可がないと行けません。僕が「おしっこ行ってもいいかなあ?」と聞くと「あと3人診てから!」といった具合で(笑)。あと、やはり僕も何かの拍子で言い方がきつくなる時もある。そうすると、看護師が「その口の聞き方はないでしょ!」と教えてくれるんです。
だから、うちのスタッフはみんな仲がいいですね。朝はみんな休憩室に集まって患者さんや症例の話をしたり、一方でワイドショーのネタも話したりと、何でも言い合える風通しの良さがあります。患者さんにも「クリニックのみんなが明るいし、きちんと接してくれる」と、時々ほめてもらったりします。例えば、注射をしているときに患者さんが「ここだから言えるけど……」と、他科の医院のいやなところを話してくれることがあります。こちらを信頼してくれているんだなと感じますね。本当にスタッフには恵まれています。
僕は経費削減のために事務長の仕事もしていますが、将来はもう少しラクになりたいかな(笑)。すぐ太る体質なので水泳に通うようにしていますが、それでも昔は月1回がせいぜい、最近はやっと週に1回通えるほどになってきました。中学生のときは、水泳の北海道大会で3位になったこともあるんですよ。
腕に自信を持ち患者に好かれる医師として

リハビリ室はビルのワンフロアを占めている。保険の適用期間が過ぎた患者のため、奥には自主的に使えるスペースもある
これからのことと言えば、患者さんを待たせないで済むように携帯の予約システムを考えたりはしています。ただ、このクリニックを大きくしようとか、もう1人医師を常勤で増やすなどは考えていません。患者さんは僕に診てもらいたくて来てくれていると思うんです。忙しいんですが、今のままでいいんですよ。
忙しくて学会での活動もあまりできませんが、医師の評価は患者さんがしてくれるもの。小さいころは僕もお医者さんに助けられました。だから、自分も患者さんに治って喜んでもらえることがいちばん!そう思いながら日々やっています。
東京の業界紙や編集プロダクション勤務を経て、札幌移住を機にフリー。各種雑誌や書籍、ウェブサイトで地域情報や人物、住宅などの取材を行う。
医療法人社団 中野整形北クリニック
医院ホームページ:http://www.naka-kita.com/
地下鉄南北線北24条駅1番出口より徒歩6分、エフテービル。受付と診察室は2階、リハビリ室は3階。
どちらも入口はエレベーターを出てすぐ。駐車場あり(6台)。
詳しくは、医院ホームページから。
診療科目
整形外科、リハビリテーション科、麻酔科、ペインクリニック科、放射線科
中野 薫(なかの・かおる)院長略歴

1990年 中野整形外科医院勤務
1992年 北海道大学麻酔科入局、中野整形外科医院に勤務しつつ臨床麻酔を研修
1996年 米国ケンタッキー州ルイヴィル大学脊椎外科、Spine Institute for Special Surgery留学
1999年 札幌円山整形外科病院勤務
2005年 中野整形北クリニック開設
■資格・所属学会
日本整形外科学会、北海道整形災害外科学会 整形外科専門医、整形外科 脊椎脊髄病医、麻酔科標榜医
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